全教は、「教員免許管理システム運営管理協議会」に対し、次の2点について要請をおこないました。
1.現在おこなわれている「教員免許管理システム」の改修にあたり、個人情報の流出や目的外使用がおこなわれることのないよう、教員免許管理システム運営協議会として万全の態勢を整えること
2.教員の処分歴を「教員免許管理システム」に登載し、検索することを可能にするシステムの構築をおこなわないこと
「教員免許管理システム運営管理協議会」(以下、「協議会」)「協議会」とは、各都道府県教育委員会が共同で「教員免許管理システム」の管理運営をおこなうために組織されたもので、今年度の事務局は東京都教育庁に置かれています。全教の出席者は宮下直樹・教文局長 波岡知朗・中央執行委員 糀谷陽子・中央執行委員、「協議会」からは落合真人・東京都教育庁人事部選考課長(協議会会長)、波多尚人・同選考課総括課長代理、中田来・同選考課免許担当主任が対応しました。要請の内容は、下記の通りです。
1.教員免許更新制の導入時に各学校で教員免許状の提示が求められましたが、今年度、再び免許状の提示を求められたり、民間業者や都道府県教育委員会から送られたフォルダー内にある教員免許に関する個人情報の確認を求められたりしています。
免許の再提出の理由について「協議会」は、「新免許状が入ってきたから。旧免許状と新免許状では、有効期限のとらえ方が違い、すべての免許状を把握しないと有効な免許の期限を把握できないため」と説明しました。同時に、「これまでの免許管理システムは、免許が先にあって個人の名前が出てくるため、1人の人が10枚の免許を持っていた場合、この免許とこの免許は同じAさんのものだということがつかめない。その10枚をAさんという名前でぶら下げる『名寄せ』の作業が必要になった」として、昨年度、文部科学省の補助金を使ってシステムの改修作業をおこない、今年度、民間業者に委託して調査をおこなったことを明らかにしました。
民間業者に委託したことについて全教は、「免許状は個人情報であり、それが他に流出することのないよう」要請し、「情報の流出や目的外使用が起ってしまったら、取り返しがつかない。起らないように万全の態勢を敷いていただきたい。仕様書をつくって業者と確認されているが、その仕様書の内容について専門家の判断を仰ぐことはしていないのか」と質しました。「協議会」は、「高度な機密事項であるので、責任をもって対処できる事業者を選定した」「仕様書については我々を信用していただきたい。そういうことがないように万全の体制でとりくむ」と回答しました。
「各学校が民間業者からのメールを開いて確認することについて、心配と不安の声が上がっている。業者が個人情報にふれることはないと聞いていたが?」との質問に対し、「協議会」は、「昨年度のシステム改修にあたった業者は個人情報に一切触っていない。その後の調査は、セキュリティのきいた方式で個人情報とパスワードが入ったファイルを、一部は業者から、一部は各都道府県教委から配布し、その回収を業者に委託している。業者が個人情報にふれる可能性があるので、仕様書の中で高い水準を求め、現時点で終了している。調査結果を各都道府県に納品してもらい、取りまとめ作業に入っている」と回答しました。全教は「今後も個人情報の流出がないよう、万全の態勢で臨むこと」を厳重に要請しました。
2.文科省は、来年度の概算要求で「教員の免許状情報の適切な管理のための教員免許管理システムの機能強化」のために4億8600万円を計上し、その内容として「免許法改正への対応」の他、「懲戒免職等、失効の履歴を含めた免許情報の全国一元的な管理のしくみ」の構築について「検討している」としています。
これは、「意図しない失効者を生まないため」という免許管理システム構築の目的とは何の関係もなく、重大な人権問題であり、全教は「協議会」に対し、そのような「しくみ」を構築しないよう要請しました。
「協議会」は、「いま文科省が整理されている。我々が決める立場でない」と回答しました。「『協議会』や各都道府県からそのような要望を出されたのか?」との質問に対し、「セキュリティの向上については、『協議会』として要望した。全国的、世界的にもウイルスのレベルが上がっており、H21年度から10年くらいシステムが稼働しているので」としつつ、「服務の問題について『協議会』として要望したことはない。個々の県からはあるかもしれないが、47県をまとめて要望したことはない」「いろんな課題があることは承知している。文科省も検討していると思う」としました。
全教は、「文科省は法の改定が必要だとしている。今後、各都道府県の意向を聞かれることがあるだろう。その際には、我々の要望をしっかりうけとめていただきたい」と再度要請し、「協議会」は、「全教からこの要請をいただいたことは真摯にうけとめさせていただく」と回答しました。