10月24日、全教は、国際人権規約社会権規約13条2項(b)(c)の留保撤回を受けて、国が教育予算の拡充と教育費無償化政策をすすめるよう文部科学省に要請を行いました。
全教からは、今谷賢二書記長、中村尚史・得丸浩一書記次長、小畑雅子・波岡知朗中央執行委員が出席し要請をおこないました。これに対し、文部科学省は、大臣官房国際課・徳留調査係長はじめ4名が対応しました。
まず、全教が提出した要請書に対し、文科省は「『公立高校の授業料無償制及び高等学校等就学支援金制度』と『大学の所得連動返済型無利子奨学金』、『私学助成』、『都道府県が整備する高校生修学支援基金を活用した所得連動返済型奨学金』などをおこなっていることが『無償教育の漸進的な導入』にあたると、国が判断した。経済的な理由によって修学や進学をあきらめることがないように、これらの施策を続けていきたい」と回答しました。
次に、今谷書記長は、「留保撤回は遅きに失したとはいえ歓迎するものである」とした上で、「無償教育の中身は何か。最終的なゴールをどこに定めているのか。文科省は、義務教育の無償制を『授業料をとらないこと』と説明しているが、今回の『無償教育の漸進的導入』もそこへ向かうのか」と、文科省が無償教育をどのように考えているのか尋ねました。文科省は、「具体的には決められていない。義務教育の無償制と同義ではない。現段階では、現行制度の充実をはかるという意味である」と回答し、留保撤回の先にある無償教育の具体的施策を現時点では持ち得ていないことが明らかになりました。
さらに、意義と趣旨を全国に周知する具体的なとりくみについては「関係局と協議して周知の方法を検討する」、高校・大学段階における教育費の無償化に向けた計画策定については特に回答がなく、給付制奨学金創設については「所得連動返済型奨学金の導入、今後マイナンバー制導入を視野に入れて拡充をすすめる。高校修学支援基金の活用による奨学金も所得連動返済型で低所得者層の支援を充実させる」など、いずれも現行制度の維持・拡充の域を出ない回答が目立ちました。
最後に、「国際人権規約社会権規約が子どもたちの教育を受ける権利や学習権を保障するもので、貧困と格差の問題を解決するためだけに無償教育を導入するのではない。文科省が道筋を示すことで、国だけではなく地方にも「無償教育の漸進的導入」が広がる。文科省は、社会に向けてその意義をはっきりと打ち出し、具体的計画を国民に示すことが求められている」と述べて、要請を終えました。