沖縄県八重山地区での中学校公民教科書の採択をめぐり、9月8日に開催された全教育委員による協議で育鵬社版を否決し他社の教科書の採択を決めたことに対し、文部科学省は「いまだ同一の教科書を採択できていない状態にある」と断定する通知を9月15日に出しました。この問題に対し、全教は、9月19日~21日に磯崎全教副委員長、得丸全教書記次長(教文局長)を沖縄県八重山(石垣市、竹富町)に派遣し、現地調査と子どもと教科書を考える八重山地区住民の会などとの懇談を行いました。
石垣市では、子どもと教科書を考える八重山地区住民の会の仲山忠享共同代表(元石垣市教育長)、大浜敏夫事務局長と懇談するとともに、20日に350人の参加で開催された「9・8八重山地区全教育委員による採択教科書を子どもたちの手に!」住民集会に参加しました。また、同市内にある竹富町役場を訪問し、慶田盛教育長とこの間の教科書採択をめぐる経過を伺い懇談しました。そのなかで、慶田盛教育長は、3人の教育委員長が合意して開催された9月8日の3市町(石垣市、竹富町、与那国町)教育委員全員による会議が、教科書採択の「協議の場」として調査員(現場教員)の推薦する教科書を採択した経過を詳しく説明しました。中川文部科学大臣が13日の記者会見で「協議は整っていない」と述べたことへの率直な驚きも伺いました。調査団は、これに先立ち、自然と文化を大事にした竹富島を訪れ、島内の小中学校(児童生徒数38人)を訪問しました。
那覇市では、沖縄県労連のご尽力で、沖縄県教育庁の狩俣義務教育課長と懇談することができました。
今回の現地調査を通じて、次のことが明らかになりました。第1は、学校現場の調査員の推薦から順位付けをなくすなど学校現場の意向を軽視する採択協議会の規約改定が行われたもとで、8月23日の採択協議会で調査員の推薦にはなかった育鵬社版公民教科書が採択されたことです。第2に、協議会の採択結果は答申であり、3市町教育委員会の採択が分かれたもとで開催された9月8日の全教育委員による会議で同一教科書が採択されたことは、法的にも有効であり、県教育庁も有効性を16日の見解で認めていることです。したがって、9月15日の文部科学省通知が、「いまだ同一の教科書を採択できていない状態にある」と断定したことが、事実を無視した誤りであることは明らかです。
全教は、教科書を実際に使って教育指導にあたる教員の教科書研究の成果と意見を尊重した採択をおこなうこと、3市町教育委員による自主的判断を尊重し採択の統一をはかることを求め、16日に文部科学省に緊急の申し入れをしましたが、引き続き、地方教育委員会の教科書採択権を侵害する不当な介入、強制を許さないたたかいを強める決意です。