1.本日(9月2日)、野田佳彦氏(前財務大臣)を首班とする新内閣が発足しました。民主党政権の2年間で3人目、自民党政権下を含めると5年間で6人目の首相が誕生したことになります。安倍政権以後の5政権はいずれも1年前後の短命政権であり、どの政権も国民の支持を急速に失っての退陣が共通の特徴となっています。この事態は、日本国債の格付け引き下げの理由とされるほどの国際的信用に影響を与えるとともに、日本政治の深刻な行き詰まりを示しています。国民の期待を受けて誕生した民主党政権でしたが、菅内閣の退陣直前の内閣支持率はわずか10%台であり、政治に対して国民を失望させた責任は重大です。
2.野田新内閣では、召集される臨時国会において所信が示され、9月末に延ばされた2012年度政府予算に対する各省庁からの概算要求、東日本大震災の本格的対策となる第3次補正予算の編成などによって、新内閣の政策とその方向が明らかになります。新内閣に対する詳細な評価は、これらの動きを待つことが必要ですが、新首相に指名された野田氏については、これまでの言動から私たちが願う政治の方向とは相いれないのではないかとの懸念を指摘せざるを得ません。それは、第1に、野田氏が「与野党協力」を表明し、「大連立」を含めた政権運営を志向しているとされている点です。首班指名直後に、財界団体をまず訪問してあいさつをするなど財界の意向に沿った政治姿勢も示しています。「与野党協力」と言いながら、その中身は震災復興財源を口実とした消費税増税を含む庶民増税や法人税減税であり、「税と社会保障の一体改革」の名による国民犠牲の政治方向です。焦眉の政治課題となっているエネルギー政策についても、原発容認の方向でしかありません。また、米軍普天間基地の押しつけ、環太平洋連携協定(TPP)推進などの立場も明確にしており、アメリカ追従の政治を転換する姿勢は感じられません。すでに、野田新首相は、菅内閣の退陣合意となった民主、自民、公明3党による「確認書」(3党合意)順守を表明しており、公立高校授業料不徴収・私立学校等への就学支援金の見直しに向かう危険性を持つものです。
第2には、自らが2005年10月に提出した質問主意書において「A級戦犯は戦争犯罪人ではない」など特異な主張を繰り広げている点です。この点はすでに近隣諸国からも懸念が表明されていますが、戦後日本の出発点、日本国憲法制定の根幹にかかわる問題点として看過できません。
3.新内閣は、東日本大震災から半年が経過しようとする今日においても、遅々として進まない復旧・復興をはじめ、国民生活のあらゆる分野で深刻な危機が進行するもとでのスタートとなりました。いま、多くの国民が求めているのは、労働者・国民の生活を破壊し、東日本大震災の被害をいっそう深刻なものにした構造改革政治にきっぱりと終止符を打ち、国民の願いに沿った政治を実現することです。教育をめぐっても、国の責任による30人学級の実現と教職員定数の抜本的改善、授業料不徴収・就学支援金制度の拡充など教育の無償化の前進、給付制奨学金の創設と就学援助の改善によって貧困・格差の拡大から子どもたちを守る課題など早急に打開しなければならない問題が山積しています。全教は、新内閣の政策動向を注視するとともに、当面する秋の運動に全力をあげ、労働者、国民、子どもたちが大切にされる政治の実現を求めて引き続き奮闘します。