全日本教職員組合(全教)
書記長 北村佳久
国家公務員制度改革推進本部に設置された労使関係制度検討委員会(以下「検討委員会」)は、12月15日、「自律的労使関係制度の措置に向けて」(以下「報告」)をまとめました。
検討委員会は、昨年10月から17回の会議と、4月以降26回のワーキンググループを開催してこの報告をまとめましたが、その内容は数多くの選択肢を残し、きわめて幅広い内容になっています。もっとも消極的な選択肢をつないでいくと、人事院勧告制度を労働基本権の「代償措置」としている現行制度とほとんど変わらないものが想定されています。しかも、「協約締結権を付与する職員の範囲」に「職務の特殊性に照らして協約締結権を付与すべきでないものがあり得る」、また「協約締結権を付与する団体」として「一定の要件を満たす団体に付与する」とする選択肢を残した点は、協約締結権付与についての制限や排他的代表交渉制度に道を開く危険性があるものとして絶対に容認できません。
また、国家公務員制度改革基本法を背景に、協約締結権付与に伴う「便益及び費用」に多くの検討を割いていますが、そもそも労働基本権の問題を「コスト」の観点から検討すること自体が誤っていると指摘せざるをえません。
報告が、こうした問題点を持ったのは、検討委員会における主題が「労使関係制度」とされ、憲法にもとづく基本的人権としての労働基本権の視点や、ILO勧告、「教員の地位に関する勧告」など国際基準から要請されている労働基本権という視点が弱いことに最大の問題があります。
地方公務員については、「今後の制度設計の中で必要な検討を行う」とされました。全教は、常任弁護団がまとめた「意見書」を12月7日に国家公務員制度改革推進本部に提出し、交渉を持ちましたが、検討されていく教職員の制度設計においては十分な交渉・協議を求めるものです。
新たな制度を確立するために、今後、政府としての具体的な検討作業に入ります。その際には、労働基本権の全体像を真正面から議論する必要があります。協約締結権にとどめず、争議権や消防職員等の団結権の回復を含めた検討がすすめられるべきです。
公務員の労働基本権が1948年7月22日の「政令201号」により一方的に剥奪されて以来61年間が経過しています。公務員の労働基本権回復の課題は、公務労働者の諸権利や労働条件向上に資するだけのものではありません。「教員の地位に関する勧告」に「教員団体は、教育の進歩に大きく寄与しうるものであり、したがって教育政策の決定に関与すべき勢力として認められなければならない。」(9項)とあるように、権利から遠ざけられてきた教職員が国民のためにその権利を行使する第一歩になるような制度とすることが求められています。全教は、憲法と「教員の地位に関する勧告」にもとづく労働基本権のすみやかな回復を求め、その実現にむけて全力でたたかう決意を表明するものです。
以 上