『クレスコ』

現場から教育を問う教育誌

クレスコ

〈2024年12月号 11月20日発行〉

【特集】登校拒否・不登校から見える景色――安心できる居場所がほしい

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オピニオン

【談話】『憲法9条違反の「海賊対処」派兵法の衆議院再議決に抗議し、自衛隊の海外派兵と武力行使に断固反対する』

                   2009年 6月19日 全日本教職員組合 書記長 北村 佳久

 本日、政府・与党は、憲法9条違反の「海賊対処」派兵法案を、参議院での否決にもかかわらず、衆議院で3分の2の多数議席の力をもって再議決を強行した。慎重審議と廃案を求める世論に背を向け、議決を強行したことに、厳しく抗議する。また、海賊対処の海外派兵を政府に提案し、「自衛官が現場で安心して武力を行使できるようにしてほしい」(4/23衆院特別委員会)とまで述べて成立に手を貸してきた民主党の責任についても、厳しく糾弾する。

 この法案は、ソマリア沖の海賊対処を理由に自衛艦を海外に派遣し、武力行使を可能とするもので、「武力による威嚇又は武力の行使は…永久にこれを放棄する」と定めた憲法9条に真っ向から挑戦し、自衛隊の海外派兵恒久化につながる重大な憲法違反の悪法である。法案の問題点と危険性は、国会審議を通じて、 ①20カ国の軍艦が展開しているもとでも海賊行為が昨年の2・5倍に増加しており、自衛艦の派遣が海賊対策に役立たないどころか武力紛争の悪循環をつくりだしていること、②「接近」「つきまとい」を続ける不審船に対して船体射撃を可能にするなど、武器使用によって自衛隊が初めて他国民を殺傷することになりかねないこと、③日本の「権益」を守ることを理由に、防衛大臣が内閣総理大臣の承認さえ受ければ自衛艦を海外に派遣できること、④日本の「権益」にかかわる航路で船舶に危害を加える「海賊」行為が起きれば、ソマリア沖に限らず世界のどの海にも自衛艦を派遣でき、期限の定めもない法であることなどが明らかになった。これだけの軍事行動を、「船舶の安全と海上の治安維持」という海上保安庁が本来行う犯罪対処を自衛隊が代わって行うのだと言いはり、軍事目的をごまかして押し切っている。これほど危険で露骨な解釈改憲は、かつてなかったことである。これは、来年5月の国民投票法施行に向けた憲法審査会規定の強行など、憲法の明文改悪と一体の改憲策動であり、絶対に許すことはできない。
 
 法案の審議に先行して、自衛隊の軍事行動が次々とすすめられ、既成事実が重ねられたことは、国会審議のあり方として異常であった。政府・防衛省は、法案を国会に提出した同じ日に自衛艦2隻をソマリア沖へ出航させ、国会審議が始まる前から海賊船の警備行動を開始し、審議中に自衛艦を支援するためとしてP3C対潜哨戒機2機を派兵した。さらに、ソマリアの隣国のジブチにP3C対潜哨戒機を駐機させ、これを支援するためとして陸上自衛隊の「殴りこみ」部隊である中央即応連隊を駐留させるなど、戦後初めて自衛隊の海外基地を置いたことは重大である。この基地とP3C対潜哨戒機が、海賊対処を口実に、中東海域の情報を収集し米軍に提供するなど、米軍との共同作戦に組み込まれる危険がある。この暴挙の根本に、米軍の中東での軍事侵略に追随し加担する日本の外交防衛政策の誤りがある。日米安保条約に基づく軍事同盟から抜け出し、憲法前文と9条を生かした自主的な平和外交をとり戻すたたかいは、ますます重要である。
 
 全教は、この間、「海賊対処」派兵法案のごまかしと危険を職場や街頭で訴え、署名の提出と2度の国会要請行動、国会議員へのFAX要請にとりくんできた。悪法は強行されたが、全教は、引き続き、「教え子を再び戦場に送るな」の誓いを固め、自衛隊の海外派兵と武力行使に断固反対し、ソマリア・ジブチからの自衛隊の撤退を要求するとともに、憲法改悪阻止、日米安保条約廃棄に向け、目前の都議選・総選挙を含めて運動を一層強めることを表明する。

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