2008年11月19日 全日本教職員組合 書記長 東森 英男
「我が国が侵略国家だったというのは濡れ衣だ」と歴史を歪曲する論文を発表した田母神俊雄前航空幕僚長の言動が、憲法の平和原則と、侵略と植民地支配を謝罪した村山談話に反するものとして重大な社会問題となっている。
そして、田母神氏が自衛隊の統合幕僚学校長だった時に設けられた「歴史観・国家観」講座の講師を務めた大学教授が、いずれも当時、「新しい歴史教科書をつくる会」の正副会長であったことが明らかになった。八木秀次高崎経済大学教授、福地淳大正大学教授、高森明勅拓殖大学客員教授の3人である。
「新しい歴史教科書をつくる会」がつくった教科書は、「大東亜戦争」は「アジア解放のための戦争であった」とするなど、戦争賛美を子どもたちに強要するものである。また、日本国憲法について、「憲法の解釈によれば、わが国は集団的自衛権を行使できないという意見があり、国際協力の障害にもなっている」として、憲法の「改正」を主張するものである。
「新しい歴史教科書をつくる会」が「戦争する国づくり」にむけて、子どもたちだけでなく、現職自衛官に向けて憲法違反の思想教育を行っていたことは、きわめて重大である。
私たちは、戦前の教育に対する痛切な反省に立って、教育は何よりも真理と真実にのみ忠実でなければならず、皇国史観など特定の歴史観や政治的思惑にもとづく内容を押しつけてはならないと主張してきた。そして、平和憲法を無傷で子どもたちに手渡すために、憲法改悪に反対する運動を全力ですすめてきた。
この立場から私たちは、今回の田母神問題にかかわって、政府に対し下記事項を要求するものである。
1.田母神前航空幕僚長問題の全容と背景を明らかにし、同氏を任命した防衛大臣をはじめ政府・防衛省の責任を明確にすること。
2.自衛隊における隊員教育の内容を公表すること。
3.子どもたちに、侵略戦争を美化し、「愛国心」を押し付ける教育を行わないこと。
4.新テロ特措法延長法案を撤回し、廃案とすること。