2008年 9月 2日 全日本教職員組合 中央執行委員会
2009年度政府予算に対する概算要求は、8月29日に締め切られ、一般会計が86兆1300億円(08年度当初予算比3・7%増)、そのうち一般歳出は50兆円を超えています。社会保障関連経費の2200億円抑制、公共事業費の3%削減などを求め47兆8000億円を上限とする財務省の概算要求基準に対し、約3兆円超となっています。
文部科学省の概算要求は、一般会計で5兆9472億円、08年度当初予算比で12・8%(6733億円)増となっています。医師不足対策や大学の国際競争力向上など高等教育予算の増額や科学技術関連の増額が大部分を占めています。
初中局関係は573億円(同2・9%)の増額で、文科省の増額分の9%にも満たない額にとどまっています。
その特徴は、第1に、予算を通して新学習指導要領や教育振興基本計画を具体化し、学校現場におしつけるものとなっていることです。それは、①「新指導要領の円滑な実施」として、理科や武道などの教材整備事業(155億円)、道徳教育用教材費補助など道徳教育の総合的推進(47億円)、学テ関連で3億円増の63億円など394億円増の466億円、②教員免許更新制関連で47億円、③学校支援地域本部関連が、13億円増の64億円、などが主な増額要求となっていることからも明らかです。
第2に、国の責任による30人学級の実現や教職員の長時間過密労働の解消など父母・国民や教職員の切実な願いには背を向けるものとなっていることです。文科省は、昨年度の概算要求では「子どもに向き合う時間の確保」として3年間で2万1000人の定数増を求めました。しかし、今概算要求では、主幹教諭にともなう896人の定数増をはじめ1500人の定数増を求めるものの行革推進法の枠内での増員にとどまり、自然減を考慮すれば教職員数は全体として減少するものとなっています。そうしたもと、義務教育費国庫負担金は、1兆6768億円となっており、前年比28億円のマイナス要求となっています。
第3に、「メリハリ」づけとして一般教員には義務特手当てや教職調整額の縮減を押しつける一方、管理職手当ては増額し「ピラミッド」型の管理体制をいっそう強化するものとなっていることです。
文部科学省は、教育振興基本計画の策定にあたっても、教育費のGDP比5%への引き上げ、5年間で2万5000人の教職員定数増などをめざしたと報道されました。しかし、地方の教育費が減少しているにもかかわらず、「わが国の教育予算は、欧米諸国と比較して遜色がない」などとする財務省の前に、文科省のねらいは打ち砕かれ、教育振興基本計画に教職員定数増などの数値目標を入れることができずに終わりました。このことはまた、父母・国民や教職員の願いに立脚しえない文科省の姿勢の反映でもあり、今期の概算要求もこうしたことの結果とも言えるものです。
一方、特別支援教育(434人増)や食教育(47人増)などの定数増や校舎の耐震化促進(750億円増の1801億円)、私学助成の増額(198億円増の4700億円)、免許更新制にかかわる各種補助、医学部の定員増などは、概算要求期に向けた署名や教育全国署名をはじめとする私たちの運動や国民の運動の反映でもあります。
貧困と格差拡大は、子どもたちの学習権を侵害し、教育格差の拡大につながっています。本来、教育の機会均等をはかり、そうした格差を縮小すべき教育制度が、受益者負担主義の強まりのもと、いっそう格差を広げるものとなっています。
今、教育財政に求められているのは、①誰もがお金の心配なく学べるように、教育費の軽減・無償化をすすめること、②学習内容を押しつけるのではなく、学校現場の裁量を拡大し、学校の教育活動を支えるための教材費や図書費の国庫負担の復活など条件整備を進めること、③国の責任による30人学級の実現、教職員の長時間過密労働の解消、これらのための教職員定数増です。
全教は、教育政策の根本的転換を求めつつ、教育全国署名をはじめ諸要求実現の運動に全国の教職員・父母・地域住民のみなさんとともに全力を尽くして奮闘する決意を表明するものです。