2008年 7月10日 全日本教職員組合 書記長 東森 英男
大分県における教員採用をめぐる汚職事件は底知れない広がりを示すとともに、組織的犯罪の様相を呈しています。
この間の報道によれば、校長など依頼者からの金品授与を受けて、県教委の中枢にある教育審議監の指示により、県教委の幹部職員が小学校教員採用試験受験者の成績表を書き換え、本来合格しない受験者を合格させ、合格すべき受験者を不合格にしたとされています。加点を受けて合格した受験者の数は、2007年度と08年度合わせて40人以上に上るとされており、合格者の半数が加点されたと報じられています。さらに、採用試験をめぐる汚職は中学校教員にもおよぶとともに、教職員の昇進をめぐっても商品券の贈与を受けていたとされています。
このようなことが事実だとすれば、不正行為として許されないことはもとより、社会正義と真実を子どもたちに教えるべき教育界が不正と汚職にまみれているという点で、深刻きわまる問題です。
今回の事件は、理性的、人間的であるべき教育界にあるまじき行為であり、断じて容認できないものです。事件は、教育に対する国民や子どもたちの信頼を著しく損ねるとともに、教育現場で教育活動に携わっている全国の教職員の誇りを傷つけ、その情熱と意欲に重大な否定的影響を及ぼすものです。
このような事件の背景には、不透明な教員採用制度と教育委員会による恣意的な運用があることは明らかであり、この問題の解明が緊急に求められています。
しかし、この間発表された大分県教育委員会と教育長のコメントでは、「公務員倫理の確立」、「捜査に全面的に協力」と述べるにとどまっており、不正を生み出した原因を明らかにする立場に立っていません。また、本来合格となるべき人で不合格とされた人への何らかの救済措置についても何ら明らかにされていません。そうした中で大分県教育委員会は、今月実施する今年度の採用試験について、採点等の試験事務事業に県人事委員会などを参画させることなどを表明していますが、これで、県民・国民を納得させることはできません。
教員採用試験をめぐっては、これまで他の県でも不正に関する疑惑が少なからず問題となってきました。今回の大分県での事態を、司直任せにせず、教育委員会の責任で全面的に解明するとともに、不正を再発させない制度と措置を、密室でなく県民参加で構築することが緊急の課題です。
同時に、この事件を契機に、全国で、教員採用試験の実態を点検し、公正で透明な制度に改め、厳正な運用を実現するためのとりくみの強化が求められています。このことは、教育への国民の信頼を高め、採用試験受験者の権利を守るために欠かせない課題です。
私たちは、国民の期待に応える教育をすすめるために、公正な教員採用の実現に全力でとりくむ決意をあらためて表明するものです。