教育予算の拡充求め文科省概算要求交渉を実施!
概算要求署名6万筆余を提出!
全教は7月29日、700人余が参加した7月23日の文部科学省前要求行動の実施も踏まえ、「すべての子どもの学習権を保障するため、教育費父母負担の大幅削減をはかること」をはじめ、学級編成基準縮小、教員免許更新制の廃止など求め、2010年度文部科学省予算概算要求に向けての全教要求書にもとづく交渉を実施しました。交渉には全教から山口隆委員長、北村書記長、本田・杉浦両副委員長をはじめ8人が出席し、文科省は高橋道和財務課長、名取児童生徒課就学支援係長、田井教職員課免許係長ら8人が応対しました。
冒頭山口委員長は、「子どもと教育における貧困と格差が広がる中、子どもたちの学習権の保障はまったなしの課題だ。『教育安心社会の実現に関する懇談 会』にも示された保護者の教育費負担の軽減実現のため、来意年度の教育予算の拡充めざし文科省の精一杯の努力を期待したい』と述べ、要求書と合わせて、概 算要求の拡充を求める個人署名6万728筆と「学力テストの実施中止を求めるアピール」賛同署名6007人分(累計6952人)を提出しました。
各重点項目への文科省の回答は以下のとおりです。
○「準要保護児童生徒の修学援助金の国庫負担の復活させること」
文科省:平成17年の三位一体改革以降、国庫補助分を税源委譲し、地方分権の観点から地方の判断で実施するようになった。「教育安心社会の実現に関する懇談会」でも地方財政措置のあり方の検討の必要性が指摘されており、省内において有識者懇談会を設け検討していただいている。就学援助の充実めざして努力したい。
特別支援教育にかかわる就学奨励費については、教育費の負担軽減めざし、22年度に向けて、対象の拡大のための必要経費を精査中であり、充実に向けて努力したい。
○「無利子奨学金の枠を拡充するとともに、返還義務のない給付制奨学金を創設すること」
文科省:これまで意欲、能力のある人物の教育の機会を確保するため、給付制と貸与制の2つの制度で充実をはかってきた。限られた財源の有効活用が必要だ。無利子と有利子を合わせた奨学金を事業全体として充実していく必要があると考えている。給付制については、大きな財源が必要になるため、慎重に検討したい。
○「国の責任による30人学級実現、学級担任や授業を担う正規の教職員の増員に向けて、新たな教職員定数の改善計画を策定すること」
文科省:教員支援の事業は重要だが、行革推進法により児童・生徒数の減少以上の教職員総数の削減が要求されるきびしい状況にある。この法の枠の中でできる施策の実施に努力しており、今年度は1000人の定数改善、退職教員など外部人材の活用を1万4000人に倍増した。平成22年度においても行革推進法は継続されるが、法の枠の中でどういう要望ができるか検討したい。
学級編成基準については、全国一律ではなく、地域、学校の実情に応じた少人数教育を可能にしていくことが施策として効果的ではないかと考えている。46道府県で何らかの形で実施されている。
○「子どもたちや学校にいっそうの競争と序列化をもたらし、学校教育をゆがめる全国一斉学力テスト実施のための予算を計上しないこと」
文科省:全国的な学力水準を維持・向上するためには、学力の全国的な状況の把握が必要だ。当面は継続的に調査を実施することが必要だと考えている。
○「教員免許更新制は、廃止すること。当面、一人の失職者も出さないための措置を講ずるとともに、受講費用や交通費、宿泊費の自己負担をなくすこと。服務については出張扱いとすること」
文科省:教員免許更新制は法案の成立を経て実施されるものであり、文科省としては円滑な実施に努力したい。この制度の教職員への周知のために、説明会の実施、ホーム・ページなどで知らせ精度を知らないことで失職することが無いように努めている。
費用については、個人の資格にかかわるものであり、自己負担が原則だ。遠方者の出張、講習には補助金を出し、負担軽減を図りたい。服務については基本的には職務として研修を受けるという性質のものではない。しかし都道府県においては、免許講習を会議の扱いにするようなところもある。そういうことは文科省としては妨げない。
○「教職調整額の見直し・検討にあたっては、自主的研修のように時間計測が困難なものの見合いとしての定率の給与措置を確保したうえで、測定可能な超過勤務に対し労基法37条にもとづく割増の時間外手当を支給できるよう法改正を行うこと。また、1年間の変形労働時間制は導入しないこと」
文科省:教職調整額については、平成18年の文科省の勤務実態調査では学校の先生が非常に長時間働いているとの結果が出たが超勤実態は人によってことなるため、「教職調整額が一律同じでよいのか」という議論がある。さらに教職調整額のあり方は学校の組織のあり方、教員のはたらき方ともかかわっている。今後の中教審の議論を踏まえて、検討していきたい。
以上の文科省の回答を受けて、全教からは以下のように、重ねて要求、要望しました。
○北村書記長
7月23日には、文科省前で教職員以外の多くの父母、労働者も参加する要求行動を700人余で実施し、「子どもたちの学ぶ機会を奪ってはならない」との強い思いが示された。国民のこの問題に対する関心の高さだと受け止め、文科省としてこれまでにない構えで概算要求に臨むことが求められている。また、全教は教員免許更新制の実施に関するアンケートを行っているが、そこには教職員の疑問、批判がびっしり記入されている。制度官庁として現場の声を政府にしっかり届けてもらいたい。受講料、県外での受講、手続きの大変さなど問題は解決されていない。概算要求では、少なくとも昨年概算要求をした47億円を、今年も予算要求をすべきだ。
○本田副委員長
教職員が子どもと向き合う環境の整備のため、定数改善は待ったなしの課題だ。子どもと接する上で大きな効果があがっていることも確かめられている。国の責任による30人学級の実施を求める。全国学力テストだが、学力の定着のためのテストはどの学校でも実施している。全国的な調査が必要というなら、抽出で十分であり、3年間実施をすれば傾向も把握できるはずだ。このまま続けても、結果発表するということは文科省自身が競争をあおっていることになる。
○杉浦副委員長
障害児学校でも障害児学級でも支援を要する子どもは激増しているのに、施設設備など教育条件の整備がはるかに追いついていない。実態に応じて抜本的にみんな押す必要がある。行革推進法の枠を越えて前進させることが現場では必要になっている。
○蟹沢生権局長
現場の教職員は、学校では授業準備の時間が確保できないほどの多忙な下でも必死で教育の充実のために努力している。行政職員関係は時間外手当の改善などの実施に向けての検討がすすんでいるが、学校現場だけがこの長時間問題についておきざりになっている実態にある。中教審の作業部会の検討状況を見ていると、教員の長時間勤務の解消は取り残されるのではないかと危惧される。
これらの求めに対し、文科省は「『教育安心社会の実現に関する懇談会』の提言も踏まえ、教育条件の整備、教育活動の環境改善に向けて、責任官庁として最善の概算要求ができるようしっかりと検討していきたい」「教員免許更新講習については、文科省も直接いろいろな意見をいただいている。概算要求については、この場では難しい」などと回答しました。
交渉の最後に、山口委員長は「貧困と格差の解消の課題では、これまでの文科省の姿勢とは違っていると受けとめている。この課題では立場の違いを超えて努力のすることが重要。文科省の引き続く努力を重ねてお願いしたい」と要望し、この日の交渉を終了しました。