全教は3月16日、2011年春闘要求の実現をめざし、文科省交渉を実施しました。交渉には山口隆委員長ら9人が参加、文科省側からは伯井美徳財務課長ら8人が対応しました。山口委員長は春闘要求書の提出に先立ち、「東日本大震災にかかわる緊急要請書」を提出しました。
交渉では、春闘重点要求にたいして以下のように文科省の回答を示しました。
給付制奨学金制度の創設
○返還義務のない給付制奨学金を創設すること。
文科省「授業料を免除されていた高校生の、特定扶養控除の削減などにともなう負担増を解消するために、都道府県の高校生就学支援基金の取り崩しによる支援の対象拡大、貸与要件緩和、返還に際しての負担軽減をはかっていきたい。」
「教員の地位に関する勧告」にもとづく交渉、協議の実施
○「教員の地位に関する勧告」(1966年勧告)の立場に立ち、教職員の賃金・労働条件に関わる事項は、すべて「合意を前提とした」交渉事項とするとともに、国民的議論に付すべき教育政策については協議事項と位置づけ、定期的な協議の場を確立すること。
文科省「地方公務員の勤務条件については、地公法55条にもとづいて、地方公共団体において交渉をしなければならないことになっている。文科省としてはこれまで行ってきた職員団体との意見交換を引き続きおこなっていきたい」
公務員給与の引き下げ、義務教育国庫負担金の削減反対
○憲法違反の公務員給与削減のための「給与法案」に対しては、疲弊している地域経済を支えるために、あらゆる場で反対すること。また、困難ななかで奮闘している教職員のモチベーションを支えるために、国における削減措置が義務教育国庫負担金の削減に連動しないよう、全力を尽くすこと。
文科省「国の公務員の給与のあり方については政府全体で整合性、経済効果をみながら対応していく。地方公務員、教育公務員への影響については、法案の全容を見ないと何とも言えないが注意をもって対応したい。義務教育費国庫負担金についてはこの制度の根幹が維持できるように、予算確保のために、全力をあげたい。」
超勤縮減、調査などの精選・合理化
○超過勤務の具体的な解消にむけ、調査等の精選・合理化をはかること。また、研究指定校を大幅に減らすとともに、これに関わる会議や資料の軽減を積極的にすすめること。
文科省「文科省として平成20年度以降、省内で調整をはかり、学校にたいする調査の統合、一括化をはかってきた。今後とも見直しをすすめていきたい。調査などについては、都道府県、市町村教育委員会のものも多く、多忙の原因となっているとの指摘もあるので、文科省としても地方の調査などの見直し、一括化をお願いしたい。」
10年研修、初任研の廃止
○10年経験者研修、初任者研修を廃止すること。当面、教職員の自主性を守り、教員の子どもに向き合う時間の確保などの観点からそのあり方を抜本的に見直すこと。
文科省「教員研修のありかたについては中教審で検討しているところだ。1月末の審議経過報告では教職生活全般を通じての資質・能力の向上策の重要性について言及され、その一環として研修制度が位置づけられている。初任者研修制度や自主的、自発的な研修も含めて、中教審での審議経過をふまえて今後の制度設計など、適切に対応していきたい。」
「新・教職員定数改善計画(案)」の着実な実施
○文部科学省が策定した「新・教職員定数改善計画(案)」を着実に実施すること。
文科省「文科省として中教審答申を踏まえて学級編成の標準の改正めざし、8か年計画を策定した。昨年、小学校1、2年段階での35人学級実現の予算要求をし、最大の努力をしたが、政府全体の合意が得られなかった。しかし小学校1年については法改正の3大臣合意を取り付けることができた。平成24年度以降について、小学校2年以降の順次改正の検討、法改正が法案の附則に入ったので、法案の早期成立を期したい。学級編成の標準の改善は30年ぶりの重要なことなので、今後とも理解、協力、支援をお願いしたい。」
以上の文科省の回答をうけて、全教の北村書記長は「教員の地位勧告をふまえた誠実な協議の実施を文科省からすでに回答されている。公務員制度改革にかかわる制度設計に向けて、また給与法の改定の取り扱いについて、教員の地位勧告を生かし、必要な協議をおこなうことを要望しておく。初任研の負担増による若い教員の退職、精神疾患が増えており、文科省の責任は大きい。各地では初任研の日数削減など負担軽減のための見直しをせざるをえないほど深刻だ。文科省として初任研制度全体の見直しをすべきだ」と要求しました。
また「文科省が策定した定数改善計画案は生きているのか」と質したのに対して、文科省は、「小2以降については、学校の状況、国会での法案の審議状況や意見をふまえて検討することになっている。小1から中3までの改善を検討するにあたっては、昨年策定した定数改善計画案は、文科省がものを考えるベースになる」と回答しました。
さらに全教の本田副委員長は「給付制の奨学金事業の実施の重要性について全教も文科省も共有している。2012年度はぜひ実現できるように努力するとともに、県の就学支援基金を活用した、いっそうの負担軽減ができるようにとりくまれたい」と要望しました。