『クレスコ』

現場から教育を問う教育誌

クレスコ

〈2024年12月号 11月20日発行〉

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2025年度政府予算に対する文部科学省概算要求にかかわる交渉

全教は8月1日(木)、文部科学省と「2025年度政府予算に対する文部科学省概算要求にかかわる要求書」にもとづく交渉を行いました。全教から波岡知朗中央執行副委員長をはじめ7名、安井順一郎初等中等教育局財務課長はじめ4名が参加しました。

「基礎定数の改善にしっかりとりくむ」と回答

 まず、要求書の手交に続き、中教審審議まとめに対する全国から寄せられた職場団体決議と現場の教職員の意見を提出しました。冒頭、金井中央執行副委員長から、来年度予算において、少人数学級の推進、教育無償化、教職員未配置および教職員の長時間過密労働の解消のため、十分な教育予算の確保を求めるとともに、対応レベルの検討と十分な交渉時間の確保について強く要望しました。また昨年度の全教のILO/ユネスコの共同専門家委員会(CEART)に申し立てに対する文科省の見解を受けて、5月に全教が意見をCEARTに提出したことを述べ、これに対する文科省の見解をCEARTに届けるよう誠実な対応を求めました。

全教は、以下の3点の重点項目にしぼって交渉をおこないました。

(1)基礎定数増を基本とする教職員定数改善をおこなうこと。当面、教員の担当授業時数の上限を設定し、計画的に改善することができるよう義務・高校の標準法を改正すること。

(2) 在校等時間を労働時間として認めること。教職員が所定の勤務時間内で勤務を終えられるよう、教職員定数を大幅に増やすこと。給特法の見直しにあたり「時間外勤務を命じない」原則を堅持しながらも、やむを得ず発生した超過勤務に対し、時間外勤務手当を支給できるよう改正すること。

(3)「メリハリある教員給与」の名のもとに、成績主義賃金の拡大や管理職手当の格差拡大、給料の調整額の引き下げなどをおこなわないこと。新たな級や学級担任手当の創設などはおこなわないこと。

「基礎定数増と時数の縮減は重要な課題」と回答

文科省は「教職員定数の改善は非常に重要である」として、小学校の35人学級推進、通級指導・日本語指導の基礎定数化、小学校高学年の教科担任制を1年前倒しによる完成で、基礎定数を改善したことを強調。また「基礎定数の改善にしっかりととりくみ、その上で加配定数の改善」進めると回答しました。担当授業時数の上限について、持ち授業数だけをとり出して設定すること、各地域で状況が異なる中、国が一律に上限設定することは難しいと否定。一方、「時数の縮減をはかっていくことは重要」とし、小学校の授業時数の平均24コマについては縮減を図る必要性は、政府行政としてしっかりとりくんでいく必要があると回答しました。

在校等時間を労働時間と規定する要求項目については「給特法と労基法で適用している考え方の体系が制度的に違う」と述べ、時間外勤務手当の支給についても、中教審「審議まとめ」の議論に言及しながら、教職の特性を考え、教職調整額が合理性ある仕組みであるとして否定し、処遇の改善のあり方を検討していくと述べました。

現行の賃金水準引き下げによる「処遇の改善」は許されないと指摘

文科省の回答に対して、全教は、乗ずる数を増やすことにより基礎定数を見直し、基礎定数をすべて正規で充てること、そして学習指導要領の学習内容の縮減を求めました。

 給特法下における教職員の勤務時間も、労働法制上の制約を遵守すべきで、厚労省のガイドラインにもとづけば、勤務時間すなわち労働時間という法制上の整理になるはずと反論。そのことを踏まえ、勤務時間内に業務が終えられる体制をはかりながら、厳正な勤務時間管理をおこなった上で、時間外勤務については、労基法37条にもとづく時間外勤務手当を支給することは、上位法である労基法の考え方からも当然支給されるべきものと主張しました。

 最後に、処遇の改善は一律に図られるべきと主張した上で、「新たな職」創設および教職調整額10%以上の原資について、現行の教諭の賃金水準の引き下げにより生み出すということを想定しているかという質問したところ、文科省は「全体としての教育予算の充実を図っていく」と回答しました。重ねて現行の教諭の給与水準の引き下げを考えていないということかと確認を求めたところ、文科省はうなずいて否定しませんでした。

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