全教は、7月16日、「新型コロナ感染拡大にともなう子どもと学校実態調査アンケート」集計結果を発表しました。この調査は、新型コロナウイルス感染拡大が子どもたちと学校・教職員にどのような影響を及ぼしているのかを明らかにするために、5・6月に、31都道府県の785校からアンケートを集約したものです。
この調査によりあきらかとなったことの概要は次の点です。
(1)休校中、ほとんどの学校で家庭学習の配布がおこなわれたが、定期的な家庭連絡が約7割にとどまる。休校中のオンライン学習(授業、教材配信、TV放送など)は約1/3の学校で実施。しかし小学校で双方向のオンライン学習は4.1%であるなど、オンラインにより子どもの学習を保障する環境は整っていない。
(2)学習の回復のために、ほとんどの学校で長期休業期間の短縮と行事の削減が予定されている。また、学習単元の調整などがおこなわれている学校は約1/3にとどまっている。学習の回復のために土曜授業を実施・拡大した学校や放課後補習を実施する(又は増やす)学校は少ない。
(3)職員室の3密回避対策がとられている学校は、約半数にとどまっている。開校後、子どもたちのケアや学習指導、消毒作業等により多忙を極め、また在宅勤務を取得することも困難となっており、教職員への感染拡大防止対策が求められる。
(4)20人規模での授業など少人数学級を求める記述が非常に多い。40人学級では、「3密」回避は不可能であり、20人規模での授業をおこなうことができる条件整備が早期に求められる。また、消毒作業等を専門のスタッフによりおこなうことや特別教室を含めたエアコン設置は急務となっている。
(1)休校中のとりくみについて
ほとんどの学校で家庭学習配布をおこなうなど家庭学習課題を提示した一方、定期的な家庭連絡をおこなった学校が約7割にとどまっています。家庭学習配布のみとなっている学校もあることが予想され、子どもたちへの必要なケアや指導ができなかった学校があったことが推測されます。
また、オンライン学習は47.0%の学校がなんらかの形で実施され、休校により子どもと対面できないもと、少しでもコミュニケーションをとることや学習機会を提供することなどが模索されました。しかし、双方向のオンライン学習の実施は小学校で4.1%、中学校で8.3%など、家庭や学校のオンライン環境は不十分で、参加できない子どもも多く、保護者の支援がないと学習できないなど、すべての子どもの学習を保障する環境は整っていないことがあきらかになりました。また、子どもの意欲に差があることや子どもの反応を把握することが困難であることが指摘されています。
(2)児童・生徒の感染予防対策について
多くの学校で消毒液の配備や検温、分散登校などの対策がとられましたが、少人数指導は約3分の1にとどまっています。
今後必要と考えられる感染予防対策について、少人数学級や教職員増を求める声がたいへん多く、子どもたちの下校後、教職員で毎日1時間程度作業をおこなうなど、消毒作業が教職員に大きな負担となっていることがわかります。消毒液やサーモセンサー等感染防止のための物品配備とともに、消毒作業について専門の人員配置や特別教室を含む全教室へのエアコン配備は急務です。
3)実施できなかった学習の回復のために実施する(又は予定の)事項について
ほとんどの学校で長期休業期間の短縮と行事の削減が予定されてます。学習の回復のために土曜授業を実施・拡大した学校や放課後補習を実施する(増やす)、または予定する学校は、長期休業期間短縮・行事縮減と比べると少ないと言えます。
また、学習の回復のために体育祭・文化祭・学習発表会・合唱コンクールなどの行事の中止が予定されています。夏休み短縮とともに、一日7時間授業や定期テストの日数を減らし授業時間を確保することなどが予定されている学校が見られます。
(4)教職員への感染予防対策や服務について
在宅勤務の奨励はされているものの、勤務時間は縮減されていません。約半数の学校職場では職員室の「3密」回避対策はおこなわれていません。学校再開されてから実際には在宅勤務はほとんど取得できない状態であり、教職員の感染リスクは高いと考えられます。在宅勤務や時差出勤等が可能となる教職員の増が緊急に必要です。また、感染リスクの高い養護教員はじめ教職員のPCR検査を求める声が多いです。
この設問においても、少人数学級や消毒作業などへの専門の人員配置、エアコン設置や熱中症対策を求める声がたいへん多いです。
(5)子どもたちの特徴的な声・様子や父母・保護者の要望等について
≪子どもたちの特徴的な声・様子≫
○ 約3か月の休校中「早く学校に行きたい」「友達や先生に会いたい」と願い、再開されて「友達と会えてよかった」「学校に来れて楽しかった」などの声が多く、登校しにくかった生徒が分散登校などで登校しやすかったとの記述が見られます。
○ 一方、「昼夜逆転」「ゲーム漬け」など生活リズムが乱れている子どもが多く見られます。休校期間中の家庭学習状況に大きな差があり、学力の格差だけでなく、生活リズムの確立などでの格差も大きく、それが、再開後の学校生活への意欲の違いとなっています。
○ 新入生への新たな生活への指導が充分おこなえず、学校生活に馴染んでいないケースが多く、特に小1の場合は顕著である。
○ 中3、高3の生徒について、部活動の最後の発表の機会が失われ大きなショックを受け、不安定になっている生徒が多いことがわかります。また学校行事がなくなってしまうことへの心配や、進路について情報が少ないことや進路選択に関わって就職や家計収入の急変などについての不安が大きいです。
○ 定時制高校の生徒にとって、アルバイト収入の減少が大きな打撃となっています。
≪父母・保護者の要望等≫
○ 休校期間中から、学校再開を求める声、学習の遅れを心配する声、給食の再開を求める声や、保護者が在宅勤務できなかった、「学校に見放された、見捨てられた気分」などの声が多く出ています。また、子どもの生活リズムが乱れていることへの不安が大きく、家庭学習への親の対応は困難があったとの声が多く出されています。
○ 一方、学校が再開されたことでの感染についての心配(登校時や給食の感染リスク含め)も多く、特に特別支援学校などで再開後も登校させない例もみられます。
○ 再開後、学習の回復を望む声だけでなく、行事の実施の要望が多いです。
(6)学校で緊急に対策・対応が求められる課題について
○ 消毒、トイレ・手洗い清掃等の物品確保と、清掃・消毒などの専門業者による対応を求める声が多いです。
○ 少人数学級・指導のための教員増を求める声が多く、特に40人では感染防止ができず、20人・30人学級をもとめる声が非常に多く出されています。緊急の対策が求められます。
○ 夏を迎えるにあたり、感染防止とともに熱中症対策としてもエアコン全教室設置(特別教室など含む)を緊急に求める声が多く出されています。