全教は3月11日(水)、文部科学省と「全教2020年春闘要求書」にもとづく交渉を行いました。全教から小畑雅子中央執行委員長、檀原毅也書記長をはじめ9名が参加し、文科省からは今村聡子 総合教育政策局主任教育企画調整官ほか計6名が参加しました。
冒頭に小畑委員長から、新型コロナウイルス感染予防にかかわる一斉休校の対応について現場での様々な問題が複雑化・深刻化していることを指摘しました。子どもたちの最善の利益を守る観点から、科学的な知見も踏まえ、一律の休校ではなく地域や学校の実態に応じた柔軟な対応が可能となるように、子どもたちのいのち・安全を守るための支援策を改めて求めました。また、「1年単位の変形労働時間制」導入を可能とした「法改正」について、長時間過密労働の実態を解消しないばかりか、かえって助長するものであることが国会で明らかになったことを指摘し、「せんせい ふやそう」署名3114筆を追加提出し、「1年単位の変形労働時間制」導入ではなく、抜本的定数改善による教職員増を改めて訴えました。
交渉は4つの重点要求にそってやりとりが行われました。
「全国学力・学習状況調査」、新年度4月の調査は中止にせよ
文科省は「全国学力・学習状況調査」の目的は、子ども一人一人の育ちを支え伸ばすために先生方の日々の指導改善に生かすことと従前の説明をした上で、新年度4月実施については「現時点で予定通り実施で準備をすすめている」としました。全教は、4月に開校する学校において「まず安心して学校生活が送れるようにすることが最優先であり、実施することは大きな問題がある」と、4月調査の中止を求めました。また、文科省は全国学テの点数競争等の問題点について、福井県議会や高知県土佐町の意見書を「承知している」としながら、「調査をやめたら競争的な考えがなくなるかといえばそうではない。別の手段で何か追い立てるようなことをするというようなことは残る」と述べ、「適切な調査への向き合い方」を現場で「対話」してほしいと述べました。全教は、「文科省として実態を把握しているのか」と質し、当面悉皆実施を中止すること、そのことで競争主義的な序列化につながるような対応を改善できると訴えました。
教員免許更新制度は制度疲労を起こしている
文科省は、更新講習は受講者アンケートでも「一定の評価を得て」おり、更新制度は「教員として必要な資質能力を保持されるために必要」として基本的に廃止は考えていないと述べました。
65歳に達する方への免除については、更新制度の趣旨の観点から免許更新は必要だが、未更新者を定年退職者の再任用等で採用する場合、臨時免許状で柔軟な対応が可能であることを明確にする措置を講じていると述べました。全教は「教職員未配置がこれだけ広がっているもとで深刻な問題」と指摘し、「65歳まで働き続けていた先生についてはそれなりの力量や見識がある。講習を免除し手続きだけで更新できる制度を」と主張し、65歳に限らず教職員の負担軽減の面からも制度の廃止を強く求めました。
「穴があく」で少人数学級が後退
標準法改正について文科省は、H29年3月の改正内容にふれるとともに、中教審における小学校高学年における本格的な専科指導導入についての答申が来年度出る予定で、それを踏まえて制度改正できるよう検討していきたいと答えました。少人数学級については各都道府県・指定都市の実施状況について述べ、H23年の学級編制標準の改正をもとに地域の実態を踏まえて引き続き検討していくことを述べました。全教は深刻な未配置(「穴があく」)の実態のもとで少人数学級を維持できない自治体が増えている状況を述べ、国の責任で少人数学級を行うことの重要性を改めて指摘しました。
特別支援学校設置基準策定の検討を
文科省は、特別支援学校の設置基準について、「対象とする障害種に応じた多様な施設整備が必要とされることから策定されていなかったが、依然として高い水準で教室不足が生じていること等を踏まえ、現在開催している『新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議』において、その要否や策定の際の留意点等についても検討を行っている」と回答しました。また、教室不足解消に向けてR2~6年度を集中取組期間とし集中取組計画を策定することなどを求めていることを明らかにしました。全教は、文科省の教室不足調査が再開されたが、2016年までと比べ不足数の解消が緩やかになっている実態を指摘し、調査の実施が解消につながる政策だとして調査を毎年実施することを求めました。また、既存施設利用の予算措置が「既存施設ありき」となっており、本来必要なところに学校をつくれるようにすることが重要と主張しました。