『クレスコ』

現場から教育を問う教育誌

クレスコ

〈2024年12月号 11月20日発行〉

【特集】登校拒否・不登校から見える景色――安心できる居場所がほしい

  • 全教共済
ニュース

会計年度任用職員制度の導入にあたり文科省へ要請

  全教は 8  9 日(木)、 2020 年度からの会計年度 任用職員制度導入に向けた準備が全国で進められていることから文科省に対し、制度の導入にあたって臨時・非常勤教職員の待遇を絶対に後退させないこと、合わせて政府・文科省が地方自治体当局及び、 地方教育行政に対する財政措置を含む条件整備を行うことを強く求めました。また、人事院勧告が翌 10 日に控えていることから、定年年齢の引き上げにかかわる要請書を手渡し、文科省として勤務労働条件の改善のために主体性、独自性を発揮して尽力することを併せて要請しました。

★ 正規の任用が多くなるよう適正に!(文科省)
法改正の趣旨を損なうことないよう検討中だ!

 文科省は、「これまで各地方公共団体では、非常勤・臨時的任用職員等の任用や勤務条件が様々に取り扱われていた。これを法の趣旨に照らし、常勤職員との権衡の観点から改めて整理し、条例・規則等によって適正に位置付けするため、地方公共団体の状況等を踏まえながら、法改正の趣旨を損なうことにならないように検討している最中だ」とし、各教育委員会に対しては、「総務省の通知と同時に文科省からも教育委員会に通知を出すなど、2020年度の施行に向けて周知を行い、教育委員会からの情報提供や照会については状況把握と助言に努めているところだ」と現状を述べました。

要件を満たせば改正後も臨時的任用!

 また、臨時的任用の改正後の在り方等について、「『緊急の場合』『臨時の職に関する場合』『採用候補者名簿や昇任候補者名簿がない場合』のどれかに当てはまらないと改正後の臨時的任用になってはならないと厳格化された」ことを示した上で、「総務省が『現状で臨時的任用は改正後も基本的に臨時的任用だ』と全教に説明したとのことだが、直ちに臨時的任用ではない。改正後の要件に沿っていないとダメだ。総務省もそういう説明をしている」と述べました。

 ただ教育部分については、「総務省マニュアルに教員は、定数の見込みが立ちづらく、フルに張り付けられない場合にあっては、改正後の臨時的任用であっても差支えがないという記載がある」と述べ、「教育業界は他の業界に比べれば、比較的に臨時的任用の要件が広めだ。整理された後の臨時的任用職員をどういう処遇にするかは、しっかりと自治体が検討しなければならない。臨時的任用職員は正規の人の代替で入るので、同様の給料表に基いて上限があってはならないし、基本的には同じような手当が出なければならない。そうした趣旨を踏まえて、自治体にやっていただかなければならない」などと任用と処遇が適正に行われるかどうかは、地方公共団体の責任において行われるものとの考えを改めて示しました。

給料と処遇は各県が決めること!

 また、「空白の一日」などの解消が一部で進んでいないことなどに関して文科省がどのような指導・助言をしているか質すと、文科省は、「地方自治法と地公法では、地方公務員の給料と処遇については各県の条例で定めることになっているので、文科省の立場からは『趣旨に則ってやってもらわなければ困る』としか言えない。会議等で『改正でこういう趣旨の法律になる。しっかりとやってくれ!』と言うことは繰り返し述べている」と従来通りの回答に留まりました。

 波岡中執が、「法改正による任用の適正化等で、臨時的任用を正規に置き換えるなど、正規の増につながっていくと考えられるか」と質すと文科省は、「教員の非正規率が高いということはあるが、ゼロにするのは無理だ。病休者の代替もあるからだ。著しく非正規率が高いのであれば、任用を正規が多くなるよう適切にやれと説明している。例えば、臨時的任用が100いる中で20くらいは、元々正規でおくべきではないかという整理を自治体が判断するならば、正規に任用替えするというか、正規の職員を充てるということもあり得る。そこは是非やっていただきたい」と回答しました。

■ 「改正地公法」の趣旨をふまえ、次の任期との間に設定されている「空白期間」を解消すること。
⇒ 退職手当や保険料支給しないために空白期間設けることは適切ではない!

 「空白期間」の問題について文科省は、「問題については重くみている。法改正において、職務の遂行に必要かつ十分な任期を定めることという条文を盛り込んだ。当然、任期の設定自体は地方公共団体が適切に判断するところだが、退職手当だとか、保険料を負担しないために『空白期間』を設けることは適切ではない。適正に対応してもらうよう周知する」と述べました。

■ フルタイムで働く臨時教員の適用給料表を旧教育職(二)・(三)2級とすること。また、昇給の頭打ちを廃止し、正規教員と同様とすること。
⇒ 職務給の原則は守られるべき!

 臨時教員の給与の格付について文科省は、「昨年秋の新聞報道で職務の内容も同じ先生の代替なのに給与は1級で格付けされているとの話があった。これは職務給の原則又は同一労働同一賃金の原則から言って、適切なものではない。もし全く同じ職責であるならば、そこは適切に直す必要がある」と述べ、職務内容が教諭と同じであれば教諭で任命すべきとの職務給の原則が守られるべきとの見解を示しました。

 一方で、「どの級の人をどの役職に就けるかは、地方公共団体の判断だ。臨時的任用だから全てを2級に位置づけなければならないということでは必ずしもない。その人がどのような職で、どのような職の内容であるかを踏まえて決めることになる。地方自治体で、2級と1級が両方ある場合は、その級に応じてという形になる。1級しかない場合は、その人が臨時的任用をされた場合にどういう役職になるか、どういう仕事かが大事になる」としました。

昇給の頭打ち(上限)は好ましくなく撤廃する方向

 また、昇給の頭打ち(上限)については、「基本的に好ましくない。この点は、総務省からも言われている」と述べた上で、「上限については、撤廃する方向で各自治体に会議等で話している」との立場を示しました。

 米田副委員長は、「臨時的任用は2級適用されていない問題があり、さらに頭打ちになる状況におかれている。実際に産休の代替で入った人は、担任の先生と同じことをやっており職務は変わらない。3月28日の総務省の会議では、コマ講師の授業準備も当然必要だから、持っている授業時間だけではなくて、授業準備も含めて賃金を設定すべきだという説明もされている。そういうことをQ&Aの形など文字にするよう求める」と要請するとともに、「実際に総務省の説明でも、『1分でも短い場合は、パートタイムの会計年度職員だ』と説明されている。1日、7時間44分で、しかも教務主任の指導の下では授業を持つこともできるということであれば、脱法的な対応も起こり得るという懸念がある」と安上がりに任用される可能性を指摘しました。

■ 会計年度任用職員の導入を円滑にすすめるため、国による財政措置を講じること。
⇒ 国による財政措置―文科省として明言せず!

国による財政措置について文科省は、「会計年度任用職員に期末手当を支払うことになる。それ以外のものも含めて、地方財政措置をどうするかについて、総務大臣は5月9日の総務委員会で、『必要となる財源については今後、各地方公共団体の対応などの調査を行う必要があると考えていて、実態を踏まえつつ、地方財政措置や手法についてもしっかりと検討してまいりたい』と答弁した。総務省がそのような検討状況にあるので、情報を手に入れながら、必要なことは文科省からも説明していきたい」と述べ、文科省として財政措置の確保を求めることについては明言を避けました。

■(1)特別職から会計年度任用職員に移行する教職員の賃金・労働条件については、現行の水準を下回ることのないよう措置すること。
 (2)会計年度任用職員への支給が可能とされる諸手当は確実に措置すること。
⇒ 処遇の後退は法改正の趣旨に反する!

 会計年度任用職員に移行する教職員の賃金・労働条件については、「任用をまず適切にして、それに伴う処遇を確保するということが今回の法改正の趣旨だ。そこを鑑みると処遇が著しく下がるとか、本来、支給されてきた手当が支給されないということは、法改正の趣旨から言って好ましくない。もし本当にそれをやるのであれば、そうした自治体がどういう理屈でやったかという説明責任を負うことになる。我々としては本来、支給が想定されるべきものであれば支給してもらわねばならない」とし、処遇が後退することは法改正の趣旨に反する旨を明言しました。

 なお、会計年度任用職員の手当の部分については、「限定的に期末手当等が列挙されているだけであり、今後、勤勉手当を含めてどうするかも総務省でも検討段階だ。そこは始まったばかりで、今度どう広がっていくか分からないが、基本的には総務省の趣旨に則って、各自治体で適切に制度設計してもらわねばならない」としました。

■ (5)自治体独自で少人数学級を実施するために任用する教職員は、会計年度任用職員とはせず、フルタイム臨時任用教職員とすること。また、自治体独自で任用する栄養職員や現業職員等についても同様に措置すること。

 小畑書記長は、「市町村が少人数学級を実施するために任用している教職員は、地域の保護者の要求でかなり多くなっている。しかも、少人数学級を実施するために市町村ごとに任用しているので、担任などをする場合が多い」ことを指摘し、「本来は臨時的任用とすべきだが、各自治体でブレているところがある。その辺の考え方はどう整理されているのか」と質しました。

 文科省は、「担任を持つのであれば会計年度任用職員は除かれる。会計年度任用職員か正規かの区分けは、職責が重いか軽いかだ」と説明。

 「義務教育国庫負担金と義務標準法の整理から言うと、会計年度任用職員フルタイムは対象にならないので、会計年度任用職員をフルタイムでどうしてもやりたいと市や県で言われても、やっていただく分には構わないが、国庫負担法の対象にはならない。完全に自分たちの持ち出しになる。会計年度任用職員のフルタイムにならないので、臨時的任用になるということであれば、改正後の臨時的任用の厳格化された要件にちゃんと当てはまる説明や整理をしてもらわねばならない。例えば、『少人数学級であればどのくらいの規模になるかは、その直前になってみないと分からないから、定数を立てづらいので、臨時的任用です』という説明をちゃんとしていただかないとならない」と回答しました。

 また、市町村での扱いに関わって文科省は、「義務教育費国庫負担金の限度額算定上は今のフルタイムは入らない。実支出額でいった時に会計年度任用職員のフルタイムをそこで充てられると困るが、一般的に市単費の職員だとしてやっていただいた時にその市町村の給与費をどういう位置づけにするかということもあるので、今具体的な話がないと答えられないが、必ずしも、市単費といっても丸々持ち出しではない場合が結構ある。加配を使ったりすることもあり、一概には答えられない。実際にどういう工夫をされるかは置いておいて、改正地公法の趣旨に則って、会計年度任用職員制度が出来た位置付けと言うのは、繰り返し説明しているが、なかなか理解されない。丁寧に説明しながら、いろいろな場合に定数担当とも相談しながら検討していかなければならない」との考えを示しました。

定年年齢の引き上げに関わって文科省の主体性・独自性発揮して尽力を!

 最後に米田副委員長は、人事院勧告が翌10日に控えていることから、定年年齢の引き上げにかかわる要請書を手渡し、文科省として勤務労働条件の改善のために主体性、独自性を発揮して尽力することを併せて要請しました。

 米田副委員長は、「人事院は明日に予定されている2018年度勧告と同時に『定年の段階的な引上げのための意見の申出』を行うとしている。国家公務員の定年引き上げに伴い、地方にも国に準じた制度『改正』が求められることは自明だ。しかし、政府が定年引き上げの論点整理をまとめた検討会に文科省は加わっておらず、役職定年などが事実上ほとんど想定できないこと、小学校や特別支援学校の教員や体育科担当教員などは肉体労働そのもののともいえる実態にあること、さらには宿直勤務をともなう寄宿舎指導員の勤務の実態など教職員の独自課題に配慮した制度設計にならないことを私たちは危惧している。

 今後、政府が行う定年引き上げにかかわる制度設計がすすめられるもとで、政府を構成する文科省として、主体性、独自性を発揮して、勤務労働条件の改善のために尽力されることを強く求める」と強調しました。

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