全教は、4月20日文部科学省に対して文部科学省による学校と名古屋市教育委員会への不当な介入に関する緊急要請を行いました。要請には、全教から米田副委員長、小畑書記長、宮下書記次長、波岡・船岩・糀谷中央執行委員が出席し、文科省から降簱友宏・初等中等教育局教育課程課学校教育官ら4人が対応しました。
冒頭、全教は「文部科学省による学校と名古屋市教育委員会への不当な介入に関する緊急要請書」を提出しました。米田副委員長は、今回の文科省の調査は「事実確認に名を借りたきわめて乱暴な教育内容への点検・介入である」と述べ、「表現ぶりに誤解をまねきかねない」などといった言いつくろいではなく、不当な介入の非を率直に認め、教育内容や教育行政への干渉・介入を許さない立場を堅持するよう、以下2点を要求しました。
①今回の学校と名古屋市教育委員会への不当な介入について、文部科学省の過ちを認めること
②政治家からの働きかけやその影響なども含め真相をあきらかにするとともに、不当な介入に対して毅然とした対応をとること
それに対し、文科省は、今回の調査に関する経過の説明に終始しました。
その中では、授業に関する記事が中日新聞に掲載されたことから、赤池議員から「確認依頼」があったこと、池田議員から提供された記事の内容を確認して名古屋市教委に電話をしたことなど、国会議員のはたらきかけをうけて行われた調査であることがあきらかになりました。さらに文科省は、名古屋市教委から受けた情報を両議員に説明した上で、市教委に対する質問内容を事前に議員に提示し、もらったコメントをもとに初中局の判断で質問内容を訂正したと述べ、それは「初中局の主体的な判断で行ったもので、議員の方から指示があったものではない」としました。
そして、「今回の調査は、法令にもとづいて適切におこなったものと考えている」としながら、質問状の「表現ぶりなどが誤解を招きかねない」ということで、林文部科学大臣から初中局長に注意があり、「今回の事案を踏まえ、教育現場に対し、いっそう丁寧な対応に努めていきたい」と述べました。
それに対し全教は、今回の調査は、①調査権を濫用して地方教育行政や学校の教育活動に介入したこと、②本来、学校現場を不当な支配から守らなければならないにもかかわらず、文科省の説明でもあきらかなように、政治家のはたらきかけによって調査を行ったこと、という2つの意味で不当であると指摘しました。
まず、「法令にもとづいて適切に行われた」というが、文科省が今回の調査、指導・助言の根拠としている地教行法の改正にあたり2014年7月に前川事務次官名で出された「通知」によれば、地方の教育委員会に対する国の関与は、「児童・生徒等の生命又は身体に現に被害が生じ、又はまさに被害が生ずるおそれがあると見込まれ、その被害の拡大又は発生を防止するため、緊急の必要」がある場合に限定されているが、今回の調査はそれに該当しないではないか、と追及しました。
それに対し文科省は、「前川前次官が天下り問題にかかわって、たんに監督責任だけではなく、本人自身の違法行為で停職相当にされた」ことから、「適切な教育的配慮の下で行われていたのかどうか、という確認をする必要があった」と回答しました。それは「一定の方向づけをしていることにならないか」との指摘に、「あくまでも事実確認で、けっして前次官の個人攻撃をねらいとして行っているのではない」としました。
全教は、その回答は到底納得できることではなく、下関で前川前次官の講演に対して教育委員会が後援を取り消すなど、文科大臣は「現場の自主性や創意を委縮させてはならない」と言っているが、結果としてこうした調査が圧力となって現場を委縮させてしまっていることは事実であり、調査自体を見直すよう、くり返し要請しました。
次に、今回の調査が国会議員からのはたらきかけを受けて始まっていることについて、全教は、「もし国会議員から連絡がなかったら、本当にこの調査をしたのか?」「議員が言ってきたとしても、『それは地方の問題ですから、調べられません』というべきだったのではないか」と質しましたが、文科省はそれまでの回答を繰り返し、「政治家からのはたらきかけをうけて調査したということではない」と強弁しました。全教は、質問内容について議員に情報提供し、確認してもらっているだけで国民にはそのように受けとられること、質問内容の訂正について、「主体的に判断」といいながら、「コメントも参考にして」などと言えば、「当然、疑義が生じる」と指摘しました。
また、1年前、大阪の私立幼稚園で園児に教育勅語を唱和させていた問題については、「憲法違反」との再三の指摘にもかかわらず、「学校の判断、設置者・所轄庁の判断」として指導・助言も調査も行わなかったこと、調査の結果、「今回の授業が何か法令に違反している、といったような事実はなかった」としたにもかかわらず、「前川さんを呼ばれる際に、事前にもう少していねいに調べた上で判断してから呼ばれるようにしたほうがよかったのではないか」などと「助言」したことは、文科省が一方の側の立場を学校や地方教育行政におしつけることであり、学校現場を委縮させ、不当な圧力・支配になると指摘しました。
そして、夜間給食の充実や「教育に穴があく」実態の解決などについて、「国として指導・助言してほしい」という要請に対し、文科省が「そういう立場にない」と回答してきたことを批判し、国民の思いをうけとめ、行政本来の責務である、どの子にもゆたかな成長・発達を保障する教育条件整備にとりくむことを強く求めました。