全教は3月14日(水)、文部科学省と「全教2018年春闘要求書」にもとづく交渉を行いました。全教から中村尚史中央執行委員長、小畑雅子書記長をはじめ9人が参加し、文科省からは合田哲雄 初中教育局財務課長、小泉武士 財務課専門職、八木下理香子 財務課給与企画係長、藤崎雅高 財務課高校修学支援室企画係、中島祐輔 大臣官房国際課調査主任、野島 大輔高校教育局学生留学課法規係長が参加しました。
交渉の冒頭、中村委員長から、教職員の長時間過密労働の解消について「抜本的な定数増と小1から高3までの少人数学級の実施、学校現場に押し付けられている様々な施策の見直しを抜きにして根本的な解決はない」と、文科省としての責任ある施策の実現を求めました。さらに、「現状は労働基準法や給特法などに反して違法状態。労働時間の管理をはじめとする法規制を厳格に順守する立場を文科行政に求める」とした上で、「勤務条件を整備する義務は雇用者である都道府県や政令市などとともに、国にも課せられている」とし、法に基づいて教職員定数、学級編制、教職員の給与等に責任ある施策を求めました。さらに、「教職員の勤務条件に関わる検討をすすめるにあたっては、そのメンバーに当事者である教職員組合を加えるべきである」と強く求めました。
教員の業務負担の軽減を図ることは急務
教職員の長時間過密労働の解消に向け、小中高すべてで35人学級の実現、教員一人当たりの持ち授業時数の設定が可能となる抜本的な定数改善など実効あるとりくみを求めるという要求に対し、文科省は「昨年4月に公表した勤務実態調査で、教員の長時間勤務については看過できないことが明らかになった。教員の業務負担の軽減を図ることは急務である。新しい学習指導要領の円滑な実施と教員の働き方改革の両立という観点から施策を考えている」と回答しました。これに対し全教の糀谷中央執行委員は、「文科省は、1958年の義務標準法制定当時、一人の教員が授業に充てる時間は勤務時間の半分程度で、残りの半分は授業準備や校務に充てるという計算で定数配置を決めたと国会答弁しているが、当時の積算根拠が崩れている。持ち時間数の上限を設定し、それに合わせて教職員定数を抜本的に改善してほしい」と発言しました。また檀原書記次長は「高校の標準法改正について、きわめて及び腰というのが近年の文科省の姿勢だと指摘せざるを得ない。標準法そのものを見直して、法的な裏付けをもって何とか高校の教職員定数を増やすことが必要」と述べました。文科省は「教職員定数の改善については引き続きしっかりととりくんでいきたいと思っている。高校については、高校教育のあり方の議論をする中でとらえ直していく必要があると考えている」と答えました。
給特法の改正で時間外勤務手当支給を求める
給特法の改正、教職調整額の維持、労働基準法37条と整合性を持つ時間外勤務手当の制度をつくるという全教の要求に対し、文科省は「昨年末に出された中教審中間まとめでは、給特法の在り方を含む教員の働き方については引き続き議論を進めていく必要があるとなっている。まさにこれから検討していくということ」と回答しました。これに対し、米田副委員長は「給特法も労基法も、その基本は超過勤務を命じないことを原則としており、コンプライアンスを口にされる政府や文科省の姿勢が鋭く問われていることを指摘せざるをえない。給特法の改正で、臨時または緊急の場合の限定4項目を含めた時間外勤務については時間外勤務手当を支給できるようにすることを求める」と強く要求しました。文科省は、「子どもたちに質の高い教育を確保するという観点からして看過できない状況であり定数の改善にもとりくんでいく」と答えました。続けて小畑書記長は「当然様々な観点から対策をとっていくことは重要だが、勤務時間の中では終わらないような仕事があるのは事実であり、だからこそ看過できない状況になっている」と述べました。
『教育に穴があく』問題、今すぐ解消を
また、定数内の臨時教員は置かず、代替者配置の遅れ、未配置を即時解消するとともに、臨時教職員の賃金・労働条件を改善するという要求に対して、文科省は「教員の任用については任命権者である都道府県、政令市教育委員会の権限と責任において行うもの。教育の機会均等や教育水準の維持・向上といった観点から非正規教員の配置によってあまりにも支障が生じる場合には、正規雇用教員の配置が望ましいと国会などでも答弁している」と回答しました。この回答に対し、全教の波岡中央執行委員は、「『教育に穴があく』問題は、子どもたちの学習権を保障する点でも、その学校で働く教職員の精神的・肉体的負担を増加させるという点でも、今すぐ解消しなければならない」「臨時教職員に関わって、『同一労働同一賃金』『均等待遇』を教育労働の現場でも実現するよう強く求める」と、全国の深刻な実態を踏まえた、文科省の責任ある対応を求めました。また、青木副委員長は、「昨年末の交渉で『正規職員の採用計画や代替職員の配置計画について、会議等できちんとやるように指導を強めたい』と回答したが、どのように指導したのか。また、全国の実態把握をしているのか、する予定はないのか」と文科省の姿勢を質しました。 これに対し文科省は、「常日頃教育委員会と接触し、また担当者を集めた会議でも子どもたちの指導に支障がないようにという話を伝えている。基本的には都道府県教育委員会の責任で行うべき問題であり、現段階で全国的な調査を行う考えはない」との回答にとどまりました。
家庭の経済的な事情に左右されない教育保障は大変重要
国際人権規約留保撤回を踏まえた、中等・高等教育段階の「無償教育の漸進的導入」をすすめる計画を策定し、国連から求められている「無償教育の具体的行動計画」を教職員組合などの意見を反映させたものとするという要求に対し、文科省は「条約締結国の義務として中等・高等教育無償前進のための計画をつくれということが求められているわけではなく、現段階でそういう計画を作ることは考えていない。しかし、家庭の経済的な事情に左右されることなく希望する質の高い教育を受けることができることは大変重要。昨年12月に閣議決定された経済政策パッケージにおいても、高等教育の無償化、授業料免除、給付型奨学金拡大、年収950万円以下世帯の私立高校授業料の実質無償化など、消費税の税率をあげることを前提に2020年度に向けて実施していくことが示されている」と答えました。全教宮下書記次長は「所得による制限があることで、生徒を選別せざるを得ない実態がある。すべての子どもたちに経済状況に左右されず学ぶことを保障する制度を確立すべき」「5月末までに国連社会権規約委員会から『無償教育の具体的行動計画』提出が求められている中で、教育の当事者である教職員団体との協議は政策判断において必須条件だ」と述べました。
最後に、全教小畑書記長が「教員免許更新制については、公務員の定年制延長の話も出てきている中では、65歳の問題なども出てきている。それも含めて、別の機会に話し合いを持ちたい」と、継続した交渉を要請し終了しました。