『クレスコ』

現場から教育を問う教育誌

クレスコ

〈2025年1月号 12月20日発行〉

【特集】障害のある人のいのちと尊厳―優勢思想をのりこえる

  • 全教共済
ニュース

文部科学省事務連絡「北朝鮮による弾道ミサイル発射に係る対応について」に対する要請

 全教は、1020日、文部科学省に対して、北朝鮮による弾道ミサイル発射に係る対応に関する要請を行いました。要請には、全教より宮下教文局長、糀谷中央執行委員、波岡中央執行委員が参加し、文科省からは奈雲太郎初等中等教育企画課調査係長が出席しました。



 冒頭、宮下教文局長から、まず北朝鮮のミサイル発射について「数度にわたってミサイル発射を繰り返すことが世界や地域の平和と安定にとって重大な脅威であり、国民や子どもたちにとっても脅威であり、決して許されることではない」「加えて、核兵器禁止条約が採択され、国連本部で署名がとりくまれている状況の中でこうした北朝鮮の暴挙は世界情勢からみても強く糾弾されるべきものだ」という全教の立場を述べました。

 次に日本政府の対応について、「国内では弾道ミサイル発射の際には北海道から長野県までJアラートが発動され、鉄道運休や休校などの措置が取られる状況がある。政府が正確な情報を国民に知らせることは必要だが、日本の上空800kmを飛ぶミサイルへの対応方針とすると適切なのか。また、それに対して冷静な検証がされているのか。非常に不安だけがあおられている現状に危惧を覚える」と指摘しました。

 文科省は、98日に通知文書「北朝鮮による弾道ミサイル発射に係る対応について」を発出していますが、その中身は、①ミサイルの落下に備えた危機管理マニュアルや安全計画等の見直しをすること、②自治体の危機管理部局と連係した避難訓練の推進を全国に求めることの二点です。この部分に関して、「子どもたちに過度に不安をあおることになり、さらに、『本件に関する取り組み状況について今後調査を実施する予定である』とわざわざ一文をつけ足し、事実上全国の学校すべてに調査・点検やとりくみ、避難訓練を強制することにつながる」危険性を強く指摘しました。

こうした立場に立ち、次の二点を要請しました。

①「各学校に危機管理マニュアルや学校安全計画等の見直しや避難訓練の実施等を押しつけないこと」

②「対応方策については各学校で地域の実情に応じて検討するものとし文科省等による一律の調査点検をおこなわないこと」

 

 文科省から、一点目に対して、「ミサイル等への対応については学校の安全管理の一環として地域の実情に応じて適切にとりくんでいただくよう文科省からお願いしている。児童・生徒等の実態に応じて安全指導を行うことをお願いするとともに、保護者・児童生徒本人たちもあわせて必要以上に不安にさせることがないように十分配慮するよう通知でお願いしている。過度に不安をあおったり、怖がらせるためにやっているわけではないが、避難訓練は何かあってからでは遅いので、やっておくようお願いしている。また避難訓練については、国民保護法42条1項にもとづき、訓練をおこなう努力義務が規定されている。一般論として避難訓練は実践的に対応する力を身につけるものとして効果的であり重要であると考える。実際に避難訓練を実施することで不安が解消される面もあるのではないか」。

 二点目に対して、「調査については、文科省としては各地域の学校の実情を把握してそれに応じた適切な対応の支援をおこなうことが必要と考えている。その際には今後の参考となる情報を得ること、各学校等からの意見をくみ取るという上でも、現場の負担を考慮したうえで適切な判断をしつつ調査等を実施していきたい」との回答がありました。

 この回答に対し、全教は、文科省の求める避難訓練が火災や地震に対するものと質的に異なるものであることを指摘しました。とくに通知文の表題にある「北朝鮮による弾道ミサイル発射」を前提とした避難訓練の実施を全国の学校に求めることは、「北朝鮮がミサイルを撃ってくるぞ」と子どもたちに言うことと同じで、いやでも不安をあおり立てることになるのではないかと重ねて指摘しました。

 さらに、通知を受けて避難訓練を実施した小学生が怯えていた様子と、子どもたちの「(ミサイルが)落ちてきたらこんなことをやっても何の意味もないでしょ。それよりはミサイル発射させないように大人はがんばって」という感想を紹介し、通知そのものが教育的なものとは言えず、今回の通知が政治的で、教育現場にはなじまないものだと訴えました。

 文科省の調査については、実施されることで学校現場には強制されている意識が強く働くということや、特に今回の「北朝鮮」「弾道ミサイル」を強調する避難訓練とその実施に関する調査は、子どもたちの安心・安全や教育とは別の思惑があるような印象を与えるもので、こうした調査を押しつけるべきではないことを最後に述べて要請を終えました。

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