全教は6月16日、文科省に対して「日本国憲法が保障する基本的人権を擁護し、教職員の政治活動の自由を保障することを求める申し入れ」を行いました。これは6月1日に文科省事務次官名で都道府県知事および教育長宛に発出された「教職員等の選挙運動の禁止等について(通知)」の撤回を求めるものです。
申し入れは米田雅幸中央執行副委員長、小畑雅子書記長、土方功、檀原毅也の両書記次長の4名で行いました。
申し入れでは、今回の「通知」が、すべての国民には、主権者としての重要な権利として、政治活動の自由に関する権利が保障されており、教育公務員も例外ではないことを意図的に欠落させていると指摘しました。そして、法的に禁止されている行為は「地位利用」のみであるにもかかわらず、「教育の政治的中立性を疑わしめる行為」「信用失墜行為の禁止に抵触する可能性」などの表現を用いて、あたかも教職員は政治的な活動すべてをしてはいけないかのように述べている、「通知」の問題点を指摘し、「通知」の撤回を求めました。
あわせて18歳選挙権の実現を積極的にとらえた施策を実施することを求めました。
さらに、今回はじめて、私立学校の教員対象に公選法等の遵守を求める通知が発出されたことから「私立学校の建学の精神と自主性を尊重し、教育内容への介入・干渉を行わないこと」を求めました。
また、「通知」で、公務員の政治的行為の制限をしている人事院規則14-7に言及していることについて、人事院規則14-7を述べる際には、その運用方針「この規則が学問の自由および思想の自由を尊重するように解釈され運用されなければならない」も示すことが当然であり、それをしていないことはまさに政治的中立性の逸脱であると指摘しました。
全教の要求に対して文科省は、「通知を撤回する予定はない」「未来の我が国を担っていく若い人の意見が政治的に反映されていくことは望ましいこと。他方、学校教育法等に定める目標を達成するべく生徒を教育する学校は公的な施設である。高校生の政治活動については必要かつ合理的な範囲で制限することもあり得る。」「私立学校の建学の精神と自主性の尊重は非常に重要。教育基本法14条第2項、公職選挙法は私学にも適用されることは、これまでも諸会議では周知してきたもの。公職選挙法改正で初めて18歳以上の選挙権となったので改めて文書にしたものである。」と回答しました。
この回答を受けて、以下のように追及しました。まず、憲法が保障する思想・良心の自由、言論・表現の自由は教育公務員にも同様に保障されるという基本的認識を確認した上で、選挙のたびに発出される文書が引き起こしている学校現場の具体例を挙げ、問題を認識するよう強く求めました。「文科省の通知を読みあげ、だから私は一度も選挙に行ったことはない、と胸を張って職員に言う校長がいる。本来は、自分の思想・信条に基づいて選挙に行くべきだ、と通知すべきではないのか。それがあった後に、してはいけない選挙運動がある、と例示すべきだ。この通知によって、政治的なことは何もしないほうがよい、ましてや選挙に行かないほうがよいのだ、という事態が生じていることを認識すべきだ。」「私たちは選挙に行ってもいいのですか、という教員もいる。このような教職員の態度は生徒にも及ぶことが予想される」などと訴え、「通知」の撤回を重ねて求めました。しかし、文科省側は問題点の認識にきわめて消極的な態度をとりました。また、「通知」は18歳選挙権の実現を前向きにとらえていないではないかという指摘したところ、「今回はわかりやすくするために、やってはいけないことに焦点を当てた」と述べました。全教は制限されているのが「地位利用」だけであることが、かえってわかりにくくなっていることを指摘しました。
人事院規則14-7については、その運用方針も述べるべきだという指摘についての見解をただしたところ、「人事院規則についてはその通りだ」と認めました。最後に憲法にもとづく教育行政をするよう重ねて求め申し入れを終えました。