『クレスコ』

現場から教育を問う教育誌

クレスコ

〈2024年11月号 10月20日発行〉

【特集】ともに歩もう! ジェンダー平等と教育の世界へ

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国民主権を踏みにじる「改憲手続き法」強行抗議!憲法闘争の一大強化をめざす!5・16中央決起集会を実施!

 日比谷野外音楽堂では14日の改憲手続き法案の強行と可決に抗議するとともに、憲法闘争の一大強化をめざして、5・16集会が開催されました。改憲手続き法を発動させず、憲法を守る側に国民の過半数を結集するために、運動をさらに発展させていくことを確認。3200人の参加者は国会請願デモを行い、国会に向けて採決強行抗議の声を届けました。


◇◆◇国民主権を踏みにじる「改憲手続き法」強行抗議!
憲法闘争の一大強化をめざす!5・16中央決起集会◇◆◇(敬称略)
 
 開会あいさつ   高田 公子 新日本婦人の会 会長 
 
 政党あいさつ   市田 忠義 日本共産党 書記局長 
 
 特別報告      田中 隆 弁護士(自由法曹団 幹事長) 
 
 閉会あいさつ   柴田 真佐子 全国労働組合総連合 副議長 
 
 集会アピール   
  
※これらの発言は、本HP管理者(当時)がまとめたものです。


政党あいさつ   市田 忠義 日本共産党 書記局長
 5・16中央決起集会に全国からお集まりのみなさん、日本共産党の市田忠義です。
 私はまず、改憲手続き法の採決を強行した自民党、公明党の暴挙をみなさんとご一緒に、満身の怒りを込めて糾弾するものです。同時に、自民党との密室協議で、採決に合意した民主党の責任も厳しく問いたいと思います。
 改憲手続き法案は通りました。しかしみなさん、改憲派がどんな仕掛けをつくろうとも、国民の多数がノーといえば憲法を変えることはできません。まさにたたかいはこれからが本番であります。憲法改悪反対の1点で、国民のゆるぎない多数派をつくるために、今日、この集会を新たな出発点として、たたかいにお互い立ち上がろうではありませんか。

中央公聴会も開かず破綻した法案を強行
 自民・公明・民主の3党は、法案採決に際して、18項目にも及ぶ「付帯決議」をつけました。たとえば「最低投票率制度の是非について検討を加える」「公務員・教員の運動規制については、学問・教育に自由を侵害しないよう、禁止される行為と許容される行為を明確化する」といった中身です。手続きの根幹にかかわる問題で、こんな付帯決議をつけざるを得なかったこと自体、法案が破綻していることのなによりの証明ではないでしょうか。
 たとえば最低投票率の定めがない問題です。法案提出者は「憲法96条に書いていないから」といって拒否していました。ところが、衆参で意見が割れたときのために、憲法に書いていないのに両院協議会という規定だけは盛り込みました。すなわち改憲案を通しにくくするものは憲法に書いていないからいって拒否し、改憲発議のために必要だと考えれば書いていなくても盛り込む、「こんなご都合主義はないじゃないか」。日本共産党の仁比聡平議員がこう委員会で追及すると、法案提出者は一言も反論できませんでした。
 また、公務員や教育者の方の国民投票運動の制限もでたらめです。憲法改定の是非は、主権者国民の最も大切な主権の行使です。そのためには、十分な情報提供と自由な意見表明、運動が欠かせません。それを、なぜ、公務員、教員というだけで制限しなければならないのか。「地位利用」というなら、企業の社長などほかにもたくさんいるじゃないか。これも仁比議員が追及しましたら、答弁不能に陥りました。こんな不公正で反民主的な手続法を、なぜ強引に押し通したか。それは、公正なルールをつくれば彼らの一番のねらいである9条を変えることができないからです。国民の中では自分たちが少数派であることを、彼ら自信が一番知っているから、こういう不公正で非民主的な法案をごり押ししたのではないでしょうか。
 それは審議のやり方にもあらわれました。
 衆院での審議時間は他の重要法案のおよそ半分でした。参院での審議機関はわずか1ヵ月たらずであります。重要法案では開くのが当然の中央公聴会も開かれませんでした。
 自民、公明が中央公聴会の代わりとして実施したのが安倍首相への質疑でした。議員立法ですから、首相が答弁する筋合いはありません。にもかかわらず、テレビを通じて安倍首相にとうとうと「改憲への決意」をしゃべらせて幕引きにする――国民の声は聞かずに、首相の声を聞く、ここに主権者をおきざりにして改憲をすすめようという自民党、公明党と、それに手を貸した民主党の本質が明りょうに示されています。 

〝靖国派〟が改憲策動の中心に――広がる世論の警戒
 たたかいはこれからです。
 改憲派は、手続法を通して勢いづいているように一見みえますが、彼らの暴走は逆に国民の怒りと警戒を呼び覚まし、新たなたたかいの条件を広げつつあります。ここに確信を持とうではありませんか。読売新聞(4月6日付)の世論調査では、改憲派が3年連続で減少し、10年ぶりに50%を割りました。9条改定反対・不要と答えた人は56%に達しています。共同通信社の調査でも、改憲派が減りました。9条改定不要が44・5%、改定が必要の26%を大幅に上回りました。朝日新聞の調査(5月2日付)でも「9条を変えないほうがよい」が49%と圧倒的です。
 しかも、改憲策動の中心に、あの侵略戦争を正しい戦争だったと公言する〝靖国派〟が躍り出てきたことで、国民の中に、そして、憲法を変えてもいいという人の中でも安倍内閣の下での改憲だけはゴメンだという声が急速に広がりつつあります。それは彼らの会見の目的が、イラク戦争のような先制攻撃の侵略戦争にアメリカと肩を並べて参加できるようにすること、このことが安倍首相自身の言明により明白になってきたからであります。
 安倍内閣のほとんどは、首相を筆頭に〝靖国派〟の中心である「日本会議」議運(日本会議国会議員懇談会)のメンバーで占められています。
 その勢力が、「戦後レジーム(体制)からの脱却」、戦前・戦中への回帰を合言葉に憲法改悪に乗り出そうとしている、これは改憲勢力にとっても大きな矛盾となりつつあります。
 たとえば自民党の憲法関係の幹部は、〝靖国派〟の考えを全面的に押し出したやり方では、「幅広い合意を得るのは極めて難しくなる」と述べました。9条改憲を執拗に求めてきたアメリカからも、たとえば保守派の論客であるフランシス・フクヤマ氏は「ニホンが憲法9条の改正に踏み切れば、新しいナショナリズムが台頭している今の日本の状況から考えると、日本は実質的にアジア全体から孤立することになるだろう」(『週刊東洋経済』)と警告しました。
 みなさん、こうした世論の変化を作り出したのは、今日お集まりのみなさんや、「九条の会」をはじめとする憲法守れの草の根の国民的とりくみであることは間違いありません。読売新聞で改憲派が減ってきたのが「九条の会」発足と同じ年からであるのはたいへん象徴的です。いま、「九条の会」は全国で草の根の組織が6000を超え、さらに広がっています。憲法改悪反対の共同センターも地域ごとに結成されています。憲法守れの住民署名も全国各地でとりくまれ、つい先ごろも山口県三川町で有権者の過半数の署名を達成しました。これで全国で有権者の過半数に達した自治体は4つになりました。
 私は、あらためて呼びかけたい。今日、この時を憲法改悪反対の一点でゆるぎない多数派をつくるとりくみの新たな出発点とし、総決起しようではありませんか。
 
改憲勢力に私たちの1票で厳しい審判を
 最後に、先の大戦で310万人の日本国民と2000万人のアジアの人々の尊い命が奪われました。憲法9条には、そういう人々、そして家族のみなさんの「2度と再びあんな戦争はしてほしくない」という、あついあつい思いが凝縮されています。絶対に変えさせてはならないのではないでしょうか。
 安倍首相は、憲法改定を参議院選挙の争点にすると言いました。堂々と受けて立とうではありませんか。そして、自民・公明・民主などの改憲勢力に、主権者である私たちの1票1票で厳しい審判を下そうではありませんか。
 私たち日本共産党はその先頭に立って、みなさんとご一緒に全力で奮闘することをお誓いして連帯のあいさつと、決意の表明といたします。
 
(「しんぶん赤旗」5月17日付「市田書記局長のあいさつ(大要)」より)


【特別発言】田中 隆 弁護士(自由法曹団 幹事長)
 自由法曹団の幹事長をしています。弁護士の田中です。
 憲法に関わる重大な法案を、まともな審議もせず、問題山積のまま、強行した暴挙に自由法曹団として、強くみなさんとともに抗議したいと思います。
 真にひどい法律です。ただこの本質と向きあって運動や国民的批判でこのからくり法案を圧倒していったことも、みなさんとともに確認したいと思います。
 第1点。この法案のねらいの一つは自・公・民3党の共同修正を実現し、改憲案発議の実験台にすることにありました。与党案と民主党案の発議者は最後までこんなことを考えていました。彼らが描いた「エレガントな着地」を許さなかったのは、私たちの運動です。もっとも悔しがっているのは彼らでしょう。
 第2。少数意見で憲法が変わるという問題。世論調査では79%が最低投票率を要求し、付帯決議にも入りました。このことは国民自らが、憲法というものは主権者・国民の圧倒的多数の意思でしか変えられないということを確認したことを意味します。
 第3。金で憲法が変えられる有料意見広告の問題。自由法曹団が言い出した時は独り主張でした。日を追うごとに世論が強まって、最終的には社会的な声にもなりました。法文には入りませんでしたが、これはメディアと財界への強烈な縛りとして機能するし、させなければならないと思います。
 
 最終盤に自由法曹団が最も重視したのは、500万人に影響する公務員、教育者の政治活動禁止と地位利用に関する問題でした。
 審議録をずいぶん検討しましたし、意見も言いました。「通ってしまって何もできない」と思われている方がおられるかもしれませんので、私から少し詳しく説明します。
 公務員法の政治活動の禁止が、国民投票運動や憲法運動に適用されるかどうかの問題。国民投票への賛否の勧誘運動は、国家公務員法と人事院規則で禁止される政治的行為にあたらない。列挙されている政治的目的に国民投票はありませんし、目的の中にある政治の方向に影響を与えるなどというのは、民主主義の根幹を否定するものをいいますから、国民投票や憲法についての意見の表明、勧誘はこれにあたりません。これは自由法曹団が言っているのではなくって、質問で自民党・与党の答弁者が国会ではっきり言った答弁です。
 したがって、国家公務員は国民投票運動を自由にできます。選挙運動をかねたり、政党の機関紙を配る形でやったりすると規制を受ける可能性もありますが、九条の会でやる、労働組合の機関紙を配布する、これは完全に自由です。
 地方公務員はどうか。地方公務員法で「公の選挙又は投票」の勧誘が禁止とあります。どうやらこの「投票」に国民投票も含まれます。地公法第36条の「投票」から国民投票を除外するように法律を変える。これは日本共産党の仁比聡平参議院議員が明確に確認させた答弁です。地方公務員も自由です。
 何もこの自由は、改憲発議が行われて国民投票運動期間になったら自由になると言っているのではありません。この国会で確認されたことは「9条を守れ」と訴えることが国家公務員法や地方公務員法で禁止されている政治行為にあたらないということであり、いまも自由だということです。この橋頭堡を活かして、公務員のみなさん、大いに憲法守る運動をやろうじゃないですか。
 
 3年間の法整備を厳重に監視するとともに、その間、権利や自由を空洞化させないための憲法運動を旺盛に展開することが課題なのです。
 
 もう一つ。公務員と教育者の地位利用の規制では、最初の与党案は刑罰で禁止するものでしたが、さすがに刑罰禁止は無くなりました。それでも野放図に運用されると懲戒処分の威嚇を受けかねません。この点でも相当のところまで絞り込みました。
 まず地位利用の考え方を答弁から紹介します。仁比参議院議員が「教育者が単にその教育者としての社会的信頼を利用した場合でも問題の余地はない」という福岡高裁の公選法についての判例を引用して追及したところ、答弁者は「その考え方は国民投票運動でも変わらない」と答えました。だったら規制されるのは、「直接職務と関連がある場合か、単位をほのめかすなどの職権乱用にあたる場合だけではないか」、答弁は「それが禁止されている地位利用だ」と答えました。

 1問1答もあったので一二紹介します。
Q:「授業中に改憲についての意見表明」
A:「意見を表明するだけで、勧誘しなければ国民投票運動にあたらない」
Q:「街頭宣伝で弁士に立って教師を名乗って9条を守る演説をしたらどうか」

 提案者の議員は「かまわない」と言って、悔しかったのか、こう付け加えました。「ただし、児童・生徒、子どもに演説を聞きに来るように求めるチラシをまいてやると地位利用にあたることもある」――こんなやり方はあまりお勧めできません。ここまでやらなければ教育者、公務員の地位利用にならないということを、今度の国会で確認をした。
 そして、このことはいま地位利用規制がないのだから、いまでもできるということです。たいへん厳しい国会です。改憲派が圧倒的多数を占める国会論戦の中で、日本共産党の議員のみなさんはここまでたたかいとってくれた。それを活かしてたたかっていくことは私たちの使命でしょう。
 大いに大衆運動を発展させ、憲法を守る声を大きくし、そしてあの〝愚かな政権与党〟に主権者国民の力を見せつけようではありませんか。自由法曹団もともにたったかう決意を表明して発言を終わります。

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