『クレスコ』

現場から教育を問う教育誌

クレスコ

〈2025年1月号 12月20日発行〉

【特集】障害のある人のいのちと尊厳―優勢思想をのりこえる

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教科書検定意見撤回を 沖縄県民大会に11万6000人!【高校生の発言】

【高校生の発言】 津嘉山 拡大、照屋 奈津美(読谷高校3年生) 


 
 「沖縄戦での『集団自決』に日本軍の強制があった」という記述は、沖縄戦の実態について誤解されるおそれがある表現である――ある日の朝、私の目に飛び込んできた新聞記事。私は、「誤解」という検定意見書の言葉に、目を奪われました。

 この事実を無くそうとしている人たちは、私たちのおじい、おばあたちが嘘をついていると言いたいのでしょうか。それとも思い違いだったと言いたいのでしょうか。私たちは戦争を知りません。ですが、一緒に住むおじい、おばあたちから、戦争の話を聞いたり、戦跡を巡ったりして沖縄戦について学んできました。おじい、おばあたちは、重い口を開き、苦しい過去を教えてくれました――死体の山を越え、誰が敵で誰が味方か分からなくなる怖さ。大事な人を目の前で失う悲しさ。そして、悲惨な「集団自決」があったことを…。
 なぜ沖縄戦で自ら命を絶ったり、肉親同士がいのちを奪い合うという残酷なことが起こったのでしょうか。住民は事前に、「敵に捕まるくらいなら死を選べ、米軍の捕虜になれば、男は戦車でひき殺され、女は乱暴され、殺される」という教育や指示を受けていたといいます。
 さらに、手榴弾が配布されました。極限状態に置かれた住民たちはどう感じたでしょうか。手榴弾を配った日本軍は明らかに「自決」を強制していると思います。私たちが住んでいる読谷村では、「集団自決」が起こった「チビチリガマ」があります。ガマの中は、窒息死をするために火をつけた布団の煙が充満し、死を求める住民が毒の入った注射器の前に列をなしました。母が、我が子に手をかけたり、互いを刃物で刺し合い、80人以上もの尊い命が奪われました。その中には、年寄りや、まだ5歳にもならない子どもまでが含まれていたのです。
 
 「集団自決」や教科書検定のことは、私たち高校生の話題にものぼります――「教科書から集団自決の真相のことが消されるなんて考えられない」「たくさんの犠牲者が実際に出ているのに、どうしてそんなことをするのだろう」――私たちは「『集団自決』に軍の関与があった」ということは、明らかな事実だと考えています。なぜ、戦後60年以上経った今になって、記述内容を変える必要があるのでしょうか。実際に、ガマの中にいた人たちや、肉親を失った人たちの証言を否定できるのでしょうか。
 私は将来、高校で日本史を教える教師になりたいと思い勉強しています。このまま検定意見が通れば、私が歴史を教える立場になった時、教科書の記述どおり、事実ではないことを教えなければなりません。分厚い教科書の中のたった一文、たった一言かもしれません。しかし、その中身は失われた多くの尊いいのちがあるのです。「二度と戦争を繰り返してはならない」という沖縄県民の強い思いがあるのです。
 教科書から集団自決の本当の記述がなくなれば、次は日本軍による住民虐殺の記述まで消されてしまう心配があります。
 
 嘘を真実と言わないでください。私たちは真実を学びたい。そして、次の世代の子どもたちに真実を伝えたいのです。
 教科書から「軍の関与」を消さないでください。あの醜い戦争を美化しないでください。たとえ醜くても真実を知りたい、学びたい、そして伝えたい。

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