『クレスコ』

現場から教育を問う教育誌

クレスコ

〈2024年11月号 10月20日発行〉

【特集】ともに歩もう! ジェンダー平等と教育の世界へ

  • 全教共済
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文科省包囲・要求行動で義務特手当削減中止を迫る! 「義務特手当て削減中止を求める要請」署名4万2675筆分を文科省に提出



 全教と教組共闘は3月5日、人事院・厚労省前での要求行動(「08春闘勝利3・5中央行動」)に先立つ11時、義務特手当削減中止を求めて文科省包囲・要求行動を実施。全教と教組共闘の参加者約200人が「教職員の賃金の差別化と引き下げは、断じて認められない」と文科省に迫り、「義務特手当て削減中止を求める要請」署名4万2675筆分を文科省に提出しました。

「許せない賃金の差別化と引き下げ!求められているのは大幅な引き上げ改善」と米浦委員長が力込めあいさつ

 文科省前での要求行動で開会あいさつした米浦全教委員長は冒頭、文科省調査を示し、「教職員は、土日曜日も含め平均で週60時間を働き、持ちかえりの仕事を合わせると週80時間となっている。まさに過労死寸前の長時間過密労働に苦しめられている」と指摘。その上で、「教職員の長期にわたる病気休職者も増加の一途をたどり、すでに約8000人となっている。深刻なのは、精神疾患による休職者の割合が増え続け、ついに6割を超え、5000人近くに及んでいる」と語気を強めました。全国の教職員は、そのような状況のもとでも「子どもたちにゆきとどいた教育を保障すべくがんばっている」と強調。文科省は「この事実をしっかりとかつ重く受け止め、まず第1に国の責任で財政措置を講じて30人学級を実施するとともに、教職員の大幅な定数増をはかること、第2に賃金を肇教職員の労働条件を改善するべきだ」と文科省に強く求めました。
 さらに、「教職員賃金の差別化と引き下げなどはとんでもないことであり、求められているのは、大幅な引き上げ改善だ」と述べるとともに、義務特手当て削減中止を強く文科省に求め、あいさつを締めくくりました。
 

「賃下げを一方的に行うことは許されない。08春闘勝利向けとりくみすすめよう」と東森書記長

 続いて、東森全教書記長が情勢報告。冒頭、イージス艦の事故や沖縄の米兵犯罪など、憲法に反して国民の命を軽んずる事件に「国民の怒りが高まっている」と指摘。さらに、「1月の臨時国会では、参議院で否決された新テロ特措法案が衆議院で再可決されるとの暴挙が行われたが、いま開かれている通常国会では、参議院において野党が多数を占める政治的条件の下で、憲法と国民生活に反した新たな立法を阻む可能性がひらけている。さらに、この間与党が数の力を頼んで強行成立させた法律の中止や手直しを求めるたたかいが前進している」とし、その理由として、道路特定財源の一般財源化・暫定税率廃止の課題や、後期高齢者医療制度の廃止を求める法案が4野党で出されたこと、「日雇い派遣」など非人間的な働かせ方が告発される中で、「労働者派遣法」の抜本改正など「働くルール」確立を求めるたたかいが前進していることを示しました。
 
 教育をめぐっては、「改悪教育基本法の具体化をはかる学習指導要領改訂案の発表や教員免許更新制の具体化のための作業、『主幹教諭』など『新しい職』の導入、さらに、『指導不適切教員』施策のガイドラインを発表するなど教育改悪3法の具体化がすすめられている」と指摘。しかし、「これらの施策の矛盾と破綻を示す事例も明らかになっている」と述べ、2月28日に京都地方裁判所が、条件附採用期間終了時に京都市教委が「指導不適切だ」として高橋さんに行った分限免職処分を取り消す判決を言い渡したことを示しました。
 また、全教が「指導力不足教員」施策や教職員評価制度は、2つの点(①制度の客観性や透明性の点 ②教職員組合との協議を尽くしていない点)で「教員の地位に関する勧告」に反しているとして、02年にILO・ユネスコの共同専門化委員会に申し立てを行っていたことについて、新たな展開が生じてきていることを紹介。「申し立て後、文科省の施策の変更を求める勧告が出されていたが、なお『改まっていない』として、来月下旬、調査団が日本に来ることが明らかになった」ことを示し、「このように国内の司法からも、国際機関からも問題点を指摘される事態となっている」と文科省の姿勢を糾弾しました。
 
 教職員の長時間過密労働についてふれる中で、「文科省自身の調査によって明らかになったにもかかわらず、超過勤務を規制する具体策を文科省は打ち出すことができない。しかも、各教育行政当局は、超過勤務なしには終わらない仕事を押しつけるなど、『時間外勤務は教職員の自主性にもとづくもの』との立場を変えていない」と批判。
 さらに東森書記長は、「08年度予算の概算要求で、教職調整額の手当化、他の手当からの付け替えによる『主幹教諭』などを優遇する差別化の方向を打ち出し、今国会に法案を出そうとしたが矛盾が大きくできなかった。それにもかかわらず、義務教育教員等特別手当の削減だけを来年度予算に盛り込んで、1人年間5万円の賃下げを一方的に行うことは許されない」と強調。「私たちは、子どもたちのすこやかな成長、発達と、教職員の命と権利を守る立場に立って、08年春闘をはじめとするたたかいをすすめよう」と呼びかけました。

 
「私たちのギリギリの生活のどこを削れと言うのか!」――義務特手当て削減に強く抗議 決意表明から

 都障教組の池谷副委員長は、東京都が行った都立七生養護学校への教育介入事件で、金崎満校長(当時)への1ヵ月の停職と教諭への降任処分を行った行政処分を無効とする勝利判決が2月25日に東京地裁であったことを報告。「控訴するな!判決を真摯に受け止め、教育現場への無法な介入はただちにやめるべきだ!」との声を東京都に対し、全国から寄せることと合わせて、七生養護学校の事件で父母と教職員などがたたかっている「こころとからだの学習」裁判(6月に判決)への支援を訴えました。
また東京の障害児学校の現状を、「教育現場は障害の重い子どもたちがたくさん入学している。東京では、この5年間で1000人を超える子どもたちが入学している」と述べ、「教育条件を整える責任が教育行政にはある。しかし、都教委は教室や教職員の不足を解消するのではなく、格差と競争を障害児学校にも押しつけ、教職員の長時間過密労働も放置したままだ」と批判。「都教委と文科省は、管理統制ではなく教職員を増やしたり、学校を建てたり、すべての子どもたちがゆたかな教育を受けられる、どんな重い障害を持っていても、のびのびと生きていける、こんな学校をつくるために責任を持ってとりくむべきだ」と訴えました。
 
 全釧路教組(全道教組)の古川書記長は、「北海道の教職員は怒り、困っている」と述べ、06、07年に道教委が一方的に賃金を10%カットしたことから、教職員にとっても生活設計がくるい、悲鳴があがっている実態を報告。「道財政の悪化の原因は、小泉「構造改革」にはじまった地方交付税削減だ。国の政策のせいで北海道の経済はめちゃくちゃになっている。10%の賃金カットをさらに4年続けたいとの提案は、交渉で7・5%に押しとどめたが、将来への教職員の不安は広がっている」と述べました。義務特手当の削減について、「文科省は簡単に言うが、私たちのギリギリの生活のどこを削減したらいいのか!このままでは、北海道で希望を持って教職につく人がいなくなってしまう」と批判し、義務特手当削減の中止を強く求めました。
 
 滋賀高教組の藤方執行委員は、「主幹制度」の導入をめぐるたたかいについて、県当局が昨年の交渉を反故にし、「導入したい」と2月に言ってきたことから総勢200人の参加で交渉を数度実施したことを報告。「400億円も削減する中で、なぜ『新しい職』を入れるのか!子どもたちに直接かかわる教職員を増やして欲しい、との声が多く上がっている」「義務特手当ての削減が『新しい職』につながると考えると許せない」と述べ、県議会にたたかいの場が移る「新しい職」を世論で包囲し、否決させるたたかいへの決意を表明しました。

 
「義務特手当て削減中止を求める要請」署名4万2675筆分を文科省に提出!

 全教は、文科省前での要求行動後、米浦委員長はじめ北村書記次長、蟹沢生権局長ら全教の代表は、文科省に対して「義務特手当て削減中止を求める要請」署名4万2675筆分(追加分含む)を提出しました。
 文科省の担当官に、行動参加者を代表して、東京、長野高、愛知高、大阪、長崎高、日高教の参加者が、「東京では『主幹』制度は破綻している。『主幹』制度導入のための義務特手当削減はするべきでない」「長時間過密労働の解消が求められている。文部省がやらなければいけないことは義務特手当削減ではない」「大阪の賃金差別は、ひどい場合で20万円の差がある。一番の被害者は子どもたちだ。義務特手当削減はやめてほしい」「すべての教職員が身を削ってがんばって入る。それに対して水をあびせるようなことを文科省は絶対してはならない」などと発言し、義務特手当の削減を中止するよう強く求めました。
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