全教は、全労連・国民春闘共闘の春闘集中回答指定日にあたる11日、文科省と09春闘要求書にもとづく交渉を行いました。
写真:子どもたち守る緊急の対応を迫る米浦委員長、東森書記長ら全教代表
とりわけ交渉で全教は、昨秋以来の経済悪化から、子どもたちの就・修学は深刻な状況にあり、卒業、入学を目前に控えたいま、「今日中に、これまで滞納している分を払わないと除籍される」「17万円の給料だったが5万円に減った。母子家庭でなんとかやりくりしてきたが、どうしようもない」など、先日開設した「入学金・授業料・教育費 緊急ホットライン」に寄せられた200件を超える切実な相談内容も紹介しながら、財政出動を含めた緊急の対応を強く求めました。
また、4月から施行される教員免許更新制については、地元を含む最寄の会場で受講できなくなる可能性が高いことや、講座を申し込んでも受けられない可能性があることを指摘。多忙な中、多くの時間を費やして講座を探し、手続きをすることは、さらに学校現場の多忙に拍車をかけることになると強調し、「子どもたちの教育に肯定的な影響を与えない」と凍結を強く求めました。
教職員の賃金改善と時間外労働時間の解消などにかかわっては、「超勤縮減の基本は正規教職員の抜本的な定数改善による増員」であり、教職員増を実現するうえで「現行の給与水準を維持しつつ、残業量を明確にして時間外勤務手当制度を導入していくことは大きな意義がある」とし、検討を求めました。変形労働時間制については、「現状のように勤務時間管理がきちんとすすんでいない中で、1年間の変形労働時間制が持ち込まれると、超勤実態を水面下に隠した底抜けの状態になる」とし、「学校現場ではあり得ない制度だ」と撤回するよう強く求めました。
全教からは、米浦委員長、新堰・本田・山口副委員長、東森書記長、北村・吉田書記次長、蟹沢生権局長、中村教財部長が参加。文科省からは、関 財務課課長、関崎 児童生徒支援課 課長補佐、山田 教職員課 課長補佐、前谷 健康教育課 課長補佐、藤岡 財務課 課長補佐が対応しました。
以下は、全教の重点要求項目にかかわる文科省の主な回答と全教とのやりとり。
■ 子どもたちの就・修学と、卒業生の就職を保障するために――緊急の援助措置を求める!
全教は、「子どもたちの就・修学と、卒業生の就職を保障するために」として、「都道府県教委に対し、授業料の減免措置を拡大するよう指導すること。また授業料の滞納については『退学』『出席停止』など行政的処分ではなく、教育的見地から対応するよう指導すること。経済的に困難な家庭の子どもの高校等入学金への緊急補助制度など、こうした家庭を支援する措置を拡充すること」、及び「授業料・給食費・学校納付金などの滞納家庭に対する緊急の公的な援助措置を講じること。また、未納家庭への画一的な対応は行わないこと」を求めました。
このことに対して、文科省(関崎 児童生徒支援課 課長補佐)は、「公立高校の授業料減免制度は、管理者である所属県が条例や規則等に定めるもの」であり、内容や基準、授業料や納付手続き、滞納になった場合の措置等についても、設置者である都道府県が定めているものであると述べ、「生徒や保護者に配慮した個別の対応がなされるように期待しているところだ」との消極的な姿勢を示しました。また高校の奨学金についても、平成17年度に地方移管となり、「県の事情を踏まえ、それぞれの判断で適切に実施されている」とし、文科省としての緊急対応については言及しませんでした。
また、給食費に対する援助措置について、文科省(前谷 学校健康教育課 課長補佐)は、「学校給食費については、生活困窮者、要保護者へ市町村が補助するものに対して2分の1を国が補助している」とし、準要保護の家庭への対応については、各設置者できちんと対応するよう会議等で周知しているとの回答にとどまりました。
これらの文科省の回答に対し、山口副委員長は、「入学金・授業料・教育費 緊急ホットライン」に「今日、これまで滞納している分を払わないと除籍される」「17万円の給料だったが5万円に減った。母子家庭でなんとかやりくりしてきたが、どうしようもない」という切実な相談が寄せられていることも示し、「緊急の財政出動が必要だと思うがどうか」と文科省に強く迫りました。
文科省(関崎 児童生徒支援課 課長補佐)は、奨学金制度の周知と活用を訴えていると述べ、「緊急の財政出動については、2次補正予算では私学の部分で少しはできている」としました。さらに都道府県に対して、奨学金を前倒しで支給したり、納付期限の猶予などの対応や、緊急に相談窓口を設けて対応することなどについて、必要な通知を出すなど、予算措置なしで今すぐにでもできることへの検討を求めたのに対して、文科省は検討する意志を示しました。
中村教財部長は、都道府県での窓口設置の検討を重ねて求めるとともに、就学援助の問題についてもふれ、就学援助の復活と支給内容も含めた全面的な就学援助の実態についての調査を行うよう求めました。
■ 学校現場にふさわしい時間外勤務手当制度を!超過勤務を解消に必要な教職員定数増を!
全教は、「教職員の賃金改善について(教員の給与制度等の改変にあたって)」として、「教職員の長時間過密労働の縮減をすすめるとともに、給特法を改正し、教職調整額の現行4%水準を維持しつつ、労働基準法37条にもとづく学校現場にふさわしい時間外勤務手当制度をつくること」、及び「教職員の労働時間、休日、休暇の改善について」として、「文部科学省の責任で行った教職員の勤務実態調査の結果にもとづき、超過勤務を解消するため、必要な教職員定数増を行うこと。また、『1年間の変形労働時間制』を、制度として導入しないこと」を求めました。
文科省(関 財務課 課長)は、「子どもたちの学力向上と規範意識を高めていくためには、教員一人ひとりが子どもに向き合う環境をつくっていくことが重要であると考えている」と述べ、21年度の予算案において、1000人の教職員定数の改善を行うとともに、「退職教員等外部人材活用事業」を倍増の1万4000人拡充し、地域の住民がボランティアとして学校の教育活動を支援する「学校支援地域本部事業」の拡充を盛り込んでいることを示しましたが、教職員定数増については言及することを避けました。
また、「教員の勤務負担の軽減という観点から」として、「業務の精選、適正な校務分掌といったことを、組織的な学校運営がたいへん重要だ」と述べ、「各教育委員会においても具体的な目標を立てて、学校現場の負担軽減をすすめるように指導している」など、こういった様々なことを行いながら、「超過勤務の縮減を行うことが重要だ」との姿勢を示しました。
教職調整額の見直しについては、現在、中央教育審議会の初等中等教育分科会に、学校教職員のあり方、及び教職調整額の見直し等にかかわる作業部会を設けて議論がされていることから、単に給与の問題にとどまらず、学校の組織運営などにも大きな影響を与える教職調整額の見直しについては、「その検討等を踏まえて適切にその見直し、あり方について、検討していく」との回答を行いました。
さらに、この作業部会において1年単位の変形労働時間制についても議論しているとし、「そこでの検討を踏まえて、適切に検討していく」との考えを示しました。
蟹沢生権局長は、教職員の賃金改善と時間外労働時間の解消などにかかわって、「超勤縮減の基本は正規教職員の抜本的な定数改善による増員」であり、教職員増を実現するうえで「現行の給与水準を維持しつつ、残業量を明確にして時間外勤務手当制度を導入していくことは大きな意義がある」とし、検討を求めました。変形労働時間制については、「現状のように勤務時間管理がきちんとすすんでいない中で、1年間の変形労働時間制が持ち込まれると、超勤実態を水面下に隠した底抜けの状態になる」とし、「学校現場ではあり得ない制度だ」と撤回するよう求めました。
■ 教員免許更新制の09年度からの実施凍結を!
全教は、「憲法に立脚した民主教育を確立するために」として、「教員免許更新制の09年度からの実施を凍結すること」を求めました。
免許更新制について、文科省(山田 教職員課 課長補佐)は、「更新制において重要な更新講習の質を高めていくことにより、この制度が意義あるものとなるようにしていくとともに、その円滑な導入に向けてとりくんでまいりたい」と制度の施行に向けて、粛々と準備をすすめていく意向を表明しました。
山口副委員長は、「文科省は2度に渡って開設講座を発表しているが、総枠で言えば対象教員には満ちていない。〝大丈夫だ〟と文科省は言うが、例えば兵庫県では予定講座がすべて開かれたとしても、約1000人分足らない」とし、それらを含めて、「この制度には根本的欠陥がある」と強調。さらに地元を含む最寄の会場で受講できなくなる可能性が高いこと、講座を申し込んでも受けられない可能性があることを指摘。多忙な中、多くの時間を費やして講座を探し、手続きをすることは、さらに学校現場の多忙に拍車をかけることになり、「これは子どもの教育に対して、決して肯定的影響を与えない」と断じ、「教員免許更新制の実施凍結」へ向けての文科省の英断を強く求めました。