『クレスコ』

現場から教育を問う教育誌

クレスコ

〈2025年1月号 12月20日発行〉

【特集】障害のある人のいのちと尊厳―優勢思想をのりこえる

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子ども全国センターが全国一斉学力テストの中止求める賛同アピール945人分を文科省に提出!

 子どもの権利・教育・文化 全国センター(略称:子ども全国センター)は、全国一斉に全員が受ける学力テストは、子どもたちをいっそう競わせ、子どもと学校の格差づくりという本質を持つものであることから、4月21日の第3回目の実施を間近に控えた15日、945人にのぼる賛同を得た「全国一斉学力テスト中止を求めるアピール」を提出し、あらためて文科省に対して全国一斉学力テストの中止を求めました。



 この要請には、子ども全国センター代表委員の高田公子(新日本婦人の会会長)、堀尾輝久(民主教育研究所代表運営委員)、三上満(教育家)、山口隆(全教中央執行委員長)、同センター事務局長の本田久美子(全教副委員長)、および柴田真佐子(全労連副議長)、今谷賢二(全教教文局長)らが参加。文科省は、大臣官房総務課らが対応しました。
 
■ 子どもたちを競争に駆り立てる全国一斉学力テスト――「このまま実施を続ければ教育自体をゆがめる」 
 
 子ども全国センターは、「昨年、結果公表をめぐって多くの問題点が出ている」として、要請で、「文科省が『序列化や過度な競争につながらないように十分配慮』と言っているにもかかわらず、大阪や秋田では知事が圧力をかけて市町村ごとの公表を行うよう迫り、それに対して市町村教育委員会から、『市町村ごとの結果公表が行われるならば、テスト当日でも不参加』『全員で受ける必要があるのか』などの意見も出ている」ことを示し、「このまま続ければ、『テスト前対策』が行われたり、点数を上げるための対策を迫られたりと、教育自体をゆがめ、ますます競争を激しくする」と指摘。
 
 「学力の実態を把握するとしても、毎年実施する必要はなく、しかも抽出で十分だ。全国一斉学力テストに57億円をかけるなら、今、経済的理由で就学困難な子どもたちへの援助制度の充実や、30人学級などの条件整備に使うべきだ」とし、「全国一斉学力テストの中止」「30人学級の実施などの条件整備」「経済的理由で就学困難な子どもの学習権を保障するための制度の充実」などを迫りました。
 
■ 〝教育指導の改善に役立てるから悉皆が必要〟では理屈通らない文科省の回答 
 
 文科省の担当者は、全国一斉学力テストについて、「児童生徒の学力の状況について、全国的な傾向を把握するためだけであれば、必ずしも全員を対象とした調査を行う必要はない」との考えを示したものの、「ただ調査の目的は、各学校において、子どもの学習状況の改善に役立てること、各教委や学校が全国的な状況を見ながら、指導や改善などにとりくんでいくことや教育活動の成果、課題を把握、検証し、それをもとに具体的に改善につなげることだ。そのような目的から、ねらいを達成するために全児童を対象とした悉皆調査が必要と考えており、当面は継続して実施していく」と悉皆について固執し、全国一斉学力テストを実施する姿勢を崩しませんでした。
 
 この回答に対し、三上氏は「〝教育指導の改善に役立てるのだから悉皆が必要だ〟という理屈は通らない。それは、これまでの2回の実施で明らかだ。例えば、4月にテストが行われて、結果が返ってくるのは10月。子どもというのは成長も早いし、日々生きている。そんなごまかしは通用しないし、悉皆であることの理由にならない。過去2回で〝悉皆はダメだから抽出でいい〟ということが大きな世論になっている」と強調。さらに、「しかも結果公表という形が、〝一定の歯止めをかける〟との文科省の意図を超えているのが現状ではないか。大阪や秋田がそうだ」と指摘。「向かっていく先は、文科省の言うように〝指導改善に役立てる〟ということではなく、〝どこの地域は学力が低い〟というようなこと。理屈を取り繕うのはやめて国民の声を聞くべきだ」と強く迫りました。
 
■ 「少なくとも都道府県段階の結果を公表すべきでない」――文科省公表による競争の実態を指摘し、対応を求める 
 
 また、山口全教委員長は「文科省は都道府県ごとの結果公表を行っている。それにもかかわらず〝市町村と学校はダメ〟というのはどういう根拠なのか。それをダメというのなら文科省も都道府県ごとの結果公表をやるべきでない。自らが公表をしておきながら、〝市町村や学校の公表は競争の激化につながる〟というのは理屈にならない。高知県などでは〝あと何年かかけて順位をどこまであげる〟というようなことを言い出している。文科省が公表しているからそうした競争の状況がすでに県段階でも起きている」とし、全国一斉学力テストをたとえ実施したとしても、「少なくとも都道府県段階の結果を公表すべきでない」と迫りました。
 
 また「悉皆」について、「学校の教育活動の改善などというものは上から押しつけるものではない。各学校で日常的に子どもたちの状況や父母の願いを聞きながらすすめられているものだ。それを悉皆をやって改善せよというのは、きわめて傲慢な姿勢だ」と厳しく批判しました。
 
■ 子どもたちが豊かに成長する上で――「点数では図れないものがたくさんある!」 
 
 また、回答で「継続して行う」との発言について三上氏が問いただしたのに対し、文科省の担当者は「21年度予算において、22年度調査の準備も予算に計上している。継続的というと何年かという話だが、いつまでも未来永劫やるとは言い切れない。実施状況などについて、教育委員会や有識者の意見を聞きながら必要に応じて、実施方法の改善をはかるということはあり得る」と述べるとともに、5年間の教育振興基本計画において継続的に実施するとしていることを示しました。
 
 子ども全国センターの本田事務局長は、「文科省は、全国一斉学力テストの子どもへの影響はどうなのか分析する必要がある。過去問とか、ドリルでの点数をあげることが日常的に追求されている実態がある。子どもたちが豊かに成長する上で、点数では図れないものがたくさんある。そうしたものを子どもたちにつけさせるための教育がどういうものか、文科省は考える必要がある。そういう意味で改めて全国一斉学力テストの中止を要請する」と締めくくりました。

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