『クレスコ』

現場から教育を問う教育誌

クレスコ

〈2024年10月号 9月20日発行〉

【特集】教職員の長時間労働と「中教審答申」を問う

  • 全教共済
ニュース

教育予算の大幅増額で教育格差をなくそう!教育全国署名がスタート!

 ゆきとどいた教育をすすめる会は、教育予算の大幅増額で教育格差をなくそう!と「第21回ゆきとどいた教育を求める全国署名スタート集会」を東京で開催し、約400人の父母、教職員がつどい、今年の全国署名のとりくみへの決意を固め合いました。



子どもたちの明るい未来を切り拓こう!

 今年度のスタート集会は、東京・大東学園高校の高校生有志による「ボーイズ ヒップ ホップ」と題したヒップ・ホップダンスで勢いよく開会。
 
 主催者あいさつした東京父母懇会長の作本幸秋さんは、子どもたちをとりまく貧困と格差の問題の現状にふれつつ、「これまで以上の力で署名を成功させることが求められている」とし、「明日から元気に署名にとりくみ、世論に訴え、前回以上の署名を集めて、子どもたちの明るい未来を切り拓こう」と訴えました。 

教育への費用を惜しみなく投入することは社会の当然の責務!

 続いて、ゆきとどいた教育の会の呼びかけ人の一人であり、奨学金の会会長の三輪定宣千葉大学名誉教授が「教育を受ける権利と無償教育の展望」と題して講演。「情勢は、特にこの1年、無償教育への地殻変動が生じている」と述べ、「無償教育を定めた国際人権規約13条の締結保留国は、160カ国中、日本とマダガスカルの2カ国のみとなり、国際条約違反、『有償教育大国』――日本の異常がいっそう際立っている。この問題の決着が早急に迫られている」と指摘。また、日本が主要国最低の教育予算(対GDP、日本3・4%、OECD5・0%、28カ国中最低)であり、「世界一の高学費が子どもたちを直撃している。教育の課題は多彩だが、とりわけ教育を受ける権利を守るための無償教育の確立は切迫した課題だ」と強調し、国際的な状況を示しながら、今後の展望を語りました。 

学費で悩んでいる人を一人でも助けたい!

 発言では、神奈川の旭丘高校の高校生5人が発言。「私学助成が削られ、学費で悩んでいる人を一人でも助けたいと活動している。神奈川でも県予算で私学助成削減が示され、緊急に県庁包囲行動に参加し、高校生としての思いを訴えた。この行動があったからこそ、削減を1・3%に抑えることができたと思う」と述べ、一方で「この私学助成拡充を求める運動を活発にしなければならないとも感じた」と代表が発言。さらに仲間の高校生たちが「学費に苦しんでいる仲間がいる。これからはじまる署名を大きく広げ、学費の問題で苦しむことのないようにしたい」「私のクラスには、学費が納まっていない生徒が8人いる。その人たちが辞めないために、県知事宛のジャンボハガキにとりくみ、みんなの思いを書き込んだ。全員で卒業することがクラスの目標だ」「国際的に見れば教育は無償が当たり前なのに、私学助成拡充のために、私たち高校生がとりくまなければいけないことを知ってもらいたい」「私立や公立の違いを越え、普通の高校生活を守りたいだけだ」「高校を卒業したい、勉強したいといった普通の高校生活を願っている。自分たち高校生がこういう運動に参加しなければと思っている」と口々に思いを語りました。
 
 岡山私学生徒連絡会の高校生からは、「親の都合(リストラ、病気、母子家庭など)で高校生活が続けられるかどうか不安を持っている子がたくさんいる。勉強したくてもできない人がいる。高校生はもっと自由なのではないでしょうか。学校は勉強するだけではない、人間関係を学んだりする場でもある。高校生だからできることがある。それを学費が払えないからと、奪われていいのでしょうか。『高校生の笑顔を奪わないでほしい』『公私格差を広げないでほしい』『高校生の声をもっと聞いてほしい』『高校生の無限の可能性を奪わないでほしい』――こうした声を届けるために多くの高校生と一丸となって活動している」と高校生私学フェスティバルや岡山駅までパレードしたとりくみを紹介しました。最後に、同じ岡山の高校生が「神奈川の方も言っていましたが『高校生は無力ではない』と思います。僕たちもみなさんとともにがんばります」と決意を語りました。
 
 「40人学級にしがみついている」全国で唯一の東京からは、小学校教員の岸田さんが発言し、「東京でも一刻も早く30人学級をと24万筆を越える署名を都議会に提出した。文教委員会で都の担当者は、『都民の声は重く受け止める』との回答をしたが、請願は否決された。この敵は都議会議員選挙でとりたい。私たちは24万筆の署名を受け止め、全国署名につなげていきたい」と決意を述べました。
 
 大阪からは、貧困と格差の影響をまともに受けている定時制高校の現場の状況が語られました。発言した小西さんの勤務校のクラスでは、「4人に1人が授業料減免を受けており(生活保護受給者は含まれない)、未納者はさらに相当数にのぼる。別のクラスでは32人のうち、母子家庭が22人、父子家庭が2人。大阪の高校中退率が年々上昇し、この春の入試で定時制が軒並み定員オーバーし、167人もの不合格者を出した。橋下知事による私学助成削減で、半数の私学が授業料を値上げしており、定時制の2次募集に来た子たちはおそらく私学を受けていない。府教委は急きょ、補欠募集をやれという、すでに年度末であり予算も人事も決まっている中での、あまりにも場当たり的な対応に怒りが沸騰した。定時制は満杯でスタートした。異常な事態だ。『貧困とは選択肢がないこと』――府教委は多様化とか学区拡大によって、一部の恵まれた子たちにさまざまな選択肢を用意した。しかし、弱い立場の子たちほど選択肢は狭められた。これまで高校をどんどん潰してきた府教委は、この春の事態を検証し自省するべきだ。全日制で受け入れる学校を広げない限り来年も同じことになる。夜間定時制が生徒たちにとって唯一の居場所であり、セイフティーネットであるような貧しい社会は放置できない。社会的排除を許さず、貧困と格差の連鎖を断ち切るためには仲間とともに学んでいっしょに卒業できるように学ぶ権利をきちんと保障することだ。貧しさの元は政治の貧しさだ。すべての子どもたちに高校教育を保障できるように大人の責任としてともにがんばりましょう」と訴えました。
 
 また、青森、新潟からは今年度の教育全国署名運動への決意が語られました。 

12月11日の署名集約集会へ向け全国各地で広げよう!

 基調報告で永島民男全国私教連書記長は、「私たちのとりくみが世論をつくり、国政を動かしている」として、「今年度予算でも私学助成が総額で1%カットされたが、高校以下についてはその対象から外されるとともに、交付税予算としてはじめて私立高校生授業料助成分として生徒一人当たり2000円が予算化された。国会審議でも予算委員会で高校の学費問題が3党の質問で取り上げられたことをはじめ、定時制の統廃合問題、学費滞納・退学問題が国会質問されたことで、文部科学大臣は、学ぶ意欲のある高校生が経済的理由によって修学を断念することのないように支援に努めたい、という趣旨の答弁をした」ことなどを示しました。
 
 最後に、昨年度1138万3771筆を集めた教育全国署名の成果を、「今年度さらに大きく発展させ、『教育費を増やし、お金のことを心配しないで学びたい』という子どもたちの願いを実現させるとりくみを大きくすすめよう。12月11日の署名集約集会まで5カ月間、全国各地、各学園で運動を展開させ、新しい成果をこの場に持ち寄ろう」と呼びかけました。
 
 閉会あいさつで山口隆全教委員長は、「教育全国署名は、言うまでもなく子どもたちにゆきとどいた教育条件整備を求める運動ですが、それにとどまらない大事な意味を持っている」と述べ、「一人ひとりの子どもたちを人間として大切に育てるために子どもの貧困の問題は待ったなしの課題です。私たちは子どもの貧困の問題を通して、改めて憲法の持つ値打ちを学び合い、確認し合わねばならない。そして憲法を子どもと教育に生かすとりくみを大いにすすめたい。教育全国署名は、そうした精神につらぬかれたとりくみだ」と強調し、締めくくりました。

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