『クレスコ』

現場から教育を問う教育誌

クレスコ

〈2024年12月号 11月20日発行〉

【特集】登校拒否・不登校から見える景色――安心できる居場所がほしい

  • 全教共済
ニュース

貧困と格差から子どもと教育を守れ! 教職員、労働者、父母ら700人が文科省前要求行動!

 「教育予算を増やせ」「貧困と格差から子どもを守れ」。夏空のもと、文科省前に集まった行動参加者のシュプレヒコールが響きわたりました。
 全教・教組共闘は7月23日、子どもと教育をめぐる貧困と格差が社会的な大問題になり、教育費の保護者負担の軽減が国民的な願いとなる中、文科省前で「子どもの貧困をなくせ!教育予算拡充」要求行動を実施しました。これには国民大運動実行委員会も協賛したもので、多くの公務、民間の労働組合、女性・農民などの各種団体も参加する国民的な共同の行動として実施されました。行動には全国各地の教職員、労働者、父母ら700人が文部省を包囲するかつてない規模の行動となりました。


写真:文科省に向けてシュプレヒコールする参加者

 午後からは、全労連、国民春闘共闘、国民大運動実行委員会が主催し、約3000人が集った「なくせ貧困!最賃大幅引き上げ、公務員賃金改善、国民本位の財政実現をめざす7・23総決起集会」に合流し、「最賃引き上げ、公務員賃金改善」人事院・厚労省前要求行動など、各省庁前での要求行動、銀座パレードを実施しました。


■ 〝教育費の保護者負担の軽減を文科省は決断する時!〟

 新婦人の会の高田公子会長が国民大運動実行委員会を代表してあいさつ。高田会長は、「文部科学省に設置された『教育安心社会実現懇談会』も幼児教育の無償化、高校・大学の授業料減免制度、奨学金制度の拡充を打ち出している。子どもたちの教育を守ることは政治の責任。今こそ政府・文科省は教育予算の拡充、教育費の保護者負担の軽減を決断する時」と述べました。
 
 行動ではJMIU、自交総連、全労連・全国一般、日本医労連の代表が連帯あいさつをしました。「雇用破壊のもとで労働者の教育費にかかわる要求は切実。『貧困なくせ』のとりくみを通じて、教育を国民にとりもどそう」などの共同のたたかいをすすめる決意が語られました。また青森、京都、東京の教職員組合の代表が決意を述べました。 >>【 発言の要旨は コチラ! 】
 
 行動の最後に全教・山口隆中央執行委員長があいさつ。山口委員長は「教育費の保護者負担の軽減、安心して通わせられる学校の実現、ゆきとどいた教育のための教育予算の拡充は国の責任。憲法をくらしと教育に生かす勢力を総選挙で大きくし、子どもを大切にする政治、社会を実現しよう」と呼びかけました。

発言要旨 ※以下の発言は、本HP管理者がまとめたものです。 

■ 貧困と格差から子ども守り、学ぶ権利保障する教育予算増額を要求する時だ!――北村佳久全教書記長

 誰がこんな国にしたのか!――「お金がないから学校に行けない」「お金がないから給食が食べられない」「「お金がないから修学旅行に行けない」「お金がないから医者にも行けない」
 
 「構造改革」とは何だったのか!――いすゞ自動車を解雇された労働者は裁判所で次のように訴えている。「解雇され、北海道で待っている家族への仕送りが一銭もできなくなった。私の望みは、いすゞの職場に戻ること。そして、北海道で待っている妻と子ども――家族そろって生活する、普通のくらしがしたいだけ」――北海道で待っているこの家族、子どもの願いに文科省はどう応えるのか!
 
 誰がすすめたのか!「小さな政府」「国から地方へ」「官から民へ」「大企業の解雇自由化」を!誰が壊したのか!「社会のセーフティネット」を!――等しく教育を受ける権利が保障されるために政治があり、文科省の施策はあるべきだ。
 
 いま世論は確実に、しかも大きく変わっている。「貧困と格差拡大を決して子どもに覆いかぶせてはならない」と政党も政府も教育費問題を語り始めた。この流れをさらに太く大きくして、総選挙で政治を変え、日本でもヨーロッパ並みの教育費無償化の実現をめざす――今日はその一大結節点の行動だ。
 
 来年度政府予算の編成にあたり、各省の概算要求は8月末までとなっている。いまこそ文科省は本腰を入れて、貧困と格差拡大から子どもを守り、学ぶ権利が保障される教育予算の大幅増を財務省に要求する時だ!教職員の切実な要求であり、子どもたち、父母の強い願い出もある教職員の大幅増ができる計画性を持った予算の大幅増額を思い切って財務省に要求する時だ!
 
 全教は、4月から同趣旨の署名を6万人分集約し、今月の29日に文科省に提出する。「子どもを競わす学力テスト実施の予算など、子ども、教職員、父母が望まない予算は削れ!国民が求める予算こそ計上せよ!」――この世論をさらに届ける運動を強めていこう。
 
 今日を結節点とする運動を秋の教育全国署名への運動につなげていこう。
 

■ 全国の子どもを持つ労働者を励ます教職員の決起!――全日本金属情報機器労働組合(JMIU) 三木陵一書記長

 大不況の中、自動車や電機などの大企業を中心にして、派遣切り、非正規切りの嵐が吹き荒れ、多くの派遣社員、期間工が放り出された。しかし、労働者は「団結してたたかわなければ雇用もくらしも守れない!」と多くの仲間がJMIUに加入し、たたかいに立ち上がっている。
 
 労働者の教育に対する要求も切実だ。毎年、春闘に向け行っている家計簿調査を見ると、子どもを持つほとんどの人が月何万円もの学資保険に入っている。それだけ、子どもの将来、大学への進学――教育費への不安が切実だということだ。教育費の負担は大学進学の準備だけではない。日々の授業料や給食費、通学費――父母は何より優先して支払わなければならない。
 
 今日、教員が「子どもの貧困をなくせ!」と総決起したことは、全国の子どもを持つ労働者を励ますものだ。日本の憲法26条では、国民の教育を受ける権利を保障している。「貧困なくせ!」の運動を通じて、元の教育基本法の理念と憲法を教育現場に生かす国民的な運動を、力を合わせて大きく広げていこう。
 

■ 国は将来の日本を支える子どもの教育に責任を!――全国自動車交通労働組合総連合(自交総連) 池田忠司書記次長

 タクシー運転手はたいへんな状況になっている。「構造改革」によって、02年にタクシーの規制緩和が行われると、今日までに1万7000台ものタクシーが増えた。その結果、運転手の日々の売り上げは当然減り、今では年収200万円――最低賃金を下回るたいへんひさんな状況となっている地方もある。景気悪化はそれに拍車をかけている。
 
 タクシー運転手にも家族も子どももいる。知り合いの運転手の子どもは、進学をあきらめざるを得なかった。本来ならば、子どもには平等に教育を受ける権利があるはずだ。教職員にもきちっとした職場環境、労働条件が必要だ。国は将来の日本を支える子どもの教育にもっと責任を持つべきだ。
 

■ どの子にも等しく、教育の機会を保障する責任は政府・文科省に!――全労連・全国一般労働組合(全労連・全国一般) 大木寿中央執行委員長

 私たちの組合員の中には、ダブルワークして働いても年収200万円にも満たないお母さんたちがいる。「構造改革」によってもたらされた貧困と格差が、子どもたちに襲い掛かっている。教材費や給食費、修学旅行費などが払えない生活困難な家庭が増えている。生活基準以下の家庭に支給されている修学援助金を受けている家庭が、学校に通う子ども4人に1人の割合というところもある。
 
 一人親世帯の貧困は、先進国中最低だ。その原因は、人間らしく働き生活することのできない最低賃金や、きわめて不安定な使い捨て部品にされている非正規雇用、そして、国が教育費に金を回さないことだ。そのことが日本を滅ぼしていくと思う。子どもは社会と未来を映し出す鏡だ。日本の未来を担う大切な宝物だ。人づくり、国づくりの基本は教育にある。子どもたち一人ひとりの人権を大切にし、しっかりと学力をつけ、ゆたかな人格をはぐくむため、どの子にも等しく、教育の機会を保障すること――それを守る責任は政府に、文科省にある。
 
 子どもたちの笑顔と希望を取り戻すために、希望ある社会にするためにも、「修学援助制度の抜本的な改善をはかれ!」「教育費の無償化をはかれ!」は多くの人の声だ。いよいよ総選挙。全力をあげ、子どもと若者の未来のために政治を変えたい。
 

■ 安心して教育や医療を受けられる日本をつくろう!――日本医療労働組合連合会(日本医労連) 田中千恵子中央執行委員長

 教育や医療は国民の誰もが等しく受ける権利だ。ところがお金がなくて医療が受けられない――年収300万円以下の人で、具合が悪くても「医療を受けない」と言う人が40%いる。年収800万円以上の人でも、18%の人が「お金が心配でかかれない」と言っている。高すぎる保険料が払えない世帯が460万世帯ある。そのために医療が受けられないという事態――学校で具合が悪くなり保健室に行った子どもを病院に連れて行こうとすると「僕のお父さんは保険に入っていないからやめて」といった例があちこちで生まれた。本当に許せない。こんな国は変えなければいけない。
 
 私たちは、「医師、看護師、介護労働者を増やせ!」「地域医療を守れ!」の大運動を展開し、運動によって変えてきている。医師は削減から、増やす方向に政策転換させた。「看護師23人に1人が過労死ラインにある」との衝撃的な発表から、職能団体をあげて法令順守の運動をすることになった。「介護職員の賃金が安すぎる」「介護報酬だけでなく、国庫での負担が必要だ」ということから医療や介護の報酬としては初めて国庫負担が実現した。「自分の病院をつぶすような市長は許せない」と、各地で病院つぶしに反対するリコール運動が起きている。
 
 いま子どもや教職員がたいへんなことになっている。世論が大きくなり、いま文科省の前にこんなに多くの方が集まっている。これは全教がたたかってきたからだ。アメリカも変わってきている。いま国民皆保険をつくるための法案が審議されている。93兆円かかると言われる財源は、「高所得者から応分な負担を求める」と言う――それぐらい変わっている。日本も変える絶好のチャンスだ。教育費の無償化、医療費の無償化――安心して教育や医療を受けられる日本をつくろう。
 

■ お金の心配をせずに学べる国に!――京都教職員組合・奥丹後地方教職員組合 橋本まり子書記長

 平均収入が「京都府平均の7割しかない」と言われる丹後地方は、この不況で倒産、廃業に追い込まれる企業が後を絶たず、伝統産業の「丹後ちりめん」においても、時給200円にまで落ち込んでいる。
 
 その不況のあおりを子どもたちはまともに受けている。給食費、学級費の滞納はもちろん。最近では、裁縫、絵の具セット、リコーダー、柔道着まで兄弟で貸し借りしている。
 
 進路決定においても、この春、厳しい定員枠に多くの生徒が「行きたい高校」ではなく、「行ける高校」に振り分けられた。例年の1・5倍の生徒が私学に行き、経済的な理由で私学が無理な子は、公立の昼間定時制高校に入った。20人しか入らない教室に31人の生徒が学んでいる高校、いつもなら1桁の受け入れ人数の教室に22人の生徒を受け入れた高校――教職員も生徒もたいへんだ。いつの時代も一番弱い立場の者に矛盾が集中する。
 
 小・中・高校とすべての学校で30人学級を実現し、義務教育費の国庫負担を2分の1に戻し、私学助成・修学援助を大幅に引き上げて下さい。「お金のことで学ぶ権利を奪われる」「お金が無いから進路をあきらめなければならない」――そんな世の中はおかしい。貧困の責任は子どもたちにはない。教育条件を整えてあげるのは、私たち大人の責任だ。そして国、教育行政の責任だ。
 
 お金の心配をせずに学べる国にしてください。全国の子どもたち、保護者、そして教育にかかわるもの代表として訴えたい。
 

■ 子どもの夢がかなう社会を実現させたい!――青森県高等学校・障害児学校教職員組合 谷崎嘉治執行委員長

 マスコミが「給食費を払わない親」「授業料を払わない親」といった宣伝を始めたのは、いつ頃か覚えていますか?社会保障、教育費を切り捨てる「構造改革」を本格的に実施した時期と一致している。しかし、「払わない」のではなく「払えない親」が圧倒的なのだ。これは「構造改革」がつくり出した。私たちはこのことを、声を大にして言わなければならない。
 
 青森県教委は、県立学校に4月から授業料徴収委員会を設置した。この委員会には校長を委員長として、教頭、事務長、学年主任、学級担任が入る。授業料を徴収する業務を教員にも負わせた。担任が親や子どもと面接し、授業料を払わせる――これで教育が成り立つのか!
 
 私の勤務校では担任が生徒に授業料の督促をしたところ、その生徒は学校に来なくなり、連絡がとれなくなった。結局、退学に追い込まれた。この子は、運動部で明るく活動していた子だ――こんなことがあっていいのか!
 
 青森市内の進学校でも、親がリストラされ、多額の借金を負ったために、生活費を入れることができなくなり、大学進学をあきらめた3年生がいる。その生徒は、「自分の夢が――努力しても現実味を帯びない。そんな社会や景気がますます築かれている。私は未来の学生に楽しく勉強に励んでもらい、夢がたくさんかなえることができる、そんな未来に行き着いてほしいと心から願っています」という手記を書いている。
受益者負担は原則ではなく、教育費無償が原則だ。子どもから夢を取り上げるのではなく、子どもの夢がかなう社会をなんとしても実現させたい。

■ 現状を断固として跳ね返すために奮闘する!――東京都教職員組合 児玉洋介執行委員長

 子どもたちは、いま3つの貧困と向き合っている。1つは家庭の貧困だ。学校給食が1日でただ1回のまともな食事になっている子どもも少なくない。彼らにとって給食のない夏休みは、「食べる」という健康で文化的な条件をうばわれたつらい生活となっている。
 
 2つ目は、子どもたちがいま受けている教育の貧困。教育や子育てへの家庭の費用負担は限界を超えている。7月3日、文科省の「教育安心社会懇談会」の提言をはじめとして、政府自らが、日本の教育への公費支出は先進国で最低と述べ、さらに少子化や格差、貧困の再生産、固定化の解決は待ったなしの課題と認めざるを得ないほどになっている。
 
 この競争と自己責任をテコにすすめられた現在の貧困な教育の現状は、そのまま子どもの未来への貧困へとつながっている。これが子どもたちの向き合っている3つめの貧困だ。
 
 この春、東京の公立中学校の全日高校進学者は、とうとうこの20年来最低の90%を割り込むところまで来た。卒業生の1割というのは実に7300人だ。毎年7000人を越える青年が、昼間高校で学ぶという当たり前の機会を閉ざされたまま社会に送り出されている。中学校の高校進学、進路をめぐる現実は大量のワーキングプア生産システムであり、子どもは未来の貧困と向き合っている。
 
 そうした子どもたちの一番の味方である東京の教職員もまた、激しい攻撃にさらされている。子どもたちにとってはみな同じ先生なのに、主幹教諭、主任教諭、教諭、さらには期限付再任用、講師、臨時など、正規、非正規の多様な職に分化されてきている。この春から主任教諭制度の導入で、一般教諭は30代から大幅に賃金が切り下げられ、50代は定期昇給も含めて、完全に頭打ちになっている。
 
 非正規教職員も、劣悪な労働条件のもとで教育活動に専念できない――不安定雇用の非正規教職員に、正規教職員と同じ労働を担わせて、教職員を競争と管理で酷使する安上がりな教育政策は、日本の企業社会が国民に強いてきた雇用の破壊と同一の攻撃だ。そして、東京では精神疾患で病気休職する教員が年間400人を越える事態となっている。
 
 教員の雇用の安定と身分の保障は、教員が働き続けるためにも、子どもと教育の利益のためにも、不可欠の条件だ。子どもにとっても教職員にとっても決して譲れない最低のラインまでもが脅かされている現状を断固として跳ね返していく、この夏からのたたかいの先頭に立って奮闘する決意だ。

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