『クレスコ』

現場から教育を問う教育誌

クレスコ

〈2024年12月号 11月20日発行〉

【特集】登校拒否・不登校から見える景色――安心できる居場所がほしい

  • 全教共済
オピニオン

「教職員の長時間過密労働の抜本的な解決を求める全教の提言」を発表

 全教は、1120日、「教職員の長時間過密労働の抜本的な解決を求める全教の提言」をまとめ、記者発表をしました。教職員の長時間過密労働の抜本的な解決の方向及び、文科省に対する基本要求を示し、国民的な議論を呼びかけるものです。長時間過密労働の実態、問題の背景・原因とともに、教職員の声を広く社会にアピールしていきます。



 文科省が2016年10月、11月に実施した教員勤務実態調査の結果は、10年前の2006年調査よりもいっそう時間外勤務が増大し、教職員の働き方がますます深刻な事態となっていることを明らかにしました。

  労働基準法は、第32条で労働時間について、「使用者は、労働者に、休憩時間を除き、一週間について40時間を超えて、労働させてはならない」としています。教員の時間外勤務は「原則として命じられない」としている「給特法」も、当然のことながら労働基準法の労働時間の原則に則っています。8時間働けばまともに暮らせることが原則です。現在の状況は、ここから大きく逸脱した違法な状態であると言えます。

 この問題は、教職員の健康問題のみならず、子どもと向き合う時間の確保とあわせて、「教育の質」を確保し向上させる課題としてとらえる必要があります。日本政府も採択しているILO/UNESCO「教員の地位に関する勧告」でも「教員の労働条件は、効果的な学習を最もよく促進し、教員がその職業的任務に専念できるものでなければならない」(8項)と指摘されているところです。

 深刻さを増す長時間過密労働の背景には、安倍「教育再生」のもとですすむ、学力テスト体制による過度な競争主義や、教職員評価や教員免許更新制など管理と統制を強化する教育政策があります。教職員のいのちと健康を守り、長時間過密労働の解消をすすめるためには、教育条件整備も含めて、抜本的に教育政策を転換することが求められています。

 全教は、教職員の長時間過密労働の解消を求めて、全教提言を発表し国民的な議論を呼びかけるとともに、解消に向けた要求運動を強めていきます。

 【全教提言の概要】

はじめに

1.教職員の「働き方」「働かされ方」の実態

 (1)文科省「実態調査」が明らかにしたもの

 (2)教職員の長時間過密労働の実態とその影響

2.わたしたちのとりくみの到達点と文科省がすすめる「働き方改革」の問題点

3.深刻さを増す長時間過密労働の原因

4.教職員の長時間過密労働の解決の方向

 (1)教職員の定数改善を抜本的におこなうことを柱に据えた政策を真正面から打ち出すこと

 (2)文科省は、教職員の長時間過密労働の実態を労働基準法や労働安全衛生法、給特法に沿って解決すること
 *給特法の改正(全教討議資料「給特法改正をめざす運動をすすめよう-教職員の恒常的な長時間過密労働を是正させるために」(2011年5月)

 (3)過度な競争主義、管理と統制の教育政策を抜本的に転換すること

5.教職員の長時間過密労働の抜本的な解消に向けた全教の基本要求

 (1)教職員定数を抜本的に改善すること

  ①少人数学級を小学校から高校まで実現すること

  ②教員一人の持ち授業時間数に上限を設定すること

 (2)授業準備にかかる時間を勤務時間内に確保すること

 (3)競争主義的な教育政策を抜本的に転換すること

 (4)教員の専門性を尊重しない教育行政の姿勢を改めること

 (5)成績主義の持ち込みや拡大をやめ、教職員にチームワークをいっそう高めるにふさわしい施策の検討、対応をすること

 (6)給特法を改正すること

 (7)労基法、労安法にもとづく教職員のいのちと健康を守るための責任ある環境整備をおこなうこと

 (8)部活動問題について、勝利至上主義を改めるための有効な施策を打ち出すなど抜本的な見直しをおこなうこと

 (9)教職員組合と誠実な協議・意見交換をおこなうこと

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