全教は、5月13日政府が「国家公務員賃金を10%下げる」という重大な提案に対して、中央執行委員会として満身の怒りを込めて抗議声明を発表しました。
2011年5月16日
日本経済を冷え込ませるルール違反の公務員賃金引き下げ提案に抗議する(声明)
全日本教職員組合(全教)
中央執行委員会
政府は、5月13日、国公労連や自治労連とともに全教・北村委員長も参加した交渉において、国家公務員賃金を10%引き下げるという重大な提案をおこないました。私たちは、満身の怒りをもって、この提案に抗議し、撤回を強く求めるものです。
席上、片山善博総務大臣は、「昨年の人事院勧告の取り扱い閣議決定以後の経過を踏まえ、政府として、方針がまとまった、厳しい財政事情にあるなか、それに加えて東日本大震災が発生し、その対処を考えれば歳出削減は不可欠である」としました。具体的には、平成25年度末(26年3月)までの3年間、俸給とボーナスの1割カットを基本として引き下げることを提案しました。
私たちは、今年に入ってから、賃下げに向けた政府の動きが示されるたびに、労働基本権制約の「代償措置」である人事院勧告制度を踏みにじるものであることを繰り返し明らかにし、公務員の賃下げが消費税増税などの国民犠牲の露払いとしての暴挙であることを指摘してきました。総務大臣に提出した5万筆の反対署名と7000近い職場決議には、全国の組合員からの怒りが結実しています。
政府は、今回の賃下げ提案の理由として、東日本大震災への財政対応をあげています。しかし、理由になるものではありません。東日本大震災による未曾有の被災が明らかにしているものは、住民のいのちを守る学校を含めた公務公共業務の役割とそれを担う公務労働者の重要性そのものです。地元の教職員や自治体職員のなかには、震災によって家財が流出し、場合によっては家族を亡くしながらも、何よりも住民のいのちと暮らしを優先すべく仕事をする姿が、連日、テレビや新聞で報道されています。さらに、被災した子どもたちの教育や避難所となっている学校を支えるため、多くの教職員が奮闘しています。県外へ避難した人たちのために開設された全国各地の避難所でも、住民への対応の中心的な役割を果たしているのは避難所となった自治体の職員ですし、多くの転入児童・生徒を受け入れて、その教育を保障しようと奮闘しているのは全国の教職員です。
こうした現状を顧みずに、政府が公務員総人件費2割削減をめざす姿勢に固執し、公務員賃金の大幅引き下げを提案したことにはまったく道理がありません。すでに、労働総研の試算として、地方も含めた公務員の人件費10%削減で、国内生産に5兆8472億円もの減少をもたらすことが公表されています。まさに、公務員賃金の引き下げが、民間労働者にも悪影響を与え、取り返しのつかない景気悪化をもたらすことは明らかです。
いま求められているのは、大幅な公務員削減をはじめ国民のいのちと暮らしを犠牲にしてきた「構造改革」路線を転換し、国民の安全・安心を守る公務公共サービスを充実させることです。大企業がため込み続けてきた内部留保を、震災復興財源として活用すべきです。全教は、断固として政府に賃下げ提案の撤回を求め、運動の強化を全国のすべての教職員に呼びかけるとともに、最後までその先頭に立ってたたかい抜く決意を表明するものです。