全日本教職員組合は、2011年5月2日、『「地域主権改革」関連3法案の成立に対する書記長談話』を発表しました。
「地域主権改革」関連3法案の成立に対する書記長談話
2011年5月2日
全日本教職員組合(全教)
書記長 今谷賢二
1.「地域主権改革」関連3法案は、4月28日、「地域主権改革」の文言を削除するなどの修正のうえ、民主、自民、公明、社民各党の賛成多数で可決され成立しました。この法案は、「地域主権改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案」「国と地方の協議の場に関する法律案」「地方自治法改定案」を一括したもので、昨年3月に国会に上程され参議院で十分な審議もなく採決された後、衆議院に送付されたものの審議がされないまま継続審議扱いされて今国会に送られてきたものでしたが、4月末になって民主・自民党などの合意により、衆参わずか2日間の審議で採決が強行されました。
2.この一括法案は、憲法に基づき福祉や教育条件の最低基準を保障すべき国の責任を投げ捨て、規制緩和をいっそう押し進めるものです。「義務付け・枠付けの見直し」については、41の法律、121条項の改定が含まれており、福祉・医療・保育・教育条件の水準を確保するために国が基準を決め、必要な予算を国が負担するしくみを崩し、地方自治体の判断で基準を緩和することを可能にしています。教育分野では、へき地学校等の指定や手当額の基準、市町村立幼稚園の設置廃止の認可などについての見直しが含まれています。へき地手当等の基準の条例委任は、へき地学校等の級を指定する基準とへき地手当を定める基準などについて、文部科学省が省令で定めた基準に縛られずに都道府県が自らの判断で決定できることにするもので、財政支出の縮減のために、へき地級地やへき地手当率の引き下げがすすめられる危険があります。また、幼稚園の設置認可を事前届出については、学校の設置廃止、設置者の変更について都道府県教育委員会の「認可を受けなければならない」対象から、市町村(政令指定都市を除く)が設置する幼稚園を削除するもので、政令指定都市以外の市町村でも、財政状況や首長の考えにより幼稚園の廃止や民間委託などがいっそう進行する危険があります。
3.菅内閣は、昨年6月に閣議決定した「地域主権戦略大綱」に基づき、一括交付金の一環として地域自主戦略交付金要綱を4月1日に施行し、「義務付け・枠付け見直し」をいっそう押しすすめる第2次関連法案を4月5日に国会に提出しました。今後、基礎自治体(区市町村)への権限委譲、国庫負担金・補助金の「一括交付金」化を含む「国のかたちの一大改革」を自民党などと一体となってすすめようとしています。この延長線には、財界の要求する「道州制」、大阪府の橋本知事や名古屋市の河村市長がねらう首長の執行権限を強化があります。こうした「改革」により、教育関係でも、学校設置基準の緩和、教職員の人事権の区市町村への移管、私学助成からの国の責任放棄などがねらわれています。
全教は、福祉や教育条件のナショナルミニマムを保障すべき国の責任放棄をねらう「地域主権改革」に反対し、国の責任による30人学級実現など、教育の条件整備や福祉・医療・保育など社会福祉に対する国の責任の明確化を要求します。また、福祉・教育を国民に保障するための国の財政保障を放棄する「一括交付金」化に反対し、義務教育費国庫負担金などナショナルミニマムを保障するための財源確保を要求するとともに、地方自治体が子どもたちと地域の実情に沿った教育条件を拡充することのできる新たな財政措置を求めるものです。
以上