『クレスコ』

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クレスコ

〈2024年12月号 11月20日発行〉

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小学校1年生の35人学級へ、義務標準法が成立 ――全教が声明を発表、国の責任による30人学級をめざして運動強化を

 小学校1年生の35人学級を国の制度として確定させる「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」改正案は、4月15日、参議院本会議で可決、成立しました。新年度に入っての成立となりましたが、大半の項目が4月1日にさかのぼっての実施となります。この措置を見込んで、地方での少人数学級が一段と前進し、18道府県で2010年度よりも実施学年、学級編制への人数で制度改善が行われています。全教は、改正案の成立を受けて、中央執行委員会声明を発表し、運動のいっそうの前進を呼びかけました。


■全教中央執行委員会声明
小学校1年生の35人学級実現を確信に、国の責任による30人学級、教職員定数の抜本的拡充に向けた運動を前進させよう
                             2011年4月15日
                             全日本教職員組合(全教)中央執行委員会

1.小学校1年生の学級編制標準を35人とする「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」(以下、義務標準法)改正案は、4月15日、参議院本会議で可決され、成立しました。成立日は遅れましたが、2011年度からの制度としてスタートすることが附則で明記されています。これによって、小学校1年生の35人学級が、国の制度としてスタートすることになりました。全教は、長年にわたる教育条件改善を願い、求めてきた運動の重要な到達点として確認し、引き続く計画的、継続的な改善に向けての運動を前進させる決意です。

2.文部科学省が提出した同法改正案は、衆議院段階の審議を通じて、①学級編制にあたっては「当該学校の児童又は生徒の実態を考慮して行う」ことを規定する(第4条)、②加配や教職員定数の算定についての特例について「当該学校の校長及び当該学校を設置する地方公共団体の教育委員会の意向を踏まえ」「当該学校において児童又は生徒の心身の発達に配慮し個性に応じた教育を行うのに必要かつ十分なものとなるよう努めなければならない」ことを明記する(第7条、第15条)、③特例条項に、「障害のある児童又は生徒に対する特別な指導が行われていることその他当該学校において、障害のある児童又は生徒に対する指導体制の整備を行うことについて特別の配慮を必要とする事情として政令で定めるもの」を新設する(第15条)、④平成23年東北地方太平洋沖地震により被害を受けた地域に対し、「当該地方の教職員の定数に関し、当該事情に迅速かつ的確に対応するために必要な特別な措置を講じるものとする」ことを明記する(附則第4項)などの修正が加えられました。これらの修正条項は、④が公布の日から実施し、一部の条項は2012年度からの実施となります。

3.この法案修正は、当初は自民党などによる「一律的な少人数学級よりも加配教員数の確保」を主張する立場からのものでしたが、審議を通じて小学校1年生の35人学級をスタートさせることとあわせた調整が図られ、上記のような内容となりました。学級編制標準の改善を維持し、子どもや地域の実態に応じた学級編制や教職員配置の方向となったことは重要です。但し、「(都道府県教委が定める基準を)『標準としての基準』とする」ことを含むこれらの措置は、財政保障を欠いたり、校長や地教委の一方的な「意向」によって左右されたりすることがあってはなりません。義務教育費国庫負担金の確保、都道府県費による教職員人件費の確実な担保など財政的な保障を後退させないとりくみが重要になります。全教がこの間の意見書などで主張してきたように、義務標準法の諸規定を最低基準として明確に位置づけるとともに、市区町村による教育条件充実を保障する財政的な裏付けを確立することも重要です。
 なお、衆議院における審議過程では、小・中学校のすべての学年で30人学級とする日本共産党の修正案も提起され、審議されましたが、文部科学委員会の採決で否決されています。

4.次年度以降の扱いについては、附則第2項において、「この法律の施行後、豊かな人間性を備えた創造的な人材を育成する上で義務教育水準の維持向上を図ることが重要であることに鑑み、公立の義務教育諸学校における教育の状況その他の事情を勘案しつつ、これらの学校の学級規模及び教職員の配置の適正化に関し、公立の小学校の第2学年から第6学年まで及び中学校に係る学級編成の標準を順次改定するその他の措置を講ずることについて検討を行い、その結果に基づいて法制上の措置その他の必要な措置を講じるものとする」とされました。東日本大震災の復興なども口実にした教育予算削減も懸念されており、圧倒的な世論と運動の強化によって着実な少人数学級の進行とともに、2010年8月計画では見送られた高校や障害児教育分野での学級編制標準の改善などに踏み出させることが重要課題となります。全教は、昨年に続く「えがお署名」を広げ、すべての子どもの成長と発達を保障するために、ゆきとどいた教育の条件をめざす圧倒的な世論をつくりあげる運動の前進をよびかけます。

以 上

 

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