文部科学省は、12月17日、2011年度政府予算案において、小学校1年生の35人学級を実施することで関係大臣と調整がついたとして「大臣合意」を明らかにしました。全教中央執行委員会はこれを受けて12月21日、声明「国の制度として小学校1年生の35人学級実現へ! この間の運動を確信に、すべての子どもの成長と発達を保障する教育の前進を」を発表しました。
【声明】国の制度として小学校1年生の35人学級実現へ!
この間の運動を確信に、すべての子どもの成長と発達を保障する教育の前進を
2010年12月21日
全日本教職員組合中央執行委員会
1.文部科学省は、12月17日、2011年度政府予算案において、小学校1年生の35人学級を実施することで関係大臣と調整がついたとして「大臣合意」を明らかにしました。全教は、国の制度としては30年ぶりとなる学級編制標準の改善を歓迎します。「元気な日本復活特別枠」への予算要望に位置づけられた小学校1・2年生の35人学級など「新・教職員定数改善計画(案)」は、「特別枠にかかわる評価会議」で〝B判定〟とされ、一部新聞では「35人学級見送り」と報じられました。こうした中、全教は財務省や文科省、首相官邸などに対する全国からの緊急要請にとりくむとともに、それぞれの省庁、民主党に対して直接の要請をおこなうなど予算編成最終盤までの運動を展開してきました。全教の要請を受けて、全労連・子ども全国センターもただちに全国の労働組合・諸団体に緊急行動を呼びかける文書を発出しました。こうした予算編成の最終盤まで繰り広げられた全国からの運動によって、実現に向けての歩みが始まったのです。これは、すべての子どもの成長と発達、ゆきとどいた教育の実現を求める国民の声を背景にした貴重な到達であり、さらに制度改善を前進させる重要な足がかりとなるものです。少人数学級の早期実現をめざし、今年度集約分を含めて累計で4億筆にものぼる教育全国署名をはじめ、地域からのゆきとどいた教育を願う運動によって作り出した到達を確信に、初年度分の確実な実施と引き続く計画の具体的な進展、計画そのもの充実に向けて運動を強めなければなりません。
2.文科省が策定した「新・教職員定数改善計画(案)」では、初年度分として小学校1・2年生の35人学級への移行が打ち出され、「元気な日本復活特別枠」にかかる予算要望として必要経費が概算要求されていました。「大臣合意」では、小学校1年生の35人学級に必要な4000人の教職員定数を措置することを明らかにするとともに、純増300人を含む2300人の定数改善が明示され、現行の加配定数1700人の活用が見込まれています。これらの措置を具体化するために、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(義務標準法)の通常国会への提出と早期成立の方向も示されており、2011年4月からの実施に向けたとりくみが重要になります。
3.今回、「新・教職員定数改善計画(案)」の初年度分が概算要求された「元気な日本復活特別枠」は、政府が決定した「新成長戦略」に沿って、新たに設けられた予算編成の仕組みです。前年比10%の経費削減と引き換えに、各省庁から主要な政策と予算要望を集中させ、パブリックコメントや政策コンテストによって予算配分を決定するとされました。日本国憲法第25条・26条にもとづく教育を受ける権利・子どもの学習権を保障し、すべての子どもの人格の完成をめざすという教育の目的を達成するためには、教育条件の整備は必要不可欠のものです。国の責任で計画的に整備されることが必要であり、「特別枠」のような“競売的手法”に左右されるべきではありませんでした。
4.小学校1年生での35人学級が実現する方向になったとは言え、政府予算案のまま推移すれば、当初の計画から後退しての初年度実施となります。さらに、次年度以降の取り扱いについては「学校教育をとりまく状況や国・地方の財政状況等を勘案しつつ、引き続き、予算編成において検討する」とされています。国の責任による教育条件整備の基本を明確にして、早急に計画を進捗させること、高校や障害児教育分野など計画そのものの改善をめざすことがこれからの課題です。また、すでに実施されている地方の努力を後退させることなく、国の実施分を上回る地方の条件を広げ、すべての子どもたちが大切にされる学校への歩みを大きくする必要があります。同時に、今日の到達点に立った学校づくり、教育課程づくりのとりくみがいっそう重要になります。全教は、引き続き、これらの運動に全力をあげる決意です。
以上