全教は、鳩山内閣が4月7日、地域主権改革関連法案を国会に上程にしたのを受け、同日、書記長談話を発表しました。
地域主権改革関連法案の国会上程に対する書記長談話
2010年4月7日
全日本教職員組合書記長 北村佳久
1.鳩山内閣は、自公政権の構造改革路線を引き継ぎ、「地域主権改革」の名でさらに地方分権改革をすすめようとしている。鳩山首相は、1月の施政方針演説で、地域主権改革を「国のかたちの一大改革であり、鳩山内閣の改革の一丁目一番地」と位置づけ、「政治主導で集中的かつ迅速に改革を進めます。その第1弾として、地方に対する不必要な義務付けや枠付けを、地方分権改革推進計画に沿って一切廃止する」と述べている。これを受けて政府は、関連法案を3月5日に閣議決定し、4月7日に参議院先議として趣旨説明を行い、この通常国会での成立をねらっている。
2.地域主権改革関連法案は、「地域主権改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案」と「国と地方の協議の場に関する法律案」から成り立ち、前者には「地域主権戦略会議の設置」と「義務付け・枠付けの見直し(41法律を一括改正)」が含まれている。法案は、「地域主権改革」を、「住民に身近な行政は、地方公共団体が自主的かつ総合的に広く担う」「地域住民が自らの判断と責任において地域の諸課題にとりくむことができるようにする」ための改革と定義しているが、これは、地方自治の本旨にたって「住民の福祉の増進を図る」地方公共団体と、憲法25条で「社会福祉、社会保障…の向上及び増進」の責務を負う国が適切に役割を分担し住民の生活・福祉の向上を図るという現行制度を転換し、「住民に身近な行政」を地方公共団体任せにし、住民に自助・相互努力の責任を押しつけることをねらうものである。
「義務付け・枠付けの見直し」は、福祉・医療・保育・教育条件の水準を確保するために国が基準を決め、必要な予算を国が負担するしくみを転換し、地方公共団体の判断で基準を緩和することを可能にするもので、保育園の待機児解消策として保育園の居室面積基準を緩和し安心安全の健やかな成長を脅かすなど、水準の後退をもたらす危険が指摘されている。
3.文科省関係では、へき地学校等の指定や手当額の基準、市町村立幼稚園の設置廃止の認可などについての見直しが含まれているが、そこには以下の問題点がある。
へき地手当等の基準の条例委任は、へき地学校等の級を指定する基準とへき地手当を定める基準などについて、文部科学省が省令で定めた基準に縛られずに都道府県が自らの判断で決定できることにするもので、財政支出の縮減のために、へき地級地やへき地手当率の引き下げがすすめられる危険がある。級地指定の引き下げは、学校の施設設備や修学旅行・給食への補助など子どもたちの教育条件を低下させるものであり、へき地手当引き下げは、へき地教育を担う人材確保をいっそう困難にし、結果として、へき地の子どもたちの教育条件に深く影響するものである。また、幼稚園の設置認可を事前届出については、学校の設置廃止、設置者の変更について都道府県教育委員会の「認可を受けなければならない」対象から、市町村(政令指定都市を除く)が設置する幼稚園を削除するもので、政令指定都市以外の市町村でも、財政状況や首長の考えにより幼稚園の廃止や民間委託などがいっそう進行する危険がある。
4.関連法案に続き、地域主権戦略会議は、学校設置基準の緩和、義務教育諸学校の学級編成基準の市町村への権限移譲などを文部科学省に執拗に迫り、地域主権改革を実施するための財源としての「一括交付金」のあり方を検討するとしている。これらを含む地域主権戦略大綱を参議院選挙前に策定し、民主党はこれを選挙政策の目玉として国民を欺き、選挙後、民主党政権の「政治主導」により法改定の強行をねらっている。
全教は、ナショナルミニマムとして国の責任で確保されるべき福祉・教育条件について、規制緩和を一層すすめる地域主権改革関連法案の慎重審議と問題点の徹底解明を要求するとともに、教育の条件整備や福祉・医療・保育など社会福祉に対する国の責任の明確化を要求するものである。
以上