『クレスコ』

現場から教育を問う教育誌

クレスコ

〈2024年11月号 10月20日発行〉

【特集】ともに歩もう! ジェンダー平等と教育の世界へ

  • 全教共済
オピニオン

【談話】『1年目で退職に追い込まれた教員等の公表に対して』

管理強化・上意下達の教育政策を改め、教職員を支援し、希望を持って健康に働き続けることのできる条件整備を求めます


                                        2009年11月5日
                                    全日本教職員組合(全教)
                                      書記長 北村 佳久

 文部科学省は、11月4日、「公立学校教職員の人事行政の状況調査について」を公表しました。これは、新採用1年目の教員のうち条件附採用期間を経た後に正式採用とならなかった教員数、管理職等からの本人希望による降格者、「指導が不適切」な教員として認定された人数などについて、都道府県・政令指定都市教育委員会を対象とした調査の結果として公表されたものです。
 2008年度に新規採用された教員のうち条件附採用期間を経た後に正式採用とならなかった人数は、315人となっています。これは、全採用者の1.3%にもなります。昨年度の301人をさらに上回り、2001年度の55人と比べて5.7倍にもなる異常な数字となっています。315人のうち大半(304人)が依願退職とされていますが、その内訳では実に93人が病気を理由にした「辞職」であり、しかもそのうち88人が精神疾患を理由としています。「自己都合」となっているものには、これまでの事例からしても管理職等から実質的な退職強要ともいえる不当な扱いを受けたものも相当数含まれていると推察されます。
 教職を志し、教員として働き始めながら、1年以内に退職せざるを得ない状況に追い込まれている者が、これだけの規模に達していることは、まさに異常であり、今日の教職員のおかれている状況の深刻さを浮き彫りにするものです。この背景には、第一に、1年にも及ぶ初任者研修制度の過酷な現状があります。「超」過密・長時間労働をこれ以上放置しては、「子どもたちとともに教育の仕事をしたい」と熱意を持って教壇に立った青年を、教育の未来を担う教師として成長させることはできません。また、第二には、改悪教育基本法を背景とした教職員に対する管理・統制の強化と教員評価制度の押しつけが、初任者にいっそう色濃く現れていることを指摘しなければなりません。「条件附採用期間の厳格な適用」による摘発・排除は、京都地裁・大阪高裁における「新規採用者に対する分限処分の取り消しを求めた裁判」の判決でも厳しく戒められていることを考慮した対応が求められます。さらに、第三として条件附採用者には、長期にわたる病気休暇を可能とする休職制度が整備されていないことも見逃すことはできません。
 全教は、これらの要因を早期に改善し、新規採用教職員の願いを生かし、教員としての成長と、健康に教育活動に打ち込める条件をつくりあげること、それを支える条件整備を強く求めるものです。

 今回の調査結果では、本人希望による管理職等からの「降格」者は、過去最高の179人(対前年比169%)にのぼっていることが明らかにされました。この間、改悪教育基本法の具体化として持ち込まれた「副校長」等や「主幹教諭」から教諭への降格がその大半(173人、96.7%)を占めていることが特徴です。健康上の理由に続いて、職務上の問題を理由にした降格が上位を占めており、「新しい職」の設置そのものの破綻を伺わせるものです。管理職を中心に広がっている評価制度と賃金へのリンクの問題なども無関係ではありません。管理体制の強化、上意下達の教育政策では、教育の営みそのものが損なわれるとともに、教職員としての仕事や健康にも重大な支障が生じていると言わなければなりません。文部科学省は、「新しい職」の設置や教員評価制度の導入に固執することなく、すべての教職員が安心して、健康に働き続ける条件こそつくるべきです。早急な具体策の検討を求めるものです。

 今回の調査には、「指導不適切教員」にかかわる結果も含まれています。この問題にかかわっては、全教が申し立てを行い、4次にわたって出された共同専門家委員会(CEART)勧告が示している改善方向を具体化し、排除と摘発を中心においた教職員に対する人事管理の基本政策を根本から転換することが必要です。改めて、教職員が安心して働き続けることのできる条件づくりへの努力を強く求めるものです。

以  上
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