『クレスコ』

現場から教育を問う教育誌

クレスコ

〈2024年12月号 11月20日発行〉

【特集】登校拒否・不登校から見える景色――安心できる居場所がほしい

  • 全教共済
オピニオン

【談話】『京都市教組超勤訴訟の高裁判決について』

                  2009年10月 2日 全日本教職員組合 書記長 北村 佳久

 京都市教職員組合の組合員9名が2004年に京都市を相手取り、過重な超過勤務の是正を求めていた裁判で、大阪高等裁判所は、10月1日、地裁判決において安全配慮義務違反として55万円の慰謝料を支払うことを命じた原告1名に加え、さらに2名の原告に対して、55万円の慰謝料を支払うことを命じる判決を言い渡しました。


 京都地裁判決をさらに前進させ、3名の原告に対して損害賠償を認め、慰謝料の支払いを命じたことを高く評価するものです。
 
 今回の裁判は、長時間労働が蔓延している事態を変え、子どもたちに豊かな教育を保障するうえでも、教職員定数増などの教育条件の改善、違法な状態が放置されていることについての司法の場での認定、国や市教委の責任を明らかにすること、超過勤務手当の支給と、そのための制度の確立、などを求めて起こされたものです。
 
 判決において大阪高裁は、「時間外勤務の時間からすると、配慮を欠くと評価せざるを得ないような常態化した時間外勤務が存在したことは推認でき」たこと、また「時間外勤務が極めて長時間に及んでいたことを認識、予見できたことが窺われるが、それに対して、改善等の措置を特に講じていない点において、適切さを欠いた」ことを断罪し、管理職の安全配慮義務違反を明確にしました。
 
 京都地裁に続いた司法の判断は、学校職場において恒常化している教職員の長時間過密労働が、放置されてよい問題では決してないことを、管理職の安全配慮義務の角度から明らかにしたものといえます。管理職が教職員の長時間過密労働の実態を認識したなら、改善のための措置をとらなければならないといけないということは、全国ですすみはじめた勤務時間管理の運動を大きく励ますものです。
 
 一方で判決は、恒常化している超過勤務の実態が、自主的、自発的な時間外労働といえる状況にはないとした原告の主張に対し、自主性、自発性、創造性に基づく職務遂行が「教育職員の職務の本質部分」だとし、「時間外勤務そのものが違法と評価されるのは、教育職員の自由意思を強く拘束するような状況下でなされ、給特法の趣旨を没却するような場合に限られる」として退けました。
 
 こうした給特法の建前を理由に教職員の無定量の長時間労働を容認する立場は、増え続ける病気休職者に見られるような教職員の実態からも認められないものですが、給特法をめぐって繰り返される司法の判断が、給特法そのものの限界と問題点を露呈しているものです。
 
 私たちは、子どもたちのすこやかな成長と豊かな教育の実現をめざして、判決の前進面を活用し、問題点を明らかにしながら、教職員の長時間勤務の解消とともに、教育条件の改善と法制度の改正に向けた運動を強化する決意を表明するものです。

以上
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