2009年 6月 4日 全日本教職員組合 書記長 北村 佳久
大阪高等裁判所第10民事部(赤西芳文裁判長)は、6月4日、京都市が2005年3月31日付で強行した高橋智和さんへの分限免職処分を取消す判決を言い渡しました。これは、京都地裁判決につづくものであり、この間の京都市教組と「高橋さんの不当処分撤回闘争を支援する会」に結集されたみなさん、支援を続けてこられた全国の教職員のみなさんの奮闘に心から敬意を表するとともに、京都市が判決に従い、上告せずに1日も早く高橋さんを職場復帰させることを強く求めるものです。
判決は、控訴人(京都市)の主張について、「いずれも、証拠上的確に認められない」「いずれも、主観的な評価をしているにすぎない」など、明確に退ける判断をしました。
その上で、条件附採用期間中の教員を「教員として十分な経験を経た者ではなく、今後研さん等に努めて成長していく過程の者」とし、「当該期間中の職務成績が経験のある教員と比した場合、必ずしも十分でなかったとしても、直ちに、分限免職の対象となるとはいえず、教員として将来成長していくだけの資質・能力を有するか否かという観点から判断するべきである」と、新採教員の分限免職処分についての判断基準を示しました。
また、分限免職処分にあたっては、「職場における適切な指導・支援態勢の存在と本人が改善に向けて努力する機会を付与されること、ある程度の整合的・統一的な評価基準の存在が」前提として必要で、「一定の時間の経緯の中で評価すべき」であり、「主観的な評価の入る余地のある出来事を評価対象とすることはできるだけ避け」るべきであるとしましたが、これらは新採教員に対するパワハラ的な指導や評価を是正させるとりくみをすすめる大きな到達点となりました。
しかも、高橋さんが児童や保護者から信頼を失った一因は、「管理職や学校の被控訴人に対する態度」にもあり、「管理職らの指導・支援態勢も必ずしも十分ではなかった」と断罪したことは、学校における教育活動が同僚性と教職員間のチームワークによってこそ支えられることを、あらためて明らかにしたものです。
文科省が、08年2月に、「全国的な教育水準が確保されなくてはならない」として、各任命権者の参考となるよう作成した「改正法の趣旨に則った人事管理システムを公正かつ適正に運用するためのガイドライン」では、新採者への「厳格適用」だけが強調され、07年度には301名もの新採者が辞めさせられていきました。
全教は、本日の判決を高く評価するとともに、文科省が「教職における雇用の安定と身分保障は、教員の利益にとって不可欠であることはいうまでもなく、教育の利益のためにも不可欠なものであり」「専門職としての身分またはキャリアに影響する専断的行為から十分に保護されなければならない。」としている「教員の地位に関する勧告」を尊重する立場に立ち、摘発・排除の人事政策を改めることを要求するものです。