2009年 4月 9日 全日本教職員組合 障害児教育部長 杉浦 洋一
1.4月9日、東京高等裁判所第7民事部(大谷裁判長)は、金崎裁判について東京都の控訴を棄却するとの判決を下した。教育への支配・介入が強められる中、教育の条理にもとづき子どもたちのための教育を推進しようと奮闘する全国の教職員を励ます判決である。
2.この裁判は、2003年9月、教諭への降任、1カ月の停職という東京都立七生養護学校金崎満元校長への都教委処分の取り消しを求める裁判としてたたかわれた。七生養護学校事件は、2003年7月土屋都議の都議会性教育質問に端を発するものである。2003年3月中教審「教育基本法の見直し」答申、5月「東京都心身障害教育改善検討委員会」の障害児教育の大リストラ方針、それに抗する父母・教職員の大運動が広がり、10月「入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について」なる都教委10・23通達が出され、このような背景の中で七生養護学校に対する乱暴な攻撃が強行された。
3.全教は、七生養護学校への攻撃を教育行政による教育統制、および「特別支援教育」による障害児教育大リストラ推進に向けた意図的処分ととらえ、合同調査団を組織すると共に、金崎裁判、「こころとからだの学習」裁判への全国的支援を続けてきた。
4.情緒障害児の実態を踏まえた柔軟な指導体制をとったことを「不適正な学級編制」とし、それを主要な根拠とする金崎元校長への処分であった。判決は「被控訴人が不適正な学級編制をしたという事実は認められず、…本件懲戒処分は重きに失し、社会通念上著しく妥当を欠いて裁量権を濫用して発せられた違法なものであり、本件分限処分は、一部根拠のない事実を前提とし、考慮すべきでない事項を考慮して処分事由の有無を判断したもので、重きに失し、裁量権の行使を誤った結果発せられた違法なものである」と明快に断じ、控訴を棄却し、処分の取り消しを求める地裁判決を相当とした。さらに判決が、地裁判決を超えて、児童、生徒の実態をふまえた適切な授業形態の工夫や、問題行動や集団不適応が顕著で現行の学級編制や教育課程では教育的対応が十分にできない生徒への柔軟な対応などに対する教育的判断を指摘したことは重要である。
5.東京都は今判決を謙虚に受け入れ、上告せずただちに判決に従うよう強く求める。
6.今判決を力に、子どもたちの成長・発達のために学校・教職員が責任をもって教育内容と教育課程を創造していくとりくみを一層強めることを、全国の教職員に呼びかける。