『クレスコ』

現場から教育を問う教育誌

クレスコ

〈2024年11月号 10月20日発行〉

【特集】ともに歩もう! ジェンダー平等と教育の世界へ

  • 全教共済
オピニオン

【談話】『教職員を侮辱する自民党笹川総務会長の「うつ病の先生、気が弱い」発言に抗議する!』

                2009年 3月16日 全日本教職員組合 生活権利局長 蟹沢 昭三

 自民党の笹川尭総務会長が14日に大分市であった自民党県連年次大会で、「学校の先生は、うつ病で休業している人が多い。国会議員は一人もいませんよ。気が弱かったら、務まりませんよ」と発言したと報道されました。先日の実習船「えひめ丸」の沈没事故に絡めた問題発言に続くものです。この発言は、うつ病患者への無理解によるものであり、今日の教職員の深刻なメンタルヘルス不全増加の実態から目を背ける、許せない発言です。私たちは、発言を撤回し、教職員と国民に謝罪するよう求めるものです。

 昨年末の文科省の発表によると、2007年度中に心の病で休職した教職員は前年度より320人増えて4995人に達し、10年前の3倍に達しています。「社会が支えずに放っておくと、学校教育そのものが危機に陥るといっても大げさではない」(三楽病院真金薫子医師)事態であり、文科省も「重大な結果。教員のメンタルヘルス保持のとりくみを充実させたい」とコメントせざるを得ない深刻な実態です。
 
 文科省の委託を受けた東京都教職員互助会等の2006年から2007年にかけての教職員の健康に関する調査によると、「とても疲れる」と答えた教員は45%、一般企業の平均は14%(厚労省調査)のほぼ3倍に達しています。そして、ストレスの原因として、61%が「仕事の量」、41%が「仕事の質」と回答しています。全教が指摘してきたように、個人的な資質・性格によるものではなく、恒常的な長時間過密労働と管理体制強化が最大の原因です。
 
 静岡の小学校教諭の尾崎喜子さんが「うつ病」を発症し、自ら命を落し、遺族が公務災害認定を求めた裁判で、昨年4月東京高裁は「公務災害」との逆転勝利判決を下しました。その判決は「うつ病に関係の深い性格傾向として、几帳面、まじめ、熱心、勤勉、良心的、周囲に気遣いをする努力家などの諸特徴がある。そのような性格の人は、仕事にも一生懸命とりくんで適当に休むことをしないので、のんびりした人よりも、知らぬうちに心身のストレスを生じやすい。うつ病になりやすい性格とは、『問題のある性格傾向』という意味ではなく、むしろ適応力のある誠実な気質と強く関係する」と述べています。
 
 同様に、「理想に燃えたモラールの高い教師ほど」「一般に教師に向いた、教師らしい性格の持ち主がバーンアウトする比率が高いという研究結果が多い」(『教師の構造改革とメンタルヘルス』多賀出版)と、まじめで教育熱心な教師がメンタルヘルスでゆきづまる例が少なくないことを多くの教育学者・専門家等が指摘しています。
 
 このように教室で悪戦苦闘し、うつ病になった教職員を、「気が弱いから」と決め付け、切り捨てる笹川総務会長の発言を見過ごすことはできません。
 
 
 子どもたちが生きいきと瞳を輝かせ学習するには、子どもと向き合う教職員が何よりも健康でなければなりません。今求められることは、30人学級の実現など教育条件の整備で恒常的な長時間過密労働を解消すること、そして教職員への教育の条理に立った励ましと援助のメンタルヘルス対策の充実ではないでしょうか。全教は教職員のいのちと健康を守るため、これらの実現を求め、労安活動のいっそうの推進とあわせ、引き続き奮闘するものです。

                                              以上
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