『クレスコ』

現場から教育を問う教育誌

クレスコ

〈2024年12月号 11月20日発行〉

【特集】登校拒否・不登校から見える景色――安心できる居場所がほしい

  • 全教共済
オピニオン

【大会宣言】『父母・国民とともに、貧困と格差拡大から子どもを守り、子どもの豊かな成長を!憲法を生かし、平和で平等な社会の実現を!さらに大きく強い全教を!』

 アメリカ発の金融危機の影響と大企業による横暴が、日本の経済危機にも及び、その打開策を持たない麻生内閣の支持率は急落し、非正規労働者の労働組合の立ち上げ、「年越し派遣村」など国民の反撃の始まったあらたな政治情勢のもと、全教は2月14、15日、第26回定期大会を東京で開催しました。大会は、貧困と格差拡大の中、すべての労働者・国民と連帯し、子どもと教育を守り、平和で平等な社会を築くため、憲法改悪阻止のたたかいの本格的な構築とともに、総選挙で政治を転換し、私たちの要求実現に向けた運動方針を確立しました。


.「構造改革」路線がつくり出した貧困と格差拡大の進行が、子どもの安心のより所である家庭を直撃しています。
 「保険証を取り上げられ、けがしても病院に行けない」「給食のない日、食べ物をあさる子がいる」「通学定期が買えず通えなくなる」「授業料が払えずに退学せざるを得なくなった」など、貧困と格差拡大が子どもの成長・発達、学習権にも大きく影響を及ぼしていることがリアルに語られました。さらに今春卒業予定の高校生の就職内定取り消しは、日ごとに増えていることも明らかになりました。その中でも「私学助成を削減しないで」「定時制つぶさないで」と、高校生が自ら立ち上がっている姿も浮き彫りになりました。各地の運動で、保護者の解雇、失職、賃金不払いなどを条件に独自助成、緊急貸与など緊急措置にとりくむ自治体も出てきています。父母住民とともに高校募集定員増を求めた運動は教訓的でした。
 政府の押しすすめる「構造改革」にストップをかけ、国民本位の政治の実現に向け、解散総選挙で、憲法を中心にすえた新しい政治をつくりあげる展望を切り開きましょう。
 
.憲法改悪反対の世論と運動が前進しています。2004年「九条の会」発足以来、全国で7300の「九条の会」、憲法改悪反対共同センターなどの草の根の運動により、昨年4月の世論調査での改憲反対の割合が、改憲派を上回る状況を生み出しています。
 教育にかかわるさまざまな分野の人の呼びかけによる「教育子育て九条の会」が発足しました。組織の違いを超えた「学校九条の会」、地域「教職員九条の会」も広がっています。「カラフルメガホン」「九条エコふろしき」を活用した宣伝活動、全県一斉宣伝行動、高校生への憲法アンケートのとりくみ、さらに住民過半数署名を追求した地域と共同したとりくみなど豊かに交流されました。
 ソマリア沖への自衛隊派兵の準備のすすむ中、さらに職場・地域からの運動を広げていきましょう。
 
.文部科学省は、改悪教育基本法の具体化を押しすすめ、そのことによって学校現場の矛盾をいっそう深めています。それに対して地域での父母・国民、教職員との共同や、参加と共同の学校づくりのとりくみが広がっています。2008年度試行で問題点や矛盾点が明らかになった教員免許更新制では、各大学との懇談、県教育委員会への申し入れ、シンポジウムなどさまざまな運動が、所属組織の違いを超え広がっていることが発言でも明らかになりました。また全国一斉学力テストでも、結果公表を知事の圧力で強行した秋田県で、組織の違いを超えた共同の県教委申し入れ、宣伝行動などがとりくまれています。
 競争の教育と「愛国心」押しつけをすすめる改訂学習指導要領の移行措置という名目で、小学校では2009年度から授業時間数増などを学校に押しつけようとしています。いまこそ、子どもの実態から出発した教育課程づくりを、一つひとつの学校から参加と共同の学校づくりとむすんでとりくみましょう。
 自衛隊の学校教育への介入がみられる中、平和教育、懸法教育の大切さが語られました。
 京都で行われた「教育のつどい2008」は、多くの父母・教職員、とりわけ青年教職員の「学びたい」という要求にこたえるものでした。さらにすべての教職員とともに学ぶ場を各地で広げましょう。
 
.ILO・ユネスコ共同専門家委員会は、文部科学省と各教育委員会に対して画期的な勧告を出しました。勧告の内容は、教員評価制度の改善と、交渉と協議に関して法規と運用を見直すよう要請しています。「教員の地位勧告」を職場に活かし、今後すすめられる公務員制度改革をはねかえすとりくみが求められます。
 長時間過密労働を是正するとりくみと、臨時教職員の待遇改善は待ったなしです。困難な中でも命を削りながら、奮闘している全国の教職員の実態が浮き彫りになりました。さらに、自治体による賃金独自カットが全国で広がっています。教職員評価や査定昇給は、教職員の協力・共同を破壊し、教育のいとなみを変質させるものです。「新たな職」の設置など、教職員を分断しようとする攻撃が強まっている中、職場における共同をすすめるとりくみが重要です。
 「構造改革」のもとですすめられている新自由主義的諸施策が、働くルールを破壊し、社会的セーフティネットを引き裂いています。09春闘では、「貧困・生活危機突破の大運動で、かえるぞ大企業中心社会」のスローガンのもと、すべての労働者・国民とともに奮闘しましょう。
 
.貧困と格差拡大をさらにすすめる「構造改革」にストップをかけ、教職員の誇りと尊厳の回復と、子どもの人間らしい成長・発達を保障する教育をすすめるためには、全教をさらに強く大きくすることが、最重要課題です。困難や課題を共有しながら集まり、語り合い、職場づくりをすすめることの重要性や、一人ひとりの組合員や分会が組織拡大に動き出した教訓などが各地から報告されました。そして、山口など、現勢回復を譲れない目標としてとりくむ大切さも報告されました。
 また、青年部を再建・活性化することで、多くの地域で青年が主体となったとりくみがすすんでいることは重要です。
 困難な条件の中で、多くの悩みや人間らしく生きたいという願いを持って働く臨時教職員や、少数職種の仲間の組織化についても語られました。要求に結びついた目に見える活動が、組合の役割をますます鮮明にしています。大会の討論で確かめられたことを生かして、何としても組織人員の1割拡大・1万人加入を達成しようではありませんか。
 
 私たちは、「教え子を再び戦場に送るな」の誓いのもと、憲法改悪を阻止し、憲法と子どもの権利条約にもとづき、貧困と格差拡大から子どもを守り、豊かな成長をめざした教育を発展させるため、父母・国民とともに全力でたたかいます。
 
 以上、宣言します。
 
2009年 2月15日 
全日本教職員組合 第25回定期大会

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