「子どもの貧困」をテーマにした本が相次いで出版されています。日高教がとりくんだ「高学費・高校つぶし・教育格差」告発ホットラインは、NHKニュースでとりあげられ、教育費の負担に苦しむ保護者からの相談が多数寄せられました。「貧困と格差」が深刻化する中で、「安心と希望の根拠地」である家庭が破壊され、子どもたちが健やかに成長し、学ぶ権利が侵害されています。経済的貧困が親の心をむしばみ、子どもの虐待・ネグレクトが急増し、食事抜きも珍しくありません。担任に「ぼく、犬に生まれたかった。えさもらえてのんびりしていられるから」と語った話に、胸が締め付けられます。経済的理由で、進学を断念したり、変更したりするケースが増加するなど、貧困の「世代間連鎖」も見過ごすことができません。
しかし、子どもたちから希望と夢を奪っている自公政治に対するたたかいが、各界・各層で全国いたる所で広がっています。「ついに労働者が立ち上がりました」とNHKニュースが報じた、違法解雇撤回を求めて組合を結成した期間・派遣労働者。行政の重い腰を上げさせた「年越し派遣村」のとりくみ。後期高齢者医療制度の廃止を求める年金者組合などのたたかい。食の安全、食糧自給率の向上めざす農民の運動。学校の統廃合や郵便局の廃止に反対するたたかい。教職員も、高校生の就職内定取り消し、子どもの無保険問題などで奮闘しました。
多くの国民は、新自由主義的な「構造改革」が、大企業・資産家を優遇し、弱者・地方を切捨てる攻撃であることを見抜きつつあります。金融危機・経済危機の中で、大企業の横暴身勝手や政府の無為無策に直面し、自分の暮らしの厳しさ・困難は、「自己責任」ではなく「政治の責任」であると分かりつつあります。
この間、「教育の憲法」であった教育基本法の改悪(06年12月)、その具体化として、愛国心教育の押しつけ、教員免許の更新制、主幹教諭など新しい職の設置、「指導改善研修」の義務化など、教育の国家支配・統制を強める「教育改悪3法」が強行(07年6月)されました。そして、新学習指導要領の官報告示、教育振興基本計画の閣議決定、全国一斉学力テスト。国の責任による30人学級の実現や教職員の長時間過密労働解消などの切実な願いに背を向けた上に、教員給与の2・76%削減と賃金差別。しかし、その一方で、「学区の自由化」「学力テスト」が教育を歪める弊害が露わとなり、教職員の健康破壊も深刻で、教育政策の矛盾と破綻が明らかになってきています。
教育基本法の改悪に反対する歴史的な国民運動や教育条件の改善・父母負担の軽減を求める世論にもかかわらず、自公政治・文科省が、子ども・教職員・父母の要求を踏みにじる反動的な文教政策を推進できたのは、国会、とりわけ、衆議院3分の2以上を自民党・公明党の議員で占めているからです。この衆議院の議席は、2005年9月に、小泉首相が「郵政民営化」を争点にし、欺瞞的な総選挙で獲得したものであり、今の国民世論を反映したものではありません。憲法をめぐる世論は、2004年に「九条の会」が発足して以来、憲法改悪反対へ劇的に変化し、「戦争する国づくり」を拒否しています。国会を「悪法製造マシン」から民意を反映した議会へ「チェンジ」することが求められています。
このような国民の願いを実現するためには、麻生政権を終わらせるとともに、自公政治に代わる新しい政治体制の中に憲法を守り生かす勢力を大きく伸ばすことが不可欠です。こんどの総選挙の結果は、国民生活や平和の問題とともに、教育のあり方に直結します。総選挙結果は、「教員免許更新制」の凍結・廃止、全国一斉学力テストおよび学習指導要領押しつけの中止、教職員定数増と私学助成増など、いま教育現場に渦巻いている切実な要求実現につながるものです。
福田内閣に代わる「選挙の顔」として登場した麻生内閣は、増税付き「定額給付金」問題などで迷走を続け、支持率は低下の一途をたどり、舵取り不能となっています。9月までにはかならず総選挙が実施されます。自公政治に終止符を打ち、憲法がいかされる平和な社会の実現、労働者・国民のくらしと権利を守るために、職場で政治を話題にしましょう。みんなで投票に出かけ、子どもたちの希望が花開く社会を実現するために、全力で奮闘しようではありませんか。
以上、決議します。
2009年 2月15日
全日本教職員組合第26回定期大会