『クレスコ』

現場から教育を問う教育誌

クレスコ

〈2024年11月号 10月20日発行〉

【特集】ともに歩もう! ジェンダー平等と教育の世界へ

  • 全教共済
オピニオン

【談話】『教育振興基本計画について』

                    2008年 7月 2日 全日本教職員組合 教文局長 山口隆

 政府は、7月1日、教育振興基本計画を閣議決定しました。
 私たちは、教育振興基本計画は、時の政府による教育介入をすすめ意図をもって、改悪教育基本法第17条に位置付けられたものであり、当初から反対の立場を明確にしてきました。また、改悪教育基本法強行後は、あらためて、政府は教育に対する不介入の原則に立つこと、計画の策定にあたっては、子どもたちにゆきとどいた教育をすすめるため、子どもの実態、学校の実態を踏まえた教育条件整備に限定して、国の責任での30人学級の実現、教職員定数増をはじめとする具体的な計画を立案すべき、という2つのことを求めてきました。
 ところが、閣議決定された教育振興基本計画は、まったくこれに背くものとなっており、きわめて重大です。
 教育振興基本計画は、「特に重点的に取り組むべき事項」の筆頭に、「新学習指導要領の実施」をあげ、「競争と管理、格差づくり」をすすめる改訂学習指導要領の教育を押しつけることをあからさまに示しています。そして、その押しつけ度を点検するために、「学力調査による検証」をあげ、「全国一斉学力テスト」を継続的に実施するとしています。さらに、「道徳教育や伝統・文化に関する教育、体験活動等の推進」と述べ、「愛国心」押しつけをすすめようとするものとなっています。
 このような時の政府による教育介入は、憲法の原則に照らして許されるものではありません。
 一方、教育条件整備にかかわっては、中教審答申の段階からもさらに後退したものとなっています。この間、教育予算や教職員定数増をめぐって、財務省と文部科学省の間でせめぎあいが行われてきましたが、文部科学省が盛り込みたいとしてきた、教育予算をOECD平均なみの対GDP比5%に引き上げるという文言はまったくなく、「OECD諸国など諸外国における公財政支出など教育投資の状況を参考の一つ」と述べるのみとなっています。また、教職員定数増については、答申でさえ、「必要な教職員定数を措置」としていたものを、「教職員定数の適正化」としており、教職員の数を増やすどころか、削減さえ容認する表現となっています。
 こうした結果となったのは、文部科学省の予算要求が父母・国民、教職員の切実な要求に立つのではなく、改悪教育基本法と改訂学習指導要領の具体化を立脚点とするという決定的な弱点をもっていたからにほかなりません。それゆえ、財務省の教育予算削減、抑制路線と正面から切り結ぶことができず、教育条件整備どころか、これを後退させるものとなったのです。
 このような重大な問題をもった教育振興基本計画は、子どもと教育にとって百害あって一利ないものであり、私たちは、政府に対し、教育振興基本計画を撤回するとともに、行革推進法を抜本的に見直し、憲法第26条にもとづく教育条件整備を行うことを強く求めるものです。

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