2008年 4月 2日 全日本教職員組合 国民共同局長 新堰義昭
4月12日公開の靖国神社をめぐる日中合作のドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」(李纓【リ・イン】監督)について、上映を予定していた映画館が相次いで上映をとりやめるという異常事態がおきていることが報道された。
今回の事態は、自民党・稲田朋美議員をはじめ一部議員が、文化庁所管の独立行政法人から行われた助成について問題視し、これを受けて文化庁が異例のとりあつかいで国会議員向けの特別の試写会を3月12日に実施したことにその発端がある。稲田議員は、試写会終了後のインタビューで、「イデオロギー的メッセージを感じた」(東京新聞)、「ある種のイデオロギーをもった政治的に中立でないものを日本映画にして助成するのはふさわしいか」(しんぶん赤旗)といった発言をしたと報じられており、また助成取り消しを求めているとも伝えられている。
これは、日本のかつての中国侵略は正しかったとする「靖国派議員」らによる「事前検閲」がおこなわれ、一部国会議員の執拗な政治的介入やそれに呼応した右翼らの妄動の結果、上映中止という異常事態に至ったことを示している。
この間、各地で上映された映画「日本の青空」の上映活動への妨害や、今年2月の日教組教研での開場使用拒否など、「集会・結社、言論・表現の自由」をめぐる危機的な状況が頻発している。また、3月28日に官報告示された学習指導要領でも、マスコミが「異例の修正」と報道しているように、「愛国心」押し付けをはじめ国家主義的で復古的な内容を盛り込んでいる。今回の「靖国」の映画館上映中止の事態は、このような動きと軌を一にして日本の平和と民主主義を破壊する勢力による一連の攻撃のなかで引き起こされているものであり、断じて黙認することはできない。
全教は、政治介入や右翼の妄動によって、憲法が保障する言論・表現の自由が蹂躙されている今回の事態に対し断固抗議するとともに、映画上映にむけ映画関係者をはじめ多くのみなさんと力をあわせる決意を表明するものである。