『クレスコ』

現場から教育を問う教育誌

クレスコ

〈2024年12月号 11月20日発行〉

【特集】登校拒否・不登校から見える景色――安心できる居場所がほしい

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【談話】『時間外勤務に関する措置要求の人事委員会判定取消裁判 さいたま地裁の不当判決に抗議する』

                  2008年 3月14日 全日本教職員組合 生権局長 蟹沢 昭三

 昨日、埼教組川口市教組の時間外勤務に関する措置要求に対する人事委員会判定の取り消しを求めた裁判で、さいたま地裁は、原告の請求を棄却する不当な判決を下しました。

 判決は、次のような問題をもつ不当なものです。
 第1に、給特法制定時の文部省訓令(昭和46年7月5日)3条では、「教育職員については、勤務時間の割り振りを適正に行い、原則として時間外勤務は命じないこととする」と規定し、際限のない時間外勤務に歯どめをかけています。ところが、判決は「給特法はこれらの活動すべてを含めて教員の教育活動と評価し代償措置を採用したものというべきである。(中略)自発性、創造性に基づかない業務を勤務時間外にせざるをえない状況が生じたとしても、そのことのみによって、給特法の趣旨に反するということはできない」と、法の趣旨をねじまげる不当な解釈を行っています。そして、各原告の時間外労働について「給特法の想定した勤務時間の程度を越えて明らかに不当であるとまではいえない」と結論付けています。
 
 第2に、文科省が実施した勤務実態調査でも明らかになったように、全国の教職員は月平均34時間(平日のみ)という膨大な時間外勤務を行っています。これは、仕事量に見合う定数が配置されていないもとで、時間外勤務を余儀なくされているものであり、校長の直接の命令がなくても「黙示の命令」があると言わなければなりません。しかしながら判決は、「校長が決定する年度ごとの計画により、包括的な時間外勤務命令が出されている」との原告の主張に対して、「勤務時間を超えて業務をすることまで予定したものとまでいなえいから、いまだ計画の設定をもって包括的時間外命令があったということはできない」とし、「校長による個別具体的な時間外労働命令はない」「自宅に持ち帰って行っていた仕事の内容に照らすと、職場でそれを行うか、自宅で行うかによって、かかる負担は有意な差が生じるものとは到底考えられない」と、時間外勤務は教職員の自主的自発的なものとした人事委員会と同じ、学校の実情・実態を無視した判断をしていることです。
 
 第3に、文科省は昨年12月、全国の教育委員会に対して、教職員の「労働時間の適正な把握」と「医師による面接指導」を行うよう通知しましたが、判決は「教員の業務は、その特殊性から、もともと時間的管理把握に適さないもの」と断じています。この立場に立てば、労働時間の把握ができないことになり、長時間残業から教職員のいのちと健康を守るとりくみができないことになります。
 
 このような不当な解釈と、事実誤認に基づく判断による極めて不当な判決は、断じて容認できません。厳しく抗議します。同時に、労基法第37条を除外した給特法の問題点も浮き彫りになりました。 
 
 判決は不当なものでしたが、この4年間の川口市教組のたたかいは、全国から注目される埼玉の労安活動へと大きく前進させました。措置要求のたたかいでは、人事委員会に原告らの勤務実態調査を実施させ、時間外勤務が存在することを明らかにしました。また、人事委員会とさいたま地裁でのたたかいを通して、教職員の深刻な長時間過密労働問題を社会的な問題とさせました。
 今日、長時間過密労働と健康破壊の実態は、一刻の猶予も許されない状況にあります。全教は、4月から全ての学校に実施が義務付けられた長時間労働教職員に対する「医師による面接指導」、課題となっている「労働時間の適正な把握」の推進にむけて、全国でとりくみをすすめます。また、教職員定数増を基本に慢性的な長時間過密労働を解消する具体的な諸施策を求めるとりくみと、労基法第37条に基づく「時間外手当」が支給される法改正にむけたとりくみをすすめ、教職員が生きいきと働き続けられる学校づくりをめざし、奮闘するものです。

以上
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