『クレスコ』

現場から教育を問う教育誌

クレスコ

〈2024年10月号 9月20日発行〉

【特集】教職員の長時間労働と「中教審答申」を問う

  • 全教共済
オピニオン

【意見】『「教育職員免許法施行規則の一部を改正する省令案及び免許状更新講習規則案について」の意見』

 全教は、「教育職員免許法施行規則の一部を改正する省令案及び免許状更新講習規則案について」に関するパブリックコメントを文科省に示しました。


2008年 2月26日 全日本教職員組合

 教免法が「改正」され、教員免許更新制が導入されました。しかし、法律「改正」時に、まともな制度設計についての議論やシミュレーションが行われなかったため、さまざまな問題点が明らかになっています。
 私たちは、2007年10月24日に、中教審教員養成部会の意見募集に対応し、教員免許更新制は、戦後半世紀にわたって確立され、運用されてきた教員免許法の大転換をおこなうものであり、何よりも教員の失職という大問題を持つ制度であることから、その時点で私たちが提起した10項目の問題点をはじめ、関係する大学や教育行政から提起されてくる疑問が解明されるまで、制度をスタートすべきでない、と意見表明を行いました。
 しかし、文部科学省は、今年度中の省令「改正」先にありき、として今回意見募集を行っています。私たちが見る限り、中教審教員養成部会の議論も一貫性を持ったものとは言えず、私たちが提起した問題点も解明されていません。いまの議論の水準で、拙速に教育職員免許法施行規則の「改正」など行うべきではない、と強く指摘したいと思います。
 そもそも、免許を必要とする他の職においては、更新制は導入されていません。2002年に出された教員免許更新制についての、中教審答申では、「現時点におけるわが国全体の資格制度や公務員制度との比較において、教員のみ更新時に適格性を判断したり、免許状取得後に新たな知識技術を修得させるための研修を要件として課すという更新制を導入することはなお慎重にならざるを得ない」として導入を見送ったものです。
そうした状況のもとで、教員のみに免許更新制を導入するというのですから、よほど慎重な検討と取扱いが求められます。
 また、教育現場からの不安も強く寄せられており、とうてい、合意を得られていないと考えます。教員の身分に直接かかわる制度を、「見切り発車」させることは、後に禍根を残すことは明らかです。
 省令改正作業を中止し、抜本的に見直すことを強く求めます。
 
 上記の指摘にもかかわらず、省令「改正」を行うというのならば、少なくとも、免許更新講習を受講した教員は、すべて認定するとすべきです。更新講習の認定については、「更新講習の開設者の行う試験により行うこととする」とされており、開設者は、教員養成機関、都道府県教育委員会、大学共同利用機関、などとされています。
 教員養成系大学を含む、課程認定大学で講習を行う大学教員等が、30時間の講習の後の試験で、受講した教員に対して総括的評価を行い、更新する、あるいは失職させるという判断を行うことは、とうてい不可能です。また、都道府県教育委員会は、すでに都道府県教育長協議会として、「都道府県教育委員会は教員の任命権者であるが、更新講習の開設者は原則として大学とすること」という意見を表明しています。これは、分限免職の権限を持つ都道府県教育委員会が教員の身分を左右する更新講習の開設者となることは、不適当であるということです。
 また、中教審では、講習内容について「教育の最新事情に関する事項(12時間以上)」「教科指導、生徒指導その他教育内容の充実に関する事項(18時間以上)」とされており、免許更新制の目的が、教員の資質向上にあることは明らかです。このことからも、本来、失職はありえないという基本性格を持つ講習であり、普通に教育活動を行ってきている教員に、失職するかもしれないという不安をもたせない制度とすることが不可欠です。
 以上のことから、教員免許更新制は、実質的に教員を免職させない制度としなければ、成り立たないものであり、省令「改正」は、受講した教員はすべて認定するという以外の選択肢をもたないものであると考えます。
 なお、省令「改正」とは直接かかわりませんが、受講費用を受講者に負担させるなど、あってはならないということを申し添えます。

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