2007年参議院選後、安倍政権が崩壊し、薬害肝炎救済法成立など、国民の声が政治を動かすというあらたな政治情勢のもと、全教は第25回定期大会を東京で開催しました。大会は、改悪教育基本法強行後初めての学習指導要領改訂による、ますますの「競争と管理、格差づくり」を許さず、さらに子どもと教育を守り、平和な社会を築くため、憲法改悪阻止のたたかいの本格的な構築にむけた方針を確立しました。そして、この歴史的なたたかいを保障する財政基盤を確立する「3億円基金」のとりくみを決定しました。
1.アメリカや財界の強い圧力のもと、「大連立」の動きもはらみつつ、国民と改憲勢力の激しいせめぎあいが展開されています。特に民主党の法案が継続審議になり、「海外派兵恒久法」制定の火種を残したという重大な事態が進行する一方、憲法を守る国民の共同の運動の前進が改憲勢力を追い詰めていることが討論で明らかになりました。
全国各地ですすむ「学校九条の会」、地域「教職員九条の会」結成のとりくみ、憲法改悪反対の全労連500万署名のとりくみや、女性部を中心とした一人100筆「ピースチャレンジャー」のとりくみ、映画「日本の青空」上映運動をはじめ、上部組織や所属の違いをこえた憲法改悪反対の共同のとりくみ、そして高校生の自主的な立ち上がりが豊かに交流されました。参議院選挙で国民が改憲にブレーキをかけた今、憲法を守るゆるぎない多数派の形成のために、職場・地域からの草の根の運動の飛躍的な強化が、決定的に重要になっています。
2.文部科学省は、改悪教育基本法、教育改悪3法の具体化である学習指導要領改訂、教員免許更新制、教育振興基本計画、「指導が不適切な教員に対する人事管理システム」、副校長、主幹教諭などの「あらたな職」の導入などの攻撃を矢継ぎ早にすすめようとしています。これらは、子どもと教職員、学校を苦しめ、ますます競争と管理を強めるものです。しかしこれらの政策に対して、教育基本法改悪阻止のたたかいで築いたすべての教職員、父母・国民との協力・共同で確かな反撃がはじまっています。
父母、地域の人々との共同のとりくみがさらに広がっていることを示す「教育のつどい2007」や、全国一斉学力テスト中止を求めるとりくみなどの発言が相次ぎました。また、憲法と教育の条理にもとづいた「参加と共同の学校づくり」のとりくみが、今、教育にかけられている攻撃から、学校、教育を守るものであることがリアルに語られました。
長野では、「評価というなら生徒の姿をみてほしい。これこそが開かれた学校づくりの成果だ」と、教頭が発言したことを紹介し、和歌山では、「学校づくりのアイデア」パンフをつくり、職場討議資料として活用し始めている、広島では、子どもの声を聞き、学級通信で親とつながる報告がありました。
青年教職員の「学びたい」「学習したい」という強い要求にこたえ、多くの教職員とともに学ぶ場をさらに各地で広げましょう。そして、「青年がごく自然にきりひらいている教育実践」を大切に、力をあわせて「参加と共同の学校づくり」にとりくみましょう。
3.教職員の現職死、精神疾患による休職者がかつてないほど増加しているという報告は、長時間過密労働の中で命を削りながら、倒れる寸前までがんばっている全国の教職員の実態を浮き彫りにしたものでした。長時間過密労働解消のための早急な施策が求められます。さらに、全国各地で地方切り捨ての「構造改革」に端を発した財政難を理由に理不尽な賃金カットが強行されている実態が報告されました。教職員評価や賃金リンクは、教職員の協力・共同を破壊し、教育のいとなみを変質させるものです。全国各地のとりくみは、教職員の人間としての尊厳と教育にたずさわる者としての誇りを回復する意味を持っているといえます。教職員評価に対する管理職アンケートにとりくむなかで、「このようなアンケートは今後も続けてほしい」という声が出されたり、民間人校長から「企業の論理は教育になじまない」と発言していることも紹介されました。新たな職の設置の策動など、教職員を分断しようとする攻撃が強まっているなか、職場における共同をすすめるとりくみの広がりが示されました。
貧困と格差拡大は、子どもたちの就修学や進路保障に重大な影響をおよぼしています。学校選択自由化による学校統廃合対象校の生徒が「どうせつぶれてしまうんでしょう。卒業制作しても意味がない」とやる気を奪われ、高校では授業料減免の条件が厳しくなり、アルバイトをしなければ学び続けることも進学することもできない現状が語られました。「構造改革」のもとですすめられている新自由主義的諸施策は、働くルールを破壊し、大増税による国民負担増をたくらみ、社会的セーフティネットを引き裂いています。08春闘では、すべての労働者・国民とともに「なくせ貧困!ストップ改憲!つくろう平和で公正な社会」をめざして奮闘しましょう。
4.子どもと教職員、学校を苦しめる「教育改革」、「貧困と格差」をさらにすすめる「構造改革」にストップをかけるために、全教を強く大きくすることは、どうしても必要な最重要課題です。一部の力量のある組合員の奮闘にゆだねるのではなく、一人でも多くの組合員や分会が組織拡大に参加できるようなとりくみをつくり出すことの重要性が各地から報告されました。
また「センセのがっこ。」全国版にとりくんだ群馬からは、企画づくりに参加した青年教職員が組合活動への確信と自信を深め、このことが組合全体を元気にさせているという報告がありました。このように「学びたい」「つながりたい」「仲間を増やしたい」という要求にもとづく青年教職員によるとりくみが各地で広がっています。
困難な条件の中で、多くの悩みや人間らしく生きたいという願いを持って働く臨時教職員や少数職種のなかまの組織化についても語られました。とりわけ厳しい労働条件の切り下げとのたたかいの中で現業職員や実習教員の組合加入がすすんでいます。要求に結びついた目に見える活動が組合の役割をますます鮮明にしています。大会の討論で確かめられたことを生かして、何としても組織人員の1割拡大・1万人加入を達成しようではありませんか。
5.今、全国からの支援のもと京都市長選挙がたたかわれています。この選挙は、解散総選挙で新しい政治を築くうえでも大変重要な選挙となっています。大会討論では、政策宣伝の力と草の根の力を高めることが勝利につながり、まさに憲法の理念を国民自身のものにする重要性が語られました。子どもと教育、国民の切実な要求を実現するため、政治革新はたいへん重要な課題となっています。解散総選挙で自公政治を終わらせ、憲法を中心にすえた新しい政治をつくりあげる展望をきりひらきましょう。
私たちは、「教え子を再び戦場に送るな」の誓いのもと、憲法改悪を阻止し、憲法と子どもの権利条約にもとづき子どものゆたかな成長めざした教育を発展させるため、父母・国民とともに全力でたたかいます。
以上、宣言します。
2008年 2月11日
全日本教職員組合 第25回定期大会