2007年12月27日 全日本教職員組合 教文局長 山口 隆
文部科学省の教科用図書検定調査審議会は、12月26日、沖縄戦記述に関して各教科書出版社から提出されていた訂正申請について「平成18年度検定決定高等学校日本史教科書の訂正申請に関する意見に係る調査審議について(報告)」(以下、「報告」)を発表しました。
「報告」は、「集団自決」について、「日本軍によって追い込まれた」など「軍の関与」を示す記述は認めているものの、最大の焦点であった「軍の強制」は認めない不当なものとなっています。私たちは、今回の「報告」に対し、怒りをこめて抗議するものです。
そもそも、今回の沖縄戦「集団自決」についての検定問題は、これまでの住民の証言や、日本軍がいなかった島では「集団自決」が起こっていないことからも、日本軍の命令・強制・誘導等が「集団自決」を引き起こしたことは明白であるという学問的到達点に立って、従来から教科書に記述されてきた日本軍の強制性を、文部科学省が、なんら根拠のない検定意見を付して、強制性を削除させたことに端を発したものです。
しかも、この検定は、侵略戦争を美化する立場とつながる教科書調査官によって行われた政治介入そのものでした。
軍の強制という事実が歪められることは、悲惨な地上戦を体験し、筆舌に尽くしがたい犠牲を強いられてきた沖縄県民にとって耐え難いことであり、歴史の真実を歪めてはならない、と大きな運動が起こり、ついに9月29日には、検定意見の撤回と記述の回復を求める11万6000人の県民大集会に結集したのです。
この集会で、高校生は、「この記述をなくそうとしている人たちは、おじぃ、おばぁたちがウソをついていると言いたいのでしょうか」「たとえ醜くても、真実を知りたい、学びたい、そして伝えたい」と心から訴えました。
福田首相は、この集会の直後には、「沖縄県民の思いを重く受け止める」と述べていました。ところが今回の「報告」は、子どもたちの訴えに背を向け、首相の言明にも背くものです。
以上のことから、私たちは、今回の訂正申請の審議結果報告に重ねて強く抗議するとともに、子どもたちに真実を教え、伝える責務を負う立場から、文部科学省に対し、あらためて検定意見の撤回と記述の回復を強く要求するものです。