『クレスコ』

現場から教育を問う教育誌

クレスコ

〈2025年1月号 12月20日発行〉

【特集】障害のある人のいのちと尊厳―優勢思想をのりこえる

  • 全教共済
オピニオン

【談話】『子どもと教育にとって百害あって一利ない「教育再生会議」の解散を強く求めます―「教育再生会議」第3次報告について―』

2007年12月26日 全日本教職員組合 教文局長 山口 隆

 「教育再生会議」は、12月25日、「社会総がかりで教育再生を―学校、家庭、地域、企業、団体、メディア、行政が一体となって、全ての子供のために公教育を再生する―」とする第3次報告を発表しました。第3次報告は以下に述べる重大な問題点を持つものです。

 第1は、子どもと学校に対するいっそうの競争と管理の強化、格差づくりをすすめるものです。
 第3次報告は、「6-3-3-4制の弾力化」として、一部のエリート校としての小中一貫校をつくることを述べるとともに、義務教育段階から「飛び級」を導入するとし、すでに制度化されている大学への「飛び入学」を促進するとしています。
 これは、どの子にもひとしく教育を受ける権利を保障すべき義務教育の制度の根幹を崩して、「できる子」にはエリートとしてのコースを与え、それ以外の子どもたちとの格差をつくりだす最悪の政策といわなければなりません。
 
 第2は、子どもの内心の自由を蹂躙し、管理を徹底しようとするものです。
 第3次報告は、また「徳育を『教科化』」すると述べています。「徳育の教科化」は、子どもの内心の自由の蹂躙という憲法第19条に真っ向からそむく大問題を持つものです。また、学習指導要領改訂を議論している中教審教育課程部会でも委員の中からの強い反対があり、「中間報告」に盛り込むことを見送ったものです。もちろん、国民からの支持があるものではありません。
 こうした経過を知っているのなら、第3次報告でまたぞろ提起することなど、普通に考えればできないことです。これは、「教育再生会議」の不見識は、教育に対してのみならず、社会一般の常識さえわきまえないほどのものであることを示しています。
 
 第3は、学校リストラをいっそう推進しようとするものです。
 第3次報告は、「国立大学・学部の再編統合」「統廃合を推進する市町村を応援する」として、あろうことか、学校つぶしを応援することをあからさまに表明しています。子どもの学びの重要な場である学校つぶしを支援して、どこが「教育再生」でしょうか。まさに、教育破壊以外の何ものでもありません。こんなことを平気で述べる「教育再生会議」に教育を語る資格などまったくありません。
 
 第4に、経済格差を教育格差に直結しようとするものです。
 第3次報告は、「教育バウチャー」を正面からかかげることは避けつつも、「バウチャー的な考え方を取り入れた『学校選択制と児童生徒数を勘案した予算配分による学校改善システム』をモデル事業として推進」と姑息にも述べています。
 「教育バウチャー」は、経済格差をそのまま教育格差とし、教育の機会均等の大原則を根底から崩すものです。これについては、文部科学大臣自身が疑問を表明し、与党内部からも批判が出ているものです。こうした状況を普通に判断すれば、撤回するのが当然であるにもかかわらず、「モデル事業」と構想を縮小しながらも、これにしがみつく姿勢を示していることは、まったく理解できません。
 
 このように、第3次報告は、子どもと教育をいっそう困難にする重大問題を持つものであり、断じて許せません。
 そもそも、「教育再生会議」は安倍政権の肝いりでつくられたものであり、安倍政権の崩壊とともに消え去るべき運命にあったものです。すでに、「教育再生会議」は、その存立基盤を失っています。そのうえ、出されている報告は第1次報告から第3次報告にいたるまで、子ども、父母・国民、教職員に対する不信に満ちたものであり、権力的な国家統制による「競争と管理、格差づくり」のいっそうの推進というものです。
 「教育再生会議」は、まだ「最終報告」をまとめると言っていますが、子ども、父母・国民は、そのようなものはまったく必要としていません。子どもと教育にとって百害あって一利ない「教育再生会議」は、即刻解散すべきであることを強く求めたいと思います。

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