2007年12月21日 全日本教職員組合 書記長 東森 英男
08年度政府予算案の確定に向けて、12月20日、財務省原案が発表されましたが、全体として「骨太の方針2006」に定められた歳出削減方針の枠をでないものといわざるをえません。さまざまな困難を抱えている学校教育を改善し、そこに働く教職員を励ますものとはほどとおいものです。
教職員定数改善は、7100人の文部科学省概算要求から大きく後退しました。しかも、特別支援教育や少人数学級に活用できる少人数指導の定数改善は、大幅に縮小されたり、認められず、極めて不満の残るものです。一方、行革推進法の制約の下で義務教育費国庫負担金を増額させたことや、厳しい状況下で私立高等学校等経常費助成費等補助を前年同額とさせたことは、今後のとりくみにつながるものであり、全国でとりくまれている教育全国署名をはじめとした私たちの運動の反映といえます。
しかし、主幹教諭の配置のための定数改善1000人(加配措置)という義務教育費国庫負担金の増額は、その分、「その他の職員」部分が削減される可能性があります。この削減は、文科省予算の範囲ではなく、地方交付税を含む一般財源部分の削減になりますから、最終的に各都道府県ごとの対応となり、地方交付税で措置されている定数削減の危険性があるものです。特に、これを学校現場になくてはならない現業職員の定数減に結びつけることは絶対に容認できません。
教員給与については、副校長の管理職手当と主幹教諭等への新たな級新設のための予算措置がされる一方で、義務教育等教員特別手当削減の着手として4分の1程度の削減が強行されました。他方、文科省の実施した「教員勤務実態調査」にあらわれた恒常化している長時間過密労働や年々増え続ける長期病休者に対応するための具体策は何もありません。私たちは、教職員の長時間過密労働を規制するために労基法適用とそのための財政措置を訴えてきましたが、その意義はますます大きいものといわなければなりません。
全人連は、これを受け1月下旬を目途に、新たな職に対応する新たなモデル給料表を発表するとしています。学校職場に分断を持ち込む策動を許さず、とりわけ各人事委員会においては、拙速な対応をしないことを求めます。
この間の私たちのたたかいと、長時間過密労働にあえぐ教職員の実態が、教職調整額の本給はずしや障害児教育関係の調整額の削減を当面見送らせたという側面もあります。結果的に残ったのは、義務教育等教員特別手当の削減だけです。今後、さらなる縮減の方向も明記されており、これからのたたかいがきわめて重要です。
こうした財務省原案の中身は、この間、文科省自身が強調してきた「子どもと向き合う時間の拡充を図る」ことにもならず、また、いのちを削って毎日長時間過密労働にあえいでいる教職員の実態を改善することにもなりません。全教は、政府案確定段階での復活を求めるとともに、あらためて通常国会に向けて年明け早々から、組織の違いを超えて全教職員の意思結集をはかり、父母・国民とともにゆきとどいた教育の実現に向けたとりくみに全力をあげるものです。