『クレスコ』

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クレスコ

〈2024年12月号 11月20日発行〉

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  • 全教共済
オピニオン

【声明】『2007年人事院勧告について』

2007年 8月 8日 全日本教職員組合 中央執行委員会

1.人事院は本日8日、昨年に引き続き官民の比較企業規模を「50人以上」として、一般職国家公務員の給与等の勧告と報告をおこなった。
 賃金に関する勧告内容は、官民較差は「0・35%、1352円」であるとして、月例給は初任給を中心とした若年層の部分的改善、子の扶養手当の500円引き上げ、一時金の0・05月引き上げ、地域手当の暫定支給率の一部改定、スタッフ職俸給表の新設などである。不十分な給与改善とはいえ、月例給がプラスになるのは実に8年ぶりのことである。
 しかし、今勧告では、私たちの強い要求である比較企業規模「100人以上」における官民較差の数値についてはいっさい公表せず、さらに、わずかばかりの一時金の改善についても0・03月分は成績率引き上げのための原資とするなど、私たちの要求から見れば、きわめて不満の残る内容であるといわざるをえない。

2.全教は公務労組連絡会に結集し、夏季闘争をたたかった。教育改悪3法案反対のとりくみとも並行しながら、昨年を上回る「賃金改善署名」5万7381筆を集約し、中央行動などにも積極的に参加し奮闘した。
 07春闘では、景気回復の中で民間大手を中心にして2年連続でベア・一時金ともに引き上げられている。貧困と格差拡大が社会的にも大きな問題となるなか、私たちのたたかいも反映して、最低賃金引き上げの課題でも、数円程度の改善にすぎなかった例年とは異なる次元での攻防を展開している。「人勧、最賃、底上げ・均等待遇」を三位一体としてたたかってきた私たちのとりくみの到達点が、新たな局面を切り開きつつあることに確信を持つとともに、労働基本権制約の代償措置である人事院勧告制度が、労働基本権の回復を棚にあげたまま、比較企業規模を「50人以上」に意図的に引き下げ続けることを断じて認めることはできない。
 私たちは、あらためて政府に対し、比較企業規模を「100人以上」に戻した賃金改善をおこなうことで、公務員労働者はもちろんのこと、すべての労働者の賃金底上げに積極的な役割を果たすことを強く要求するものである。
 
3.報告では、焦点となっていた非常勤職員の賃金および労働条件について、必要な方策について検討をすすめる旨が盛り込まれ、今後の改善をすすめていく上での第一歩となった。引き続き、最賃引上げをはじめとする官民共同のたたかいと一体でとりくんでいくことが重要である。
 また、私たちが強く要求してきた公務の所定内勤務時間の短縮については、「是正すべき」として、来年度、改定を勧告することを明記した。最近4年間の調査結果として、民間よりも1日15分程度、週に1時間15分程度長い状況を放置することは許されない。勧告が民間準拠を基本としているというなら、ただちに是正されるべき課題であり、文科省調査も明らかにした教職員の長時間過密労働の是正の契機とすべきである。
 
4.7月6日に公布された改悪国家公務員法のもと、報告は、査定昇給制度および勤勉手当の成績率に「能力・実績」を反映させる新たな人事評価制度について「一定以下の低い評価結果を分限処分の契機とする」「新たな人事評価制度の導入に併せて、勤務実績給与への反映の一層の推進」という基本的な考え方を示しており、看過できない。臨時国会においては、国公法と同様の地方公務員法「改正」も予定されており、本格的な「能力・実績」主義給与制度への移行が企図されている。
 しかしながら、8月3日に厚労省が発表した「労働経済白書」は、民間企業の「業績・成果主義的賃金制度」の課題に「賃金の決定方法、評価の方法や賃金水準の明確さ、公平さ」をあげており、企業側で「業績評価がうまくいっている」としているのは15.9%にすぎないことを明らかにしている。私たちは、公共サービスを提供する公務労働において競争主義的賃金・人事管理制度はなじまないと考えており、あらためて新たな評価制度を給与制度にリンクすることに反対する。
 
5.今後、総務省は地方に対して国家公務員に準じた措置とともに、人事委員会機能の強化で地域の「民間給与の水準を的確に反映」することを強く指導していくことが予想される。昨年の都道府県人事委員会勧告を見ても、公民較差は▲5・05%~+0・56%と大きな開きとなっている。2年続けての比較企業規模「50人以上」という賃金引下げ圧力が、小規模企業の割合の多い地方で強く影響することが危惧される。この間とりくんできた「給与構造改革」による地域格差拡大に反対する運動の到達点を土台に、疲弊させられている地域経済における人事委員会勧告の社会的影響を広く訴え、さらにとりくみを強化することが求められる。
 
6.教員給与については「優遇」されているとして、財務省を中心に攻撃が強められ、2・76%削減が決まっている。そして、中教審や教育再生会議において、もっと「メリハリ」のあるものにすべきという意見がだされている。具体的な「メリハリ」の一つは、学校教育法で「置くことができる」とされた「副校長」や「主幹教諭」「指導教諭」など、新たな「職」の設置である。全人連は、新たな「職」に対応する給料表の検討に入っている。2つめは、来年4月を目途に「教員給与特別措置法」を「改正」し、現在は一律4%の支給となっている教職調整額に差別支給を導入することである。3つめは、成果主義賃金制度による「メリハリ」であり、新たな教職員評価制度による評価結果を給与にリンクしようというものである。
 文科省が、昨年実施した「教員勤務実態調査」の結果は、恒常化している違法な教員の勤務実態を明らかにした。精神性疾患による病気休職者も年々増加の一途をたどっている。こうしたもとで「メリハリ」を持ち込み、教職員を分断することは、深刻な状況をいっそう悪化させることにしかなりえない。
 全教は、「メリハリ」という差別賃金制度に反対し、仕事に誇りが持てる、教職の専門性・特殊性にふさわしい、かつ労働実態に見合った教職員賃金水準の確保を要求する。そして、「画一的な処遇」を見直すというのなら、労基法37条を適用し、時間外勤務実態に見合った処遇を主張するものである。
 
7.参議院選挙の結果は、「戦後レジームからの脱却」をめざした安倍政権に厳しい審判を下した。それは、貧困と格差の広がりのなかで、国民犠牲の「構造改革」路線への怒りでもあった。戦後最長の景気回復といわれるなかで、労働者の賃金は減り続け、労働時間が増え続けるという異常な事態は、政府・財界の総人件費削減政策を官民共同の力で打ち破ることなしに改善できない。
 全教は、この秋の確定闘争において、憲法と教育、国民のいのちと暮らしを守るたたかいと結合し、教職員賃金水準の確保と均等待遇の実現、地域格差拡大反対、教職員諸手当の見直し改悪反対、差別賃金制度の導入阻止のため、全力でたたかう決意を表明する。

                                              以上

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