2007年 3月30日 全日本教職員組合 書記長 東森 英男
政府は本日、学校教育法、教育職員免許法(教免法)、地教行法の改悪案を閣議決定しました。
この改悪は、昨年末に国民世論を無視して強行された教育基本法の改悪にもとづいて、その具体化をはかろうとするものであり、憲法の諸原則に反して、「戦争をする国」の人づくりと「競争と格差」の教育を推進するものであり、断じて認めることのできないものです。
学校教育法改悪法案では第1に、改悪教育基本法に「国を愛する態度」などを入れ込んだことを根拠に、新たに義務教育の目標を設けるとともに、各学校種の目的、目標を改悪していることです。改悪教育基本法についての国会審議でも、「国を愛する態度」などの法定は、憲法第19条が保障する思想、良心、内心の自由を侵害する重大問題を持つものあることが浮き彫りにされ、「愛国心通知表」をめぐる国会での政府答弁でも、「国を愛する態度」を子どもと国民に押しつけるべきではない、とされたものです。また、幼稚園の目標にまで「規範意識」を入れていることも大きな問題です。
学校教育法改悪法案はまた、副校長・主幹・指導教諭という新たな職を位置づけています。これは、上意下達の新たな管理体制をつくって、教職員が力をあわせた教育活動を困難にするものであり、教育のいとなみにそむくものであるとともに、定数増がないもとで管理的教員を増やして、一般教員の負担を増大させるものです。
教免法改悪法案の重大問題は、教員免許更新制の導入です。法案では、教員免許状に10年間の有効期限を定め、講習による更新を義務付けるものです。これは、時の政府のいいなりにならない教員の教壇からの排除を可能とするものであり、断じて許されないものです。このような制度を、現職教員を含めて実施するため、従来、「終身免許」としていた定義を変えて、「有効期間に定めがない免許」とする欺瞞も容認できません。
また、教免法改悪と一体に教育公務員特例法を改悪して、10年ごとの更新を待たずに、「指導不適切」の名目で研修を義務付け、1年間で結果を評価して免職させることができる制度を導入しようとしています。こうした脅しの体制づくりは、教員を萎縮させ、子どもたちのためにがんばろうとする教員の意欲をそぎ、行政いいなりの教員を作ろうとするものです。これらが、教員志望者を激減させ、教育の質の低下をもたらすものであることは火を見るよりも明らかです。
地教行法改悪では、文部科学大臣による教育委員会への指示権限など、1999年の地方分権一括法で削除された内容を復活強化し、地方教育行政に対する国の関与を強めるものであり、「地方分権」に逆行するものです。また、都道府県知事による私学への関与を位置づけたことは、私学に対する教育介入に道を開くものです。
今回の法案は、内閣主導の「教育再生会議」の戦略に沿って、中教審における拙速な審議による答申にもとづいておこなわれたものであり、憲法改悪を教育の分野で先取りし、参議院選挙に向けて政権の浮揚をはかるために教育を利用しようとするものであることは明らかです。
私たちは、憲法改悪策動と一体の教育関連法改悪を許さず、子どもたちのすこやかな成長を求める父母、国民のみなさんとの共同を広げ、改憲手続法案の阻止と一体に教育改悪3法案の廃案に向けた運動に全力をあげるものです。
教育基本法改悪に反対する昨年のたたかいで、戦後史に残る到達点を築いた国民的共同をさらに発展させ、教育を国民の手に取り戻す壮大なたたかいを全国津々浦々から発展させることを呼びかけるものです。