全教幼稚園部鈴木佳代子前部長が、「新聞全教」8月15日付「主張と解説」に、「子ども・子育て新システム」の問題点と課題について文章を寄せました。
深刻な待機児問題、公立保育所や幼稚園の統廃合・民営化問題など、子ども・子育てをめぐるさまざまな課題を背景に、子育て・保育への関心が高まっています。このような中、政府は、6月29日、「子ども・子育て新システムの基本制度案要綱」(以下、新システム)を決定しました。
政府は、新システムにかかわる関係法律を改正するとして2011年の通常国会に法案を提出し、2013年度から本格実施するという工程を決めています。
新システムは、幼稚園・保育所・認定こども園を「こども園」として一体化するとしています。しかしこれは、長い間それぞれ大切な役割を担ってきた幼稚園・保育所をともに大きく変質させるものであるうえ、子どもの年齢構成や職員養成や資格などにも大幅な変更をもたらすものであり、安易な制度改革は認められません。また、幼保一体化への現行からの円滑な移行に配慮するとして、多様な事業主体の参入を可能にしていますが、営利目的の株式会社が保育に参入することによって、保育が儲けの対象とされるうえに、保育水準の低下や地域格差拡大が心配されます。
さらに、市区町村が実施義務を負ってきた公的保育制度を、直接契約と現金給付方式に変更するとしていますが、これでは、市区町村は保育の必要性の認定と現金給付の責任を負うだけとなり、子どもに事故が起きても責任はないものとされます。
また、育児休業手当や、子ども・子育て関連の国庫補助負担金は一括化して市区町村に分配するとしています。しかしそうなれば、自治体がその使い道を自由に決めることができるため、すべての子どもに平等な保育が保障されなくなるなど、問題が生じることは必至です。
新システムは、子育て・保育分野を市場化し、子育て支援のあり方を丸ごと変えてしまうものであるため、多くの論議が必要であり、拙速に決めるべきではありません。
幼保一体化も含めた子育て・保育制度改革は、「子どもの最善の利益」の保障という観点から考えることが何より大切です。新システムの問題点を、保護者をはじめとした多くの国民と共有し、国と自治体がしっかり責任をもつだれもが安心して子育てできる制度、そして、子どもの成長・発達を保障する豊かな保育制度を求め、広く運動をすすめることが求められています。